東能連の脅威 投稿者: vlad


 琴音ちゃんと買い物に行った帰り、公園を通っていた時だ。
「その力を有効に使うべきだ!」
 いきなり現れた20代前半の男が、琴音ちゃんを指差していった。
「なんだ。あんたは」
 琴音ちゃんが怯えて、おれの後ろに隠れてしまったのでおれがその男と向き合うこと
となった。何をいってるのかよくわからんが、おれの琴音ちゃんを怖がらせるんじゃな
い。
「はっはっは」
 男は突然笑いながらパチパチと手を打ち鳴らして拍手をし始めた。
 いよいよおかしな奴だ。
「君の力、見せてもらったよ」
 男は、何かを見透かしたような表情でいった。何もかも知っているよ、といわんばか
りだ。
「な、なんのことだ……」
 不安を感じつつ、おれは探るように問い掛ける。
「先程、オレンジを拾うのに使った力さ……」
 そういった瞬間、男の口辺に薄ら笑いが浮かんだ。
「てめえ……」
「……」
 ぎゅっ、と琴音ちゃんがおれの袖を掴んでいるのがわかる。
「ふふふ、姫川琴音くん、君は我々と一緒に来るべきだ……」
 男は、おれを無視して琴音ちゃんを視線で貫きつついった。
「琴音ちゃん、下がってろ」
 おれは持っていた上着のボタンを上から外していった。おお、なかなかカッコイイで
はないか。琴音ちゃんの好感度もアップに違いない。
「君に用はない。どきたまえ」
 男が自信満々といった感じで歩いてくる。
 この野郎、特にガタイがいいとかいうわけじゃねえ、いきなり顔面にかましてやれば
……。
 おれは上着を脱ぎ捨てて後方に投じた。
 琴音ちゃんがそれを受け取る。
「預かっててくれ」
 うん、カッコイイぞ、おれ!
 と、ここまで決めておいて、こいつにボコボコにされちまったら逆効果だな。
 おれは構えを取った。特に格闘技を本格的に学んだわけでもないのに。
「いい構えですね」
 と、葵ちゃんにいわれたことがある。中国拳法でいうネコ足立ちとかいうものに非常
に近いらしい。
 男はおれを舐めているのか、ほとんど直立のまま近付いてくる。
「舐めんなよ、てめえ!」
 おれの放った正拳突きを、そいつは避けようともしなかった。
 避ける必要がないというのか。
 おれの背筋を悪寒が駆け抜ける。
 避けられなかったのだ。ということを知ったのは、おれの拳を顔面で受けた男が、思
いっきり倒れ、その際に後頭部を地面に打ち付け、やがて、鼻血を流しながらもぞもぞ
と動き始めた時だった。
「なんだ。見かけ倒しじゃねえか」
 拍子抜けしたおれはいった。なんか思わせぶりなんで妙な技でも使ってくるのかと思
ってたぜ。
「貴様ぁぁぁ……選ばれた人間である私によくも血を流させたなあ」
 とりあえず鼻血を拭いた方がいいと思う。
「後悔させてやろう」
 立ち上がった男は顎を伝って喉にまで達した鼻血の流れを気にせず、カッと目を見開
き、おれを睨み付けた。
「来るかあ、てめえ」
 おれは再び構えをとった。
 しかし、男は今度は近付いては来なかった。
「ふふふふふ」
「なんだてめえ、来るんならさっさと来やがれ」
 背中に琴音ちゃんの視線を感じるぜ。この野郎、琴音ちゃんの中のおれポイントアッ
プのために地獄を見てもらうことにしよう。
「ふふふふふふ、私にも彼女と同じ力があるとしたら……」
「な、なにっ!」
 おれは叫んで振り返って琴音ちゃんを見た。
 だが、琴音ちゃんは困ったような表情でおれを見返す。彼女にも全く心当たりのない
ことらしい。
「こぉぉぉぉぉぉぉ……」
 低くくぐもった声が、男の口から漏れた。
「はぁぁぁぁぁぁ……」
 な、なんてこった。相手が超能力者だったとは……ここは琴音ちゃんに……って、今
まで散々カッコつけておいてそれはできねえ。
「こ、この野郎、来い!」
 おれは、やや怖じ気づきつつ叫んだ。
「はあっ!」
 男の張り詰めた声とともに、おれの周辺の空気まで変質を遂げたように思えた。
 おれは一瞬、目を疑った。
 おれと男の間の空間に、小石が一つ、浮かんでいた。指の先ほどの小さい石だが、確
かに浮いている。
「おおっ!」
 男の裂帛の気合いに応じて、小石が弾丸のように……というには緩やかなスピードで
おれの方に向かってきた。
 顔に直撃したらそれなりに痛いだろう。
 でも、あんまり速度がない。
 おれは右手を閃かせて、飛来する小石を掌中に包み込んだ。
 決まったぜ、おれ!
「どうだあ!」
 おれは勝ち誇って男を見た。
「ぜえぜえぜえ……や、やるな青年……ふう、はあ」
 なんだ。肩で息してやがる。あの程度の小石を飛ばすぐらい、琴音ちゃんだったら造
作もなくやってみせるだろうし、そのぐらいの力だったら、眠くもならないはずだ。
「さてはてめえ……」
 おれは、にやりと笑った。正体見たり、だ。小石を念動力で浮かせた時は、すげえ、
と思ったけど、こうしてみればやっぱりただの見かけ倒しだ。
「大した超能力者じゃねえな」
「な、な、なんだと!」
 男は鼻血をダラダラ流しながら叫んだ。
「琴音ちゃんの方がずっと強い力を持ってるぜ」
「そ、それは、そいつが強すぎるのだ! 私の念動力は組織でもトップクラスなのだ!」
 おっと、気になる単語を吐きやがったな。
 組織……だと……もしかして超能力者の組織なのか。
「姫川琴音……君の力があれば、我々の組織の幹部の座は約束されたようなものだぞ!
どうだ。我々とともにこの腐った世の中を浄化しようではないか!」
 なんか話がでかくなってきやがったな。あくまでも話、だけど。
 しかし、こういう奴が「浄化」とか「革命」とかいって何か始めると、大概、ろくな
ことしねえんだよな。
「そんなわけのわからん集団に琴音ちゃんは入らねえぞ」
「お前には聞いとらん! 姫川琴音、どうなのだ!」
「怪しいからいやです」
「な、なんだと!」
 その怪しさの張本人が表情を歪めていった。
「そうだそうだ。怪し過ぎるぞ、てめえ、その組織ってのは一体なんなんだよ、大学の
サークルか?」
「そのようなものではない。日本全国に十八の支部を構える「東日本超能力者連盟」略
して「東能連」だ!」
 略すな略すな。
「東だけなのか」
「うむ」
「日本全国じゃねえじゃん」
「やかましいっ! 揚げ足をとるな!」
 男は激怒した。しかし、激怒したところで、あんなしょぼい念動力しか仕えない超能
力者なんて怖くもなんともない。こっちにはいざとなったら琴音ちゃんもいるしな。
「うぬぬぬぬ……どうしてくれよう」
 そのことを奴もわかっているのか。歯がみしているばかりだ。
 しかし、そろそろこいつと遊んでいるのも飽きたな。さっさと家に帰って琴音ちゃん
の料理を食べて、一緒に風呂に入って背中を流してもらうという一大計画を実行せねば。
 そうだ。頭も洗ってもらおう。
「YK、不甲斐ないな」
 その声で、おれは現実に引き戻された。
 声の主は、公園の木の上にいた。どうやら、あそこから一部始終を見ていたらしい。
こいつも「組織」とやらの人間か。
 そして、YKというのが、このしょぼい念動力使いの名前というか、組織内での呼び
名らしい。たぶんイニシャルだと思うが。
「RS!」
 と、YKは樹上の男をそう呼んだ。
「はっ!」
 と、声を上げて、RSとやらが地上に降り立つ。その際にちょっと足首が痛かったら
しくうずくまっている。
 なんか、こいつも見かけ倒しっぽいなあ。
「くはははははっ!」
 やがて、足の痛みが引いたのか、男は立ち上がって高笑いをした。
「全く、一人でやるというから任せてみればこのザマだ。やはりおれがやる。お前は黙
って見ていろ」
 RSがYKにいった。
「わかったよ……」
 不承不承ながら、YKは頷いた。
「さて……どうやら君は姫川さんの恋人らしいな」
「おう!」
 おれは胸を張っていった。
「……藤田さん……恥ずかしいですぅ」
 とか小声でいってる琴音ちゃんが可愛い。おっ、ちゃんと手の先っちょだけ袖から出
して、それを口元に持っていっているな。もう、琴音ちゃんったらおれのツボ突きまく
ってくれるんだからなあ。
「我々はどうしても姫川さんに協力して欲しいのだが、それには君が邪魔らしいな」
「それ以前に、琴音ちゃんがいやだっていってんだよ」
「組織に入ればいやではなくなるさ」
 そのRSの決めつけるようないい方にカチンと来たおれは、握り拳を作って叫んでい
た。
「腕づくで来い!」
「いわれずとも……」
 RSはそう呟くや、悠々とした足取りで向かってきた。
 さて、この野郎の超能力はなんだ?
「くはははは、見よ!」
 叫ぶと同時に、RSの体に異変が起こった。
 初めは、目の錯覚かと思った。奴の体が薄くなっていくのだ。
 やがて、半透明になり、輪郭がぼやけてきた。
 そして、奴はいなくなった。
 消えてしまったのだ。
「まさか!」
 テレポーテーション(瞬間移動)かっ!
「くっ! どこだ!」
 おれは、慌てて周囲を見回す。どこにもいねえ、まだ出現していないのか。
 どうする。実体を現してもらわにゃ攻撃のしようがねえ。それに……こういう風に、
いつどこから現れるかわからない奴と戦うなんてのは精神的にけっこう応えるぜ、くそ!
 まさか、テレポーテーションとはな……。
 テレポーテーション♪ 時の翼が♪
 って、「エスパー◯美」の主題歌なんぞ歌ってる場合じゃねえぞ。
 どこだ。どこから来やがる!
「藤田さん! 後ろです!」
 おお、琴音ちゃんの声が聞こえる。そうか、もしかしたらとは思っていたが、やっぱ
り後ろに出やがったか、大体、こういう風に瞬間移動する奴ってのは後ろに現れるって
相場が決まってんだよなあ。
 それでも、いきなり背後に出現されてはまずいのも確かだ。
 間に合うかっ。
 おれは、急いで振り返った。
 半透明のRSが笑っていた。
「後ろを取ったぞ!」
 そうかい、そりゃ良かったねえ。
 輪郭が浮き出ていく。
 そして、奴は完全に実体化した。
 ばこんっ!
 実体化するのを待ち受けていたおれのハイキックがRSの側頭部に音高く決まった。
うーむ、我ながら鋭い一撃だ。
 RSは思いっきり横倒しになってひっくり返った。
「う、ぐぐぐぐ、やるな」
 ……なんだ。こいつもやっぱり見かけ倒しかよ。瞬間移動っていっても、現れるのに
何秒もかかるようじゃ戦闘では使いもんにならねえぜ。
「さ、帰ろうぜ、琴音ちゃん」
 おれが上着を畳んで持っている琴音ちゃんにそう声をかけた時、
「醜態をさらしおって」
 と、低く、鋭い声が茂みから聞こえた。
 ガサ、ガサッ。
 と、茂みの中から現れたのは、一人の男だった。自信に満ちた二つの瞳は、この男が
ただものではないことを告げていた。
 果たして、
「そ、総帥!」
 YKとRSがほぼ同時に奴をそう呼んだ。
「総帥だと……」
「うむ、東能連の総帥である」
 こいつが親玉か。
「全く、勝手なことをしおって、姫川琴音は私が直々に迎えに行くといったであろう」
「し、しかし、総帥がわざわざ……」
 RSが口答えを試みるが、
「黙れ、姫川琴音はそれだけの力がある能力者なのだ!」
 総帥に一喝され、沈黙する。
「姫川くん、我々とともに新たな世を作ろうではないか」
「いいです」
「まあ、そういわずに、一度お茶飲みにくる気分でちょろっと事務所に顔出してみなさ
いって……そっちの彼氏も、能力はなくても、その腕っ節があれば組織でそこそこの地
位は手に入るぞ」
 なんか……すっげえ胡散くせえ。
「い、いいです」
 と、いいつつ、琴音ちゃんはおれの背後に隠れて、おれの腕を掴んだ。ふむ、琴音ち
ゃんに頼られるとおれ、弱いなあ。
「あんた、いやだっていってんだから、諦めろよ」
「それは、君たちが東能連を変な団体だと誤解しているんだ。我が東能連は決して怪し
い団体ではない。平成十五年には参院選に打って出ようという壮大な計画もあるのだ」
 ますます胡散くせえな。
「姫川くん、私は君に東能連総帥補佐の役職を用意している!」
「え、ええっ!」
「総帥! それは!」
 YKとRSが難色を示すが、総帥はそれを完璧に無視した。
「私の片腕となってくれないか。姫川くん」
「いやです」
「ほらほら、いやがってんだろうが」
「ゆくゆくは私の後継者にと考えているんだっ!」
「……」
 琴音ちゃんは、もはや「いやです」というのもいやになったようで、無言のまま、お
れの腕を強く掴んだ。
「おら、琴音ちゃんはいやだっていってんだ。さっさと帰れ」
「簡単には引き下がれん。彼女ほどの得難い人材をおめおめと逃すものか」
 まあ、確かに、あのYKという男の念動力がトップクラスだというのならば、琴音ち
ゃんは得難い人材だろう。だが……、
「琴音ちゃんがいやだっていってんだよ、どうしてもっていうならおれが相手になるぜ」
「ふ、やはりこうなるのか」
 総帥は、俯いてそう呟き、顔を上げた。
 その眼光を、おれは自分の瞳でまともに受け止める。いかに怪しい団体とはいっても
さすが多くの人間を束ねる存在、その迫力はYKやRSとは比較にならない。
「丁度よい、選ばれた人間との差というものを見せてやろう」
 「選ばれた人間」とやらの自信を満身にみなぎらせて、総帥はいい。無造作におれに
近付いてきた。
 ピタリ、と、おれの前で止まる。
「野郎……」
 おれは右のストレートを……、
「ふむ、まずは右のストレートで顔面を狙い、それに続いて左のローキック、下半身が
崩れたところを右のハイキックか……なかなかよいコンビネーションだな」
 おれは、ぞくりとした。
 こいつ、まさか。
「くくく……君の次の行動、手に取るようにわかるぞ」
 予知か!
 琴音ちゃんが、以前、自分がそうだと思っていたのも予知能力であった。
 こいつは、本当の予知能力者だというのか。
「はっきりいって、ほんの十秒ほどの後の未来しか見えない。しかし、こういう喧嘩で
はそれが絶対的な武器になるのはわかるだろう」
 む……確かにそうだ。たった十秒とはいっても次に何をするか読まれてしまえば、一
つ一つのアクションのスパンが短い格闘では絶対的に不利になる。
「ふふふ、さあ、打ってこい。右のストレートをな」
 ……待てよ……左にしたらいいんじゃねえのか?
「左に変えるか、それもよかろう」
「この野郎」
 おれは、思わず悔しさのあまりそういった。おれの心の動きによって、予知の結果は
細かく変化していくのか。
 くそ、こうなりゃ初志貫徹だ。右ストレートから左ローキック、最後に右ハイだ!
「堂々巡って、結局最初のやつで来るのかね」
 野郎、馬鹿にしたような笑みを浮かべてやがる。
「行くぜ!」
「くくく、見えるぞ」
「やっかましい!」
 おれは、踏み込んだ。
 まずはそのにやけた面に右だ!
 ばしっ、と決まった。
 そんで、左のローで下半身を崩す!
 がしっ、と決まった。
 よし、体勢が崩れたところに右のハイ!
 すぱーん、と入った。
 総帥は、呆気なく倒れた。
 完全におれの攻撃は読まれていた。その証拠に、おれの右ストレートを掌で受け止め
ようとするような動作を奴はしていた。
 しかし、その掌を弾き飛ばして、おれの右ストレートが炸裂したのだ。
 それから、予定通りに左のローから右のハイに繋いだわけである。
 要は、おれの攻撃を読んでいたものの、こいつにはそれを防ぐだけの身体能力が無か
ったということだ。
 ……やっぱり見かけ倒しじゃねえか。
「お前ら、体鍛えた方がいいんじゃねえのか」
「くくっ、凡人に敗れるとは、なんたる不覚!」
「お前らだって、その中途半端な能力抜かしたら凡人だと思うがなあ」
「え、ええい、黙れ」
「さ、琴音ちゃん、行こうか」
「ま、待て!」
 なんだよ、しつこいなあ。まだなんか用か。
「姫川くん、我々や君のような超能力者は、所詮、少数者だ。いつ迫害されるかわから
ん。だからこそ、我々は身を寄せ合い、助け合わねばならんのだ。わかってくれ!」
 琴音ちゃんは、総帥の言葉に、初めて心を動かされたようだ。少数者、という単語が
琴音ちゃんを刺激したのだろう。迫害、というのも、実際、彼女は少し前まで、そうい
う目に合っていたようなものだ。
「能力があって奇異の目で見られたことがあるはずだ! 私だって、この二人だってそ
ういう経験がある」
 琴音ちゃんは、沈んだ表情でその声を聞いていた。
「そこの青年!」
「え……おれか」
「そうだ。君は姫川くんの恋人のようだが、もしも姫川くんがその能力ゆえに迫害され、
追い詰められ、命に危険が及んだ時、君には何ができるのだ!」
 うぐぐ、いきなり究極の選択を迫るな。
 琴音ちゃんがおれを見てる。
 おれを信頼しきった目だ。
「いや……おれは琴音ちゃんを助けることはできないかもしれない」
 だが、おれはそう答えた。おれ一人の力なんてたかが知れている。大きな力が琴音ち
ゃんの存在を抹消しようと動いた時、おれの力なんてほとんど役に立たないに違いない。
「ならば」
「だけどな」
 おれにも、一つだけできることがある。
「一緒に死ぬことはできる」
 それは、琴音ちゃんが求めていた答えではなかったのかもしれない。
「おれが守ってみせる!」
 そういって欲しかったのかもしれない。
 だが、おれの本心はそうだったのだ。守れずとも、どこまでも一緒に行くことはできる。
「……藤田さん」
「琴音ちゃん」
「……藤田さぁん」
 琴音ちゃんが、全身から全ての力が失われたように力無く、おれの体にもたれ掛かっ
てきた。
「帰ろうか」
「はい」
「待ちたまえ」
 なんだよ、まだなんかあんのか。
「どうやら、君には、寄り添うべき存在は彼一人で十分なのだな」
 そういった総帥の顔はどことなく寂しそうに見えた。
「五年後の参院選では私に一票投じてくれたまえ……行くぞ」
 総帥は、YKとRSを促して、公園から去っていった。一度も振り返らずに。
「琴音ちゃん」
「はい」
 おれと琴音ちゃんは公園を出た。琴音ちゃんはおれの腕に顔を押し付けていた。琴音
ちゃんの涙がおれの腕を濡らしているのがわかった。
「藤田さん、私たち……」
「ずっと一緒だよ」
 琴音ちゃんは、顔を上げ、泣きながら微笑んだ。
                                   終

          どうもvladです。以前から「梓と初音ち
          ゃんのSSを書いたのだからいつかは……」
          と、密かに考えていた琴音ちゃんSSをよう
          やく書き上げることができました。
          ……琴音ちゃんがあんまり目立っていない。
          というのが問題ですね。次回作では是非、全
          編琴音ちゃんの作品をお送りしたいものです。

   久々野 彰さん
      BEETさん
   感想ありがとうございました。

 それではまた……。