禁断症状 投稿者:vlad


  自分の衝動を押さえられないことを、おれは自覚していた。
 「アレ」をせずに二ヶ月以上は経つ。
 一度やりたいと思えば、もはや押さえのきくものではないことはわかっていた。
 ある日、とうとう我慢できなくなっておれは、あかりを家に呼んだ。特に理由はなか
ったので、なんで? と、聞かれた時にはおれは激しく動揺して思わず。
「会いたいからだ」
 と、恐ろしく恥ずかしいことを口走ってしまった。
「うん、す、すぐに行く」
 戸惑いながらも、あかりの声には嬉しそうな響きが含まれていた。
 こいつはいつもそうだ。どんなにおれがひどいことをしても、ちょっと優しい声をか
ければすぐに嬉しそうにしやがる。
 あかりが来た。相変わらず、頭に黄色いリボンを巻いてやがる。くそっ。
「一体どうしたの? 浩之ちゃん」
「ま、上がれよ」
 おれが誘うままにあかりは、おれの部屋までやってきた。現在、時刻は夜の八時過ぎ、
加えて、おれは大の男であり、この家にはおれしかいない。
 それなのにノコノコと家の中に入って、相手がおれでなければあかりももう少し警戒
するのかもしれないが、それにしたって無防備な女だ。しかも風呂から上がってそう時
間が経っていないらしく仄かに石鹸の香りが漂ってくる。むう、こいつは知らず知らず
の内に男を誘惑するタイプだな、何か間違いが起こる前に今度キッチリと教育しておか
ねばならないようだ。
「で、なんの用なの?」
 あかりは、おれに勧められるままにベッドの上に腰掛けていた。
「本当にただ会いたかっただけなの?」
「あかり……呼んだのは他でもない」
「な、なあに」
 おれの真剣な表情と声に、ただならぬ雰囲気を感じてか、あかりは緊張した面持ちで
いった。
「もう……我慢できないんだ」
「え、なにが?」
「あかり!」
 おれは、あかりの上に覆い被さった。そのまま二人してベッドに倒れ込む。
「もう駄目なんだ。限界なんだ」
「ひ、浩之ちゃん」
 さすがの無防備女も、女としての本能的な危機感を持ったのか、怯えた目でおれを見
ている。
 おれは黙って手を伸ばした。
「……だ、駄目」
 あかりは胸を隠すように両手を交差させて自分の肩を抱き、全身を縮めた。
 おれは、他のものには目もくれずにあかりの頭からリボンを取り去った。
「浩之ちゃん……」
「おさげにしろ!」
 おれは両目を異常な執念にギラつかせながらあかりに詰め寄った。
「え……」
「さっさとしねえかあ!」
 既に限界を超えていたおれは荒々しくあかりを引き起こし、その目の前に鏡を差し出
した。
「前みたいに、おさげにすればいいの」
「そうそうそうそう!」
 おれは興奮の極みに達していた。
 やがて、身をよじるように待ち焦がれたおれの前に、あかりのおさげが現れた。
「これでいいの?」
「おう!」
 おれは、素早くあかりのバックをとっておさげを掴んだ。
「あ……」
 さわさわ。
 ふう〜〜〜〜〜っ、生き返る気持ちだぜ。
「あの……浩之ちゃん?」
「なんだよ」
 さわさわ。
 ほふ〜〜〜〜〜っ、天にも昇る気持ちとはこのことだな。よし、二本同時に触ってや
ろう。
 さわさわさわさわ。
「もしかして」
「あん?」
 さわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわ。
「私のおさげに触りたかったの?」
「うん」
「私……髪型戻そっか?」
「いや……いい、時々こうして触らしてくれれば」
「そ、それじゃあ、触りたい時はいつでもいってね」
「うん」
                                  終

          どうもvladです。こちらは初投稿になり
          ます。見ての通りの小ネタです。特になんと
          いうことのない作品ですが「あかり、お前は
          前の髪型の方が可愛かったぞ!」と、いう私
          の心の声を読み取っていただければ幸いです。

 それではまた……。