関東藤田組 投稿者: vlad
「おうおうおうおう、まだ金はできねえのかい!」
「も、もう少し、もう少し待って下さい!」
「馬鹿野郎、返済期限は一昨日にきれちまってるんだ。そもそも、てめえの病気は明日
や明後日に治るもんじゃねえだろうが、金を使いこそすれ、増える見込みがどこにある
ってんだ!」
「そ、それは……」
「百万! 耳を揃えて返せねえってんなら代わりに娘をもらっていくぜ!」
「お、お父さん!」
「む、娘は、娘は勘弁して下さい」
「こちとら利益を回収しなきゃならねえんだ。悪く思わねえでもらおうか」
「なあに、一月うちの店で働いたら百万ぐれえすぐ返せらぁ」
「お父さん!」
「ま、待って下さい!」
「ええい、離しやがれ!」

「おいおい、借金のカタに娘を連れてこうなんて、随分荒っぽい連中だな」
 藤田浩之はアパートのドア越しに聞こえてくる一連の問答を聞いていった。
「ま、今時はそう珍しくもねえか」
 そのようなことをすればすぐさま警察が奴らの組事務所に踏み込んで一人残らずしょ
っぴいてしまう。というのは五年ほど前の話である。
 警察の人員削減によって低下した治安を収めるために警察力の一部を民間の手に下げ
渡したのが四年と半ほど前のことだ。
 当初、それは上手く行った。民間企業が結成した私設警察はまずまずの効果を上げて、
今や治安の維持に無くてはならぬものになっている。
 だが、もちろん問題が無かったわけではない。
 本来、営利企業であるそれらは利潤の追求を根本としていたのは当然である。ある程
度の財力を持つ人間は彼らに月々一定の料金を払うことで強固な傘の下に入って安心し
て暮らすことができたが、貧困者はそうはいかなかった。
 それらの人間に対してはやくざ者たちは遠慮なく牙を剥く。安全保証料と呼ばれる代
金を払っていない彼らは、私設警察にとって「客」ではなく、そういう現場を見かけれ
ば助けることはあっても、進んで彼らを保護しようということはなかった。
 さらに、昨今、問題になっているのがいわば「縄張り争い」である。各私設警察同士
の間の交流が極めて少なく。協力するよりも手柄を上げようとするばかりで、効率の面
での問題が浮き上がっていた。
 そうはいっても、もはや昔日の力を持たぬ日本警察よりも、金さえ払えば利用者の安
全に細かく気を遣ってくれる私設警察の方がよいという人々がいるのも事実であった。
「浩之、そろそろ行った方が……」
 浩之の幼なじみであり、今は仕事上の部下である佐藤雅史がいう。
「ああ、そうだな、葵ちゃん、行くぜ」
 浩之は、雅史に答えて、隣にいた同じく部下である松原葵にいった。
「はい! 藤田さんは絶対にお守りします」
「ははは、期待してるぜ、ボディーガードさん」
 浩之はドアを開けた。
 途端にいかつい顔をした男と面を鉢合わせにする羽目となる。
「なんだ。てめえは!」
 男は遠慮なく浩之に怒声を浴びせた。今やこのような連中は警官や私設警察の人間以
外には居丈高な態度をとる。
「誰でもいい」
 浩之はそういいながら部屋の中を見た。
 男が四人、内の一人はパジャマを着て畳の上に転がっている。他の三人は、背広を着
てネクタイをしめてはいるが、一目で堅気ではないとわかる。
 それと、男に抱きすくめられている少女が一人。
「その子を離しな」
 浩之はこのような事態であるために土足で上がり込んだ。
「てめっ!」
 横を駆け抜けた浩之の肩に手をかけた男は、瞬間、側頭部に痛烈な一打を受けて反対
の側頭部を激しく壁に打ち付けた。
「な! このガキ」
 仲間を蹴り一発で沈めたのが背の低い女の子であることを知ると、男の一人が戸惑っ
たような声を上げた。
「おい」
 と、その男の肩に手をかけて、鼻っ柱に正拳を一撃。
 いい感触がした。
 男はひっくり返って鼻血を流し始めた。既に気を失っている。
「その子を離して下さい」
 少女の腕を掴んだ男に、雅史は優しくいった。
「なめるな!」
 その雅史の柔らかな風貌物腰に与し易しと感じたか、男は少女を弾くように押し退け
て握り拳に血管を浮き立たせながら雅史に突っ掛かってきた。
「わわっ」
 と、いいながら雅史は横に逃げた。すれ違いざま足を引っかけてやる。
「うわっ」
 玄関の方にダイビングした男を待っていたのはうなりを上げて襲い来る足であった。
 激しい音を立てながら雅史の方にと吹っ飛ぶ。
「おっと」
 雅史は男の身体を受け止めた。
「もしもし……うん、気絶してる」
 雅史はにっこりと笑って男を畳の上に寝かせた。
「案外、さっさと片付いたな」
「はい、さすがです。藤田さん」
「はは、葵ちゃんにそういわれるとなんか嬉しいねえ」
「浩之、この人たちはどうするの?」
「連れて帰るさ」
「それじゃ、こっちの人たちは?」
「来栖川SP(セキュリティー・ポリス)に引き渡しちまえ、検挙数が増えるから飛ん
で来るはずだ」
 そうなのだ。私設警察というのは基本的に貧乏人には冷たいが、犯罪を働いたと思わ
れる人間を捕らえてあるから引き取りに来てくれ、というと喜び勇んでやってくるのだ。
 自分たちの手間はほとんどないのに、検挙数を上げられるからだ。
「さて、お嬢ちゃん、それからそっちのおっさんも、うちの事務所に来てもらおうか」
「あの、あなたたちは」
 少女は怯えた目で浩之を見ていった。
「おれは藤田浩之ってんだ。藤田商事っていう会社の社長をやってる。ちっこいとこだ
けどな」
「僕は、そこで働いている佐藤雅史っていうんだ。よろしくね」
「私、同じく藤田商事の社員の松原葵です。特技は格闘技です!」
「は、はあ」
「ここはひとつ、おれたちを信じちゃくれねえか」
 浩之は目つきの悪い目をほころばせていった。そうすると、無邪気な感じが出てギャ
ップも手伝い、非常に人が好さそうに見える。
「は、はい」
 と、少女がいったのは、藤田浩之という男の不思議な魅力に釣り込まれてしまったか
らであろう。
 雅史の連絡でやってきた来栖川SPの人間に先程の男を三人引き渡し、浩之たちは、
少女とその父親を連れてアパートの裏方にとやってきた。
 そこには一台の軽自動車が停まっていた。浩之はポケットから鍵を取り出して車のド
アを開け、運転席に乗り込んだ。
 雅史が助手席に腰を下ろす。
「後ろ、乗れるかあ」
「はい、なんとか」
 後部座席に葵と、少女と父親が座る。軽の座席に三人はなかなかに狭苦しいが、葵と
少女が小柄なのでなんとか収まった。
 車で走ること三十分。五階建てのビルの地下駐車場に浩之の愛車は滑り込んだ。
「ここの三階だ」
 エレベーターで三階まで上がり、降り立つと、目の前にドアがありそれに「藤田商事」
と書かれた看板が貼り付けられていた。
「今帰ったぞ」
「あ、浩之ちゃん、お帰りなさい」
 机を雑巾がけしていた神岸あかりが満面の笑みで出迎える。
「こら、ここじゃ社長って呼べっていってんだろ」
 ただでさえ今年で二十五歳なのだ。ちゃんは無いだろう。
「あ、ごめん、でも私にとっての浩之ちゃんは、昔からずっと浩之ちゃんだし」
「ええい、わかったわかった。お前は特別に認める」
「うん」
 と、あかりが嬉しそうにいった。このような会話は三日に一回の頻度で行われる、ま
あ、この藤田商事においては定期行事みたいなものだ。
 さらに、あかりに特別に認める。とはいっても、日頃、彼のことを「社長」と呼んで
くれる人間は一人もいない。
「ん、マルチはどうしたあ」
「マルチちゃんは、メンテナンスの日だよ」
「ああ、そうだったか」
 いつも一生懸命掃除しているマルチがいないのは寂しいことであった。
 ま、明日からまた元気で愛らしい姿を見せてくれるであろう。
「あ、藤田くん」
 と、もちろん、浩之を社長と呼ばない一人である経理担当の保科智子が浩之を招いた。
「なんだ。なんかまずいことでもあったか」
「この領収書は、認められへんで」
「あん? なんの領収書だよ」
 と、智子の手元を覗き込む。
 智子がにやりと笑ったように見えた。
 接待費と書かれた約三万円の領収書だ。
「なんで認められねえんだよ」
「わからんと思っとんのか、これがなんの領収書か……長岡さんから情報は流れてきと
んのやで」
「な、なにぃ、志保の奴がどうしたってんだ」
「昨日の夜の豪遊や、神岸さんっちゅう婚約者がありながら随分と羽目外したらしいや
んか」
 と、智子があかりに聞こえぬように声を潜める。
「な、なんでそれを! くそ、志保か」
「この領収書、それなんやな」
「お、おう」
「却下や」
 智子はその領収書を必要以上にくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放った。
「ちっ……志保はどこ行ったあ!」
 浩之は喚きながら事務所内をうろつき回った。
「志保さんなら情報収集に出てます」
 と、お盆に幾つかの湯飲みを乗せて給湯室から出てきた姫川琴音がいった。
「くそお、帰ってきたら見てろよお」
 いいつつ、浩之はお盆の上に乗った自分専用の湯飲みを取って、それを唇に着けた。
 どうせ、弱味をたてにとられてなんか奢る約束させられるんやろなあ、と智子は思い
ながら浩之の背中を見ていた。
「はい、智子さん」
「ああ、ありがと」
 琴音に湯飲みを貰って、智子も茶をすすった。
「はい、どうぞ」
 琴音は雅史、あかり、そしてソファーに座らされた親子にも茶を配っていった。
「あ、ありがとうございます」
「いえ」
「それで、藤田くん」
「あいよ」
 再び智子に呼ばれて、浩之は茶を飲みつつ智子の机の方にと行った。
「あれが、例の山川敬三と山川留美の親子なんやな」
「ああ、間一髪だったぜ、もう少しであの子、連れてかれるとこだったんだ」
「連れてかれるって……」
「店で働かせるとかいってやがったからな、客でも取らせようとしてたんじゃねえの」
「なんやて! そんであんたら、そいつらどうした」
「KOして来栖川SPに引き渡したけど」
「あほ、そんな女の敵はタマ蹴り潰して使いもんにならんようにしたったらええんや」
「おいおい、相変わらず過激だな」
「他人事みたいにいうとるけどな、神岸さんと結婚した後、浮気なんぞしたら、藤田く
んこそやられるで」
「ぶっ……な、なにをいってんだ。あかりがそんなことするわけねえだろ」
「いやぁ、わからへんぞ」
「む……そ、そうかなあ」
 と、浩之はあかりを見た。
「ん、どうしたの、浩之ちゃん」
「い、いや、なんでもねえ」
 浩之がわざとらしく窓の外を見ると、来客が訪れた。
「浩之ちゃ〜ん、芹香さんと綾香さんが来たよお」
「なにぃ」
 浩之は慌てふためいて入り口の方にと行った。行ってみると、本当にいた。
「こんちにわ、直接会うのは久しぶりね、浩之」
「……」
「おう、どうした。今日は二人揃って」
「ま、ちょっと挨拶にね」
「へえ、ま、遠慮なくくつろいでくれよ、あかり、茶ぁ出せ」
「うん」
 浩之は奥の応接室に二人を通した。
「浩之、今そこにいたのって」
「ああ、先輩に頼まれてた山川親子だよ」
「……」
「えっ、ありがとうございますって、いやいやいいんだよ、スポンサーの頼みなんだか
ら引き受けねえわけにはいかねえしさ……ま、スポンサーであろうがなかろうが先輩の
頼みならおれ、なんでも聞いちまうけどな」
「……」
 ぽっ。
「ほらほら、浩之が上手いこというから姉さん赤くなっちゃったわよ」
「ははは」
 浩之は一頻り笑った後、綾香の方に向き直った。
「それで、あの二人の受け入れ先は」
「丁度いいとこがあるわ」
 綾香はそういって持っていたバッグから数枚の書類を取り出した。
「来栖川の福祉病院に一人分空きがあるわ、それとそこでの介護員にもね」
「……なるほど、親父さんをそこに入れて、あの子は介護員として働くと」
「ええ、そうすれば借金取りの連中には手出しはさせないわ、今日中にうちの方から、
あの親子から無理矢理取り立てるようなら遠慮なくしょっぴくって通達しておくわ、た
ぶんもう大丈夫よ、まあ、元金とある程度の利子はあの子の給料から引いて返済しない
といけないけど」
「まっ、一応、借りた金は返さないとな」
「でも、絶対に乱暴な真似はさせないから」
「へへっ、さすが来栖川SPの専務さまだな、社長の人がほとんど隠居しちまってるか
ら実質、お前が社長みたいなもんらしいじゃねえか」
「こう見えても大変なのよ、親の威光で手に入れた地位だからね、実力を示さないと下
の人間はついてこないわ」
「綾香なら大丈夫だろ」
「ありがとう、おせじでも嬉しいわよ」
「おせじじゃねえさ」
 浩之はあかりが持ってきたお茶菓子の煎餅をかじった。
 これは一部の人間しか知らぬことであるが、この何をやっているかよくわからぬ怪し
げな会社、藤田商事のスポンサーはこの姉妹なのである。
 そして、この二人は知らぬ者はいない大企業、来栖川グループの会長の令嬢たちであ
る。
「……」
「えっ、ありがとうございますって、いいっていいって」
「……」
「はいはい、またいつでも頼んで下さいよ、そのためにあるようなもんだしな、この会
社は……それにしても、先輩」
 と、浩之は芹香にいった。彼は未だに彼女のことを「先輩」と呼ぶ。
「前から不思議に思ってたんだけど、どうやってああいうのを見付けてくるんだ。……
えっ、悲しさを感じ取る。……なんかよくわかんねえけど、そうなのか」
「浩之、あの二人にこの書類に色々と書き込んで欲しいんだけど」
「ああ、わかった」
 山川親子は初めは何がなんだかわからぬようで非常に戸惑っていたが、やがて、この
人たちに任せた方がいいと娘の留美が主張し、書類に必要事項を記入した。
「さて、それじゃ病院まで送って行くよ」
「浩之、僕が行こうか、まだ話あるんだろ」
 お茶を飲み終わった雅史が立ち上がった。
「おう、頼むわ」
 浩之が投じた車のキーが雅史の手に収まる。
「あの」
「あん?」
 山川留美に呼び止められて浩之は振り返った。
「ありがとうございました」
「本当に、お礼の申しようもありません」
 山川敬三は病身を折り曲げて頭を下げた。
「元はといえば、私があんなところから金を借りたばかりに」
「ま、そうだけどよ、あそこもちっこい文字で契約書の見えにくいところに無茶苦茶法
外な利率を書いとくので有名だからなあ」
「あの、本当にありがとうございました」
「別に、おれだって人に頼まれてやったんだ。礼をいわれる筋合いはねえよ」
「すいません、浩之ちゃん、照れ屋さんだから」
「余計なことはいわんでいい」
 浩之は手を振った。
 留美は、潤んだ目で彼を見て、最後に一礼し、
「行こうか」
 という雅史の声に応じて事務所を出ていった。
 一応、報告のための浩之は応接室に戻った。
「終わったよ、今、雅史が連れていった」
「そう……」
「……」
「いやいや、先輩、お礼はもういいってば」
「浩之……やっぱりあたしたちのやってることって自己満足なのかしらね」
「は? どうしたんだよ」
「ふと、そう思ってね」
「自己満足か……ま、そうかもしれねえけどさ、やれることはやろうとしてるじゃねえ
か、二人とも」
「本当はね、来栖川SPをもうちょっと増員して、こっちでやりたいんだけどね、なん
といっても企業だから、安全保証料を払っていない人間に力を入れるよりは、保証料を
払い込んでいる人たちのより一層の安全を推進する方向に行っちゃうのよね」
「ま、しょうがねえだろ」
「せいぜい、一握りの人間しか救えないのに……」
「綾香」
 浩之はいつになく沈んだ綾香の表情から目を逸らしていった。
「さっきの二人さ、ありがとうっていってたよ」
「そう……」
「おれは、それでも十分満足だぜ」
「あたしは……」
「満足できないんだろ」
「うん……」
「ま、綾香はその内、来栖川SPの社長だろ、だったら、いつかはできるんじゃないか、
やりたいことがさ」
 こくり。
「お、先輩もそう思うか。そうだよな、綾香だったらできるよな」
 こくこく。
「な、なによ、二人してあたしのことおだてて」
 綾香は顔を赤くしてそっぽを向いた。
「うん、あたし、いつかやってみせる」
 その日の別れ際の綾香のその声が妙に印象深く浩之の脳裏にこびりついた。
 綾香なら、いつかやるだろう。
「みんなぁ、大変よ大変!」
 一仕事終えてビールを開けていた浩之は駆け込んできた志保の声に反応して立ち上が
った。
「志保! てめえにいいたいことがある!」
「そんなこといってる場合じゃないわよ、馬鹿!」
「ば、馬鹿とはなんだ!」
「馬鹿だから馬鹿だっていうのよ、大変なのよ」
「志保、何が大変なの?」
 このまま浩之と志保を放っておいては話しが進まぬと思ったあかりが口を挟んだ。
「今、表でね、女の子が二人、男に絡まれてんのよ」
「なにぃ、なんだそりゃ」
「女の子がいやがってるのに無理矢理連れて行こうとしてんのよ! ヒロ、なんとかし
なさいよ! あんた、藤田組の組長でしょ!」
「藤田商事の社長だ」
「ああ、もう! 早く!」
「場所は!」
 志保相手に口喧嘩をしている時と場合ではないと思い直して浩之が叫ぶようにいった。
「このすぐ下よ、ビルの真ん前」
「なにぃーーーーっ、このおれのシマで女の子いじめとはいい度胸してんじゃねえか!
出るぞ、狩ってやらあ!」
「ヘイ、ヒロユキ!」
「おう、レミィ、どこ行ってた」
 どこからともなく宮内レミィが現れた。眼光が怪しく輝いている。
「奥でボウガンの手入れをしてたネ」
 そういったレミィの手には、光り輝くボウガンが握られていた。
「ヒロユキ、今、ハンティングっていった?」
「おう、ハンティングだ。レミィも来るか」
「行く行く、アタシ、ハンティング大好きネ!」
 レミィは嬉しそうにいった。見ようによっては無邪気な子供が遊びに連れて行っても
らえて喜んでいるようにも見える。
「ようし、レミィ、葵ちゃん、行くぞ!」
「はい」
「ラジャー」
「あの……私も行きます」
 そういって従軍を願い出たのは袖からちょっと手の先を出した琴音であった。
「よし、それじゃ琴音ちゃんは離れて見ていてくれ、危なくなったら、能力で援護を頼
むぜ」
「はい」
「ようし、出撃!」
 ロッカーから取り出した木刀を担いで飛び出した浩之のすぐ後に目を爛々と輝かせた
レミィと、ウレタンナックルを拳にはめた葵が続き、さらにその後を琴音が着いていく。
「がんばってねえ」
「がんばるのよ、ヒロ」
「がんばりや! そんな女の敵なんぞタマ潰したれ!」

          何をやっているのかよくわからない怪しげな
          会社「藤田商事」の活動は以上の例を見てい
          ただければおわかりになるだろう。
          なお、彼らに痛い目に合わされた犯罪者たち
          は彼らを藤田商事とは呼ばずに「藤田組」と
          呼称しているようで、昨今ではそちらの方が
          通りがいいようである。


    どうも、vladです。最初は題名を「実録・藤田組」にして
    ほんまもんのやくざものにしようとしたのですが、鉄砲玉の矢
    島が「姐さぁーん!」と叫んで玉砕したり、敵対組織の幹部に
    なっていた橋本が志保に「信じちゃもらえないかもしれないけ
    どな、あれ以来、おれはホントにお前に惚れちまったんだ」と
    告白した直後、チンピラどもにドスでめった刺しにされたり、
    浩之や雅史がシャブさばいてるところとか考えて嫌になってし
    まって、現在のようになりました。やっぱり、浩之たちですか
    らねえ、多少、無理矢理で苦しくても正義の味方っぽくした方
    がよいのでは、と、愚考した次第です。

    久々野 彰さん   「新たなる世界へ」の感想ありがとうございました。
              ええ、いわれる通り、当初の予定よりも素直なラス
              トになりました。

      感想を文章化するのが苦手なので、自分では書かないのですが、
      私の作品の感想に対する御礼は出来うる限りやっていこうと思っ
      ています。例の飛んでしまった一ヶ月分の間に感想を下さった方
      の感想は私の目に触れていないこともありえます。感想への御礼
      無き場合はそういうことだと思って許してやって下さい。       
   
 それではまた……。