藤田浩之探検隊 毒蛇が巣くう密林の果てに双頭の大蛇バラナーゴを見た! 投稿者: vlad
「点呼をとる」
 隊長の浩之がいった。
「各自、番号と自己アピールっ!」
「1番、神岸あかり……お料理にはちょっと自信があるかな」
「2番、長岡志保……趣味は情報集めかな」
「3番、佐藤雅史……ハムスターかな」
「おーしっ! 全員揃っているな!」
「はい! 質問!」
「おう、なんだ!」
 挙手したあかりを浩之が指差す。
「この四人だけなの、浩之ちゃん……」
「おう、他の連中まで出したら収拾つかなくなるわい」

 藤田浩之探検隊の今回の目的は、双頭の大蛇バラナーゴの発見と、そして出来うるな
らばその捕獲である。
 バラナーゴ。
 全長20メートルには達するといわれる大蛇である。しかも、二つの首を持つといわ
れる。
「こんな感じのやつだな」
 出発に先立って、浩之はバラナーゴのイメージイラストを皆に見せた。
 バラナーゴが村を襲っている風景である。人間など一口で飲み込んでしまいそうな大
蛇に追われて逃げまどう人々の表情は恐怖に染まっていた。
「す、すごいね」
「ま、ホントにいたらの話だけどね」
 目を大きく開いて感嘆するあかりに対して志保は冷静である。
「んじゃ、行くぞお!」

 藤田浩之探検隊は、生い茂る草を踏みしだきながら前人未踏のジャングルに足を踏み
入れていた。
 先頭に立つ浩之が時に鉈を振るい、背丈ほどもある草を切り倒していく。
「気ぃつけろ、蛇がたくさんいるからな」
「う、怖いよお」
「な、なによ……蛇ぐらい」
「中には毒蛇もいるから気をつけないとね」
 しばらく歩いていると、浩之が突然立ち止まった。
「どうしたの? 浩之ちゃん」
 背中に接触するほどにぴったりと付き従ったあかりが尋ねる。
「囲まれた……」
「えっ!」
「毒蛇の大群だ。すっかり取り囲まれたな」
「ええっ!」
 あかりが大仰に驚く。
「ど、どうすんのよ!」
「大丈夫だ。雅史……」
「うん」
 雅史は、浩之のいわんとすることを了解して、ずっと手に持っていた箱を地面に下ろ
した。
「さっきから気になってたんだけど、雅史が持ってるそれってなによ?」
「マングースだ」
 浩之は力強くいった。

 マングース    ジャコウネコ科の哺乳類の総称である。イタチに似た体形をして
          いる。
          蛇を恐れないことで知られていて、蛇の天敵といわれている。
          およそ蛇と名のつくものには無敵の強さを発揮し、アナコンダも
          キングコブラも蛇島虎吉(25)もこやつの前では無力である。

「雅史!」
「うん、みんな、頑張ってね」
 雅史がマングースの頭を撫でた。相変わらず、これ系の動物が好きな男である。
「よし、行け!」
 雅史の箱に入っていた三匹のマングースたちが、ぱっ、と四方に散った。
「ヒロ、大丈夫なの?」
「大丈夫だ」
「でも、マングースもハブに噛まれたら死ぬって聞いたけど……」
「馬鹿野郎っ!」
 浩之の平手打ちが志保の頬に炸裂した。
「マングースは蛇の天敵だから蛇にやられることは絶対にないっ!」
 その浩之の言葉通り、マングースたちは無傷で帰ってきた。やはりマングースは強か
った。

 やがて、藤田浩之探検隊はバラナーゴが住むといわれる洞窟の前まで到達した。
 洞窟の中に入ってしばらくすると、前から三番目を歩いていた志保が突然、声を上げ
た。
「どうした!」
「あ、あかりの背中にクモが……」
 浩之が急いであかりの後ろに回ると、志保のいう通り、あかりの背中に掌ほどもあろ
うかという蜘蛛がひっついていた。
「え、え、え」
「あかり、動くな!」
 浩之は、あかりに注意してから、その蜘蛛をじっと見た。
「タランチュラだ」
 猛毒を持つことで知られる毒蜘蛛である。大人一人を十分に死に追いやるだけの毒を
その牙に秘めている。
「うりゃっ!」
 浩之は手を振って、タランチュラをあかりの背中から払い落とした。別に素手で払わ
なくてもいいような気もするが、そこは隊長の心意気としておく。
「あ、ありがとう。浩之ちゃん」
「おう、先を急ぐぞ」

 遂に、藤田浩之探検隊は洞窟の最奥部に辿り着いた。ここに、伝説の双頭の大蛇、バ
ラナーゴがいるのか!
「ああっ!」
 浩之が叫んだ。
「バラナーゴだ!」
「ええっ!」
 他の三人は驚いて浩之が指差す方角を見た。
 そこには!
 直径2センチメートルにも満たないであろう蛇の尻尾があった。頭部の方は闇の彼方
にあって見えない。
 一瞬だけその姿を見せ、その尻尾もすぐに闇の向こうに姿を消してしまった。
「ううむ、逃がしたか……」
 浩之が残念そうに呟く。
「惜しかったね、浩之ちゃん」
 あかりが浩之を慰めた。
「でもまあ、目的の一端は達したんだから」
 雅史も落ち込む浩之にそう声をかけた。
「そうだな。よし! 帰るか!」
「ちょっと待ちなさいよお!」
「なんだ。志保、なんかあるのか?」
「あるわよ! なによ今の! 二つ首があるなんてわかんなかったじゃないの!」
「いや、おれは見たぞ」
「それにっ! 大蛇だっていってたじゃないのよ、さっきのイメージイラストはなんだ
ったのよ!」
「大馬鹿野郎っ!」
 浩之の右フックが志保のテンプルに炸裂した。
 いや、それは実は右フックではなかった。そのように見せておいて、実は肘を当てて
いた。
 ボクシングの試合などでほんの時たま使われるというテクニックである。レフリーに
見えない位置でやれば反則はとられない。
 この状況で使う必要は全く無いが、とにかく、高等テクニックなのである。

                                     終

     どうも、またもや馬鹿ネタを思い付いたvladです。
     ああ、なんだか自分で書いててわけわからん。
     元ネタは知っている人なら知っている。あの「川口浩探検隊」です。
     当時、小学校低学年だった私が思いっきり信じていた素晴らしい番
     組です。

   次回の藤田浩之探検隊は!

   幻の原人、バーゴンは実在した! 前人未踏の密林に黒い野人を追え!(大嘘)