SWO 投稿者: vlad
「どうもみなさん、実況の矢島です! 解説はマサ佐藤さんです!」
「ノリノリだね、矢島くん」
「そらもう、久しぶりにいい役ですからねえ! ところでマサさん、このSWO(志保
ちゃん ワールド オーダー)タイフーンシリーズ、連日熱戦が繰り広げられているわ
けですが」
「はい」
「今シリーズはSWO主催とあって、我々やマスコミ関係者などは、恥ずかしいことこ
の上ない志保ちゃんTシャツの着用が義務づけられています」
「そうだね、僕も無理矢理着せられたよ」
「第一試合は、そのSWOの保科智子、宮内レミィ組と正規軍の松原葵、姫川琴音組の
対決ですが。最近、保科と宮内が長岡に愛想つかしてるという噂もありまして、なかな
か予断を許さない状況ですねえ」
「うん、最近、あの二人はよくタッグを組んでるし、息も合ってるみたいだからね」
「これから始まる第一試合、注目したいところです」

「さて、マサさん」
「はい」
「両チームの入場も終わり、マルチのリング清掃も終わり、いよいよ試合開始が近付い
てきたわけですが、なにやらリング上、もめているようですねえ」
「えっと、浩之と姫川がなにかやってるみたいだね」
「あ、どうやらレフリーの藤田浩之と姫川がボディーチェックのことでもめてたみたい
ですね」
「話がついたみたいだよ」
「あ、そのようです。藤田がボディーチェックを始めました。相変わらず吸い付くよう
な手つきです。ここのところは現在、日本で唯一人、テレビカメラの前で堂々とセクハ
ラをする男、藤田浩之の本領発揮です! おっと、恒例の藤田死ねコールが起こってお
ります」
「相変わらずレフリーのくせに目立ってるね」
「全くです。おっ、試合開始のようです」
「それぞれ先発は宮内と松原だね」
「おっと、いきなり松原が突っ掛かる!」

「welcom!」

 ズダンッ!

「宮内、パワースラムで叩き付けた! この辺はさすがですねえ、伊達に胸はでかくあ
りません」
「うん、宮内は実はけっこうテクニシャンなんだよ」
「しかし、松原! 負けてませんよ! すぐさま起き上がってキックの嵐! さすがに
打撃戦ではNO1といわれているだけのことはあります」
「いいキックしてるね」
「宮内、たまらずタッチ! さあ、注目の保科が出てきました」
「最近、長岡と不仲だって話だね、なんでも長岡のワンマンぶりに嫌気がさしているそ
うだけど」
「元々、二人とも我を通す傾向が強いところがあったんで、危ぶまれていたのですが、
ここにきて、やはりそれは表れてきましたねえ」
「うん、長岡は特に最近、好き勝手やってるからね」
「さあ、保科、普段は眼鏡をかけていますが、試合の時はコンタクトです。保科ファン
が眼鏡派とコンタクト派に別れて抗争を続けているのは周知の事実ですが、今回は、前
シリーズの時のようにファン同士での乱闘などが起こらないようにして欲しいものです
ねえ」
「そうだね、そういうことすると浩之が大喜びで乱入するから」

 バシッ!

「おっ、松原、先輩の保科に対して全く遠慮しません。これは、敵同士になった以上、
本気であなたを叩き潰しますっ! という松原の気持ちの現れと見ていいんでしょうか、
マサさん」
「それよりも、松原は勝負に対してとても真剣な選手だから、どんな試合でも手抜きは
しないんじゃないかな」
「なるほど」

 バシッ!
 ドスッ!

「おっと、これは保科、打たれ過ぎではないか!」

「調子に乗っとるんやないでえ!」

 バチィン!

「出たぁーっ! 遂に怒りの導火線に火がついた! 保科の水平チョップ炸裂! 松原
たまらずによろめく……が、倒れない! 松原、倒れません!」

 バッチィン!

「またまた強烈! 袈裟斬りチョップ! 松原の首が悲鳴を上げたぁ! これはさすが
にダウン!」
「ここは保科が先輩の貫禄を見せつけたね」
「松原、さすがにダメージが大きいのか、姫川とタッチ!」

「ひっこんどきや!」

 バシィ!

「あうっ……」

「あっと、姫川難なく倒されました。軽量の姫川に保科と宮内の相手はきついですねえ」
「そうだね、でも、姫川は不思議な強さがある選手だからね、十分に大金星が期待でき
るんじゃないかな」
「そうですねえ、おっと、保科、スリーパーに行くが動きがにぶい! 姫川、腕を取っ
たあ!」
「これは、腕ひしぎが綺麗に入ったよ」

「えいっ」

「あんまり力を入れているように見えないが、ものすごく効くといわれる姫川の間接技、
これは保科ピンチ!」

「トモコ!」
「行かせませんっ!」

「カットに入る宮内に松原が突っ掛かって、場外に落ちた! これは決まったかあ!」
「いや、ロープが近い」
「保科、なんとかロープブレイクで逃れました。一方、場外では松原と宮内がリング上
そっちのけで死闘を展開しております」
「あれ? 姫川の動きが悪いね」

 こっくり。

「試合の最中に居眠りとは上等やないかぁ!」

「保科、怒った! 保科、怒った!」
「バックを取られた。姫川、これは、まずいよ」

「おっどりゃああああ!」

 グシャッ!

「綺麗に橋が架かったあ! ジャーーーーマンスープレックスホォォォーーールド!!」
「これは……姫川、受け身をとってないよ」
「松原は場外で宮内ともみ合っている!」

「ワーン! 琴音ちゃん、大丈夫か? ツー! 水族館の券が手に入ったんだけど……
スリー!」

「決まったぁ! 保科のジャーマンスープレックスホールド!」
「あれを喰らっちゃ、ちょっときついね」
「先輩としての、格の違いを見せつけたというところでしょうか。この後のメインイベ
ントを前にして場内、大盛り上がりです!」

「……」

「えーっと……コミッショナーの来栖川芹香の挨拶ですけど、あんまりよく聞こえませ
ん……テレビ放映の時に字幕が出ると思うので、その時に内容を確認して下さい」

「さあ、マサさん、いよいよ本日のメインイベント、LVNのベルトをかけた長岡志保
と神岸あかりのタイトルマッチです」
「長岡はここ三戦、タイトルを防衛し続けているけど、正規軍一の実力者、神岸を迎え
てそのタイトルを守りきれるかに注目だね」
「はい、それだけではなく、この二人はかつてはタッグを組んでいたパートナーで親友
同士でもあります」
「うん」
「なにかその辺、マサさんと藤田との巌流島決戦(*)を彷彿とさせるものがあります
が」
「うーん、そうかもね」

 *巌流島決戦
          タッグパートナーで親友同士であったマサ佐藤とヒロ藤田が
          巌流島で行ったノーレフリー、ノーギャラリーの試合のこと、
          二時間を超える死闘は、プロレス史に残る名勝負の一つであ
          ろう。試合は、金的蹴りからのスリーパーホールドで藤田の
          勝ち。

「さあ、両者とも入場して、いよいよ試合開始ですが」
「うん、そうだね」
「ここは、是非とも神岸に頑張って欲しいですねえ、なんといっても神岸でしょう、ね
え、マサさん」
「矢島くん、相変わらずえこひいきするね」
「そりゃもう、神岸あかりが最高ですよ!」
「でも、そろそろベルトが移動してもいい頃かなあ」
「そうですよねえ……リング上では神岸のボディチェックが行われて……っていうか!
藤田、てめえ! そりゃ完璧胸揉んでんじゃねえか! さあ、恒例の藤田死ねコールが
わき起こる!」

「藤田、死ぃーね! 藤田、死ぃーね!」

「それ、藤田、死ぃーね! 藤田、死ぃーね!」
「煽るね、矢島くん」

「おれの胸をおれが揉んでなにが悪ぃんだよ!」

「おおっと! 藤田、トップロープ上から観客席に飛んだぁ!」
「相変わらず無茶するね」
「神岸あかりファンクラブの面々と揉み合っております。頑張れ、同志諸君!」
「あ、バックドロップ」
「引退したとはいえ、元プロレスラーが素人にかましていい技とは思えません! 負け
るな! やれ! 左後ろにいる奴、脇腹が空いてる! えぐったれ!」
「血管切れるよ、矢島くん」
「本望です!」

「ええー、ようやく騒ぎも収まりまして、いよいよ試合開始です」
「今日は……被害者が少なかったね」

「おっしゃあ! 行くわよぉ!」
「ま、負けないよ」

「さあ、両者、気合を入れる……ゴングが鳴ったぁ!」
「二人とも、動きがいいね」
「全くです。おっと、大方の予想通り、長岡が序盤から激しく挑んで行きます」
「これは、短期決戦を狙ってるね」
「マサさんの御指摘通り、長岡が短兵急に攻め立てます! 神岸防戦一方、頑張れ、神
岸!」

「うりゃっ!」
「あうっ!」

「これは強烈! 長岡のドロップキックが炸裂!」

「ベルト巻くにはまだ早いわよ!」

「おお! 長岡、ダウンした神岸を見下ろしながら絶叫!」
「ん、神岸、なんか狙ってるよ」
「おっと、神岸、足を取った! 回ったぁ! ドラゴンスクリュゥゥゥーーーーウ!」
「今のは、長岡の油断だね、もう少し気を付けないと」

「えいっ!」

「おおっと、神岸、長岡をロープに振ったぁ! 帰ってきたところをラリアットぉ! 
しかし……倒れない!」

「甘いわよ!」

 ドスッ!
 バシッ!

「長岡、キック! パンチ! 掴んで……裏投げだぁぁぁっ!」
「受け身を取れないようにタイミングをずらしたね……今のは効いたよ」

「チャンピオンは強いのよぉ!」

 おおおおおおおお!

「またまた長岡が吠える。場内大歓声! それにしても、SWOとかいってるわりには
段々とO谷晋二郎じみてきた長岡! こうなると次は当然……」
「神岸……やっぱり効いてるね」
「神岸が起き上がったが、長岡はロープの外側に出ている! 神岸、長岡に背を向けて
いる。危なぁぁぁい!」

「おりゃああああっ!」

 ゴスッ!

「スワン式ミサイルキック! 後頭部ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「おっしゃああああっ!」

 ズダンッ!

「志保ちゃんボムという名のただのパワーボム炸裂! 神岸、どうした!」

「うりああああっ!」

 ゴキャッ! ドスンッ! バタンッ!

「志保ちゃんボム、エンドレスゥゥゥゥ! 一発、二発……三発叩き付けたぁぁぁっ!」
「神岸はそろそろ反撃しないと、このまま行ってしまうよ」
「行け、神岸、レッツゴー神岸ぃ!」

「決めるわよっ!」

「長岡、しつこく志保ちゃんボム! そのままホールド! レフリーの藤田、カウント
に入るぅ!」
「いや」

「うぎぎぎぎ」
「志保、ギブアップか!?」

「三角締めだぁ! 神岸、志保ちゃんボムを喰らった直後、下から三角締めを決めてい
たぁぁぁっ!」
「これは、最初から狙ってたみたいだねえ」
「このまま決めてしまえええっ! ……いや! 長岡、そのまま神岸を持ち上げてよろ
けながらロープに倒れ込んだぁ! 残念!」
「ん? ……神岸、離さないよ、珍しいね」

「うぎぎぎぎ、あ、あかり、ロープよ、ロープ! さっさと離しなさい!」
「うううう……」
「おいこら! あかり、ロープブレイクだ!」

「藤田が間に入って二人を引き離します。いやあ、マサさん、神岸がこんなファイトを
するとは珍しいですねえ」
「ちょっとエキサイトし過ぎたんだと思うけど、確かにいつもの神岸らしくないね」
「それほど、神岸がこの試合にかける意気込みがすごいということでしょう」

「ご、ごめん、志保」
 ぺこり。

「おっと、ここは神岸、礼儀正しく謝りました。実にすがすがしい行動に、場内からは
拍手がわき起こっています」

「いいのよいいのよ、気にしないで(このアマ、虫も殺さないような顔してよくもやっ
てくれたわね)」

「それでは仕切り直しです。おっと、長岡、いきなり顔面に掌底! やっぱりしっかり
と恨んでいるっ!」
「神岸も負けてないよ」
「神岸、打ち返します! ……しかし、長岡、その手を取って飛びついた! 飛びつき
十字固めぇぇぇぇっ! これは決まったぞぉ! 神岸ピンチ!」
「いや、足が届く」
「神岸の足がロープにかかったああああっ! 今のは危ないところでした!」
「あ……やっぱり、長岡が離さないね」
「おっと、さっきの仕返しか! 長岡、ロープに神岸の足が触れたのに離さない!」

「志保! ロープブレイクだ! 離せ!」
「う、痛いよお、浩之ちゃん」
「泣き言いうな! 志保もいい加減に離せ!」
「くくくくくくっ、あかり、あんたにはこの場で死んでもらうわよ」
「離せや」

 ゴスッ。

「行ったぁぁぁぁっ! いうこと聞かないレスラーには遠慮なくぶちかます藤田の踵落
としが長岡に炸裂ぅ! 偉い!」
「あれは……うーん……しょうがないね」
「長岡、ふらつく、これは思いっきり踵落としが効いているぞ、神岸チャンスだ!」

「えいっ!」

「おっと、神岸、長岡をコーナーに振って自らはロープに飛ぶ! 行ったぁ! フェイ
ス、クラッシャアァァァーーーーーッ!」
「スタミナで長岡に劣る神岸はここで一気に決めに来るよ」
「マサさんのおっしゃる通り、神岸、長岡をフォール!」

「ワン! ツー! ス」
「ちょっとカウント早いんじゃないのおおおおお!」

「カウント2.95ォォォォォォォォォォォ!! 長岡、生き残ったぁ! しかぁし!
神岸、長岡に止めを刺すべく伝家の宝刀を抜いたあ!」

「それっ!」

 ドカッ!

「出たぁぁぁっ! 旋回式のあかりドライバーーーァッ!」

「ワン! ツー! スリー!」

 おおおおおおおおおおおおおおおお!!

「勝ったぁぁぁぁぁっ! 長岡轟沈! 神岸、遂に念願のタイトル奪取ぅぅぅ!」
「いい試合だったね」
「おっしゃああああああっ! やったあああああっ! 神岸ぃぃぃぃ!」

「ちょっと待ちなさいよお!」

「ん……負け犬がなんかいってます」
「なんか、僕たちの方を見てるみたいだけど」

「矢島ぁぁぁぁぁっ! あんた、黙って聞いてりゃ、あかりのことひいきしまくった実
況してんじゃないわよぉぉぉ!」
「えーと、いまいち意味不明のことを口走っております。ベルトを失ったショックは思
いの他大きいようです」
「ふざけんじゃないわよおおおっ! SWOの怖さ教えたげるわ!」
「おっらああああっ! 矢島ぁ!」
「ヘイ、ヤジマ!」
「うわあああっ、保科……さんに、レミィ、なんだなんだ!」
「これからあんたを血祭りに上げたるんや!」
「ブラッドカーニバル!」
「あ、あんたら、長岡さんとは不仲なんじゃ」
「おんどれ、こないだの神岸さんとの試合の時、私のこと胸がでかいだけが取り柄だと
か、散々いうてくれたやんけ!」
「ノー天気なパツキンっていうのはアタシのこと?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「よっしゃあああ! 矢島の処刑を開始するわよお!」
「おらあ、ジタバタすんなや!」
「ノー天気に行きましょう、キャハハ」

「浩之ちゃん、私、やったよ」
「ああ、あかり、よくやったな、ところで、動物園の券が手に入ったんだが」

「それでは、本日は、実況矢島、解説はマサ佐藤さんでお送りいたしましたぁ!」
「おらあああっ! くっちゃべってる暇は無いのよおおおおおっ!」
「それでは、みなさん、また来週ぅ!」

                                     終

     どうもvladです。
     山籠もり(笑)に入っていたのですが、バカネタを思い付いてしま
     ったので一時下山してきました。
     ちょっと山籠もりとネタ被ってるしな……。
     しかし……最近の新日のこと知らん人にはよくわからんネタだろう
     な……。
     そんでは、失礼いたします。