買った理由(わけ) 投稿者:UMA 投稿日:5月21日(火)00時26分
「ありがとうございましたー」
「ふう、買うものも買ったし、そろそろ帰るか」
浩之は釣り銭を財布に入れながら、つぶやいた。

ここはパソコンショップのレジの前。
浩之はゲームソフトを買いにきたようで、片手にはショップのロゴの入った紙
袋を下げている。袋のふくらみ具合から見て、パソコンソフトを2、3本買っ
たのだろう。

「あ、浩之ちゃん」
「げ、あかり!?」
と、そこへ現れたのは浩之の彼女、あかりだ。
あかりは浩之の保ってる紙袋をのぞき込もうとしたが、浩之は見えないように
反対側の手に持ち替えた。

「もー、またゲーム買ったの?しょうがないなー。ねえ、どんなゲームかった
の?私にも見せて」
「い、いや…。た、たぶんあかりにはつまんないから、見てもしかたないよ」
「でもいいよ。私、浩之ちゃんがどんなゲームしてる知りたいもん」
「でも、マジつまんないって!」
「それでもいいの。見せてよー」
「し、しかし…」
「あ、浩之ちゃん。あれ、何だろ?」
「え、あれって…?」
「えい☆」
「って、何するんだよ、あかり。あぁっ!」

びりびりびり…!

あかりは浩之の気を引いた一瞬をついて浩之の紙袋をとろうとしたが、紙袋が
破れて中身を床にばらまいてしまった!

「ご、ごめんなさい、浩之ちゃん…」
「ごめんじゃねーよ!」
「う、うん…」
「あ、あかりは拾わなくても…い…い…」
しょんぼりとなって床に落ちたソフトを拾おうとするあかりだったが、なぜか
浩之がそれを制する。

が、時すでに遅し。

あかりは足下にあったソフトを拾っていた。
それは、タイピング練習ソフトが1本と、18歳未満のお子様はプレイしては
いけない、いわゆるアダルトソフトが2本だった。
ゆらり、と立ち上がるとあかりは、そのうちの1本『うたわれるもの』を浩之
の目の前につきだす。
いわゆる、アドベンチャー+シミュレーションRPGというゲームだ。

「…浩之ちゃん?これ、なぁに?」
「そそそ、それは、りりり、リーフの、そのぉ…」
「え、リーフ?…うーん、まあいいわ。これは許すわ」
「ええっ!?」
あかりがアダルトソフトを容認するとは意外だった。もっとも、家庭用ゲーム
機に移植されたとはいえ、彼女が出演しているゲームも元々はアダルトゲーム
なので、同じソフトハウスのタイトルだから、という彼女にしても複雑な理由
からだが。

「…このくらいで」
「は?今、なんと…」
と、浩之が聞き返すより早く、あかりは背を向けるとそのまま当て身をブチ当
てる。鉄山靠だ。

がいーん!
浩之はなにがしかの行動をしようとしたのか、あかりの鉄山靠はカウンターヒ
ットした。しかしカウンターヒットしたにも関わらず、あかりは『このくらい
で』という言葉通り追い打ちは入れなかった。
それでも、壁ヒットしたので事実上追加ダメージは入っているのだが。

「げ、げほぉ…っ!」
「次。浩之ちゃん?これはなぁに?」
壁にもたれかかったままの浩之に、今度は『カードキャプターさくらタイピン
グアドベンチャー』をつきだす。
タイトル通り、キャラクタもののタイピング練習ソフトだ。

「そそそ、それは、そのぉ…」
「『カードキャプターさくらタイピングアドベンチャー』ってなに?」
「(タイピング?そっか!)よよよ、読んで字の如しさ。た、タイピングの練
習をしたいって健太郎のやつが…」
「けんたろーがどうしたって?」
「いっ!?」
と、そこへ現れたのはLV1スフィーだった。彼女がLV1の姿をしている理
由は魔力の使いすぎ、というのが表向きの理由だが、健太郎の趣味というのが
本当の理由だ。

「あああ、あの、その、すすすスフィーちゃん…」
「スフィーちゃん、健太郎さんがこのさくらのタイピングソフトを浩之ちゃん
に買いに行かせたらしいんだけど、知ってる?」
パニくってる浩之の代わりにあかりが答える。

「あははは。そんなことないよー。だってけんたろ、『お子魔女』はみてるけ
ど、さくらはみてなかったもん」
「なにー!」
スフィーは笑って否定する。
スフィーのいうとおり、スフィーと健太郎は日曜日の朝は今年で4年目に突入
した『お子様は魔女めっさーつ!』をみている。が、国営放送で放送していた
『カードキャプターさくら』はみてなかったのだ。

「…浩之ちゃん?」
「ははっ…ははっ…」
あかりは疑惑に満ちた目で浩之を見る。

「あーっ!もしかしてひろゆきくん、そのソフト買ったのをけんたろーのせい
にしようとしてたのね!許せないわっ『ラゾンデ』!!」
「うそぉぉぉ…!」
スフィーは、雷系の上位テクニックを唱えた。

ずどごぉぉぉん!

LV30テクを精神度MAXなフォニュエールが唱えたのと同等か、それ以上
の威力だ。
さらに、浩之がのけぞりから復帰した瞬間、あかりが繰り出したN−N−Hの
三段目のヘビーアタックがヒット!クリティカルした。
容姿が変わっていないが、どうやらあかりはナックル系の武器を装備している
ようだ。

「ふーんだ」
そういってスフィーはぷい、っと帰っていった。

「かっ…はっ…!」
「最後。浩之ちゃん?これはなぁに?」
床に寝そべったまま血反吐をはいて虫の息の浩之に、今度は『はじめてのおい
しゃさん』をつきだす。
病院の医者になって患者を治すアドベンチャーゲーム…といえば聞こえはいい
が、18歳以上にはとても見えない程若々しすぎる双子の女性相手に、リアル
お医者さんごっこをするという、一部の好事家にクリティカルなゲームだった
りする。

「そそそ、それは、そのぉ…」
「『はじめてのおいしゃさん』ってなぁに?浩之ちゃん、お医者さん?」
「はは…いや、その…」
浩之は必死になっていいわけを考える。が、このゲームはパッケージ全体に前
述の若々しすぎる女性のCGが満載だからさあ大変。

「えっとその…。(あ、そうだ…!)ち、違うんだよあかり。これはコーイチ
さんに頼まれて…」
「ふぇ…。お兄ちゃん、そんなゲーム買わないもん」
「『もん』…って誰…?ええっ!」
「あ、初音ちゃん」

浩之とあかりが振り向くと、そこには涙目の初音が立っていた。彼女は魔法の
せいでも薬や病気のせいでもなく、ナチュラルに小学生と見間違えそうな若々
しい容姿をしている。子供服を自然に着こなしているというのも理由の一つだ
ろう。
初音が女児の格好をしている理由は耕一の影響の趣味らしい。

「ぐすっぐすっ。ひどいよぉひろゆきくん。お兄ちゃん、そんなゲーム買わな
いもん…」
「よしよし、初音ちゃんもう泣かないの。もー浩之ちゃん!ちっちゃい子を泣
かしたらダメじゃないの」
『ちっちゃい』とあかりは言ったものの、初音の年齢と浩之とあかりの年齢は
そんなに離れている訳じゃない。ここは『背が小さいことを指している』と、
どこぞのエロゲームにありそうな解釈をしておこう。

「ででで、でもコーイチさんは前に『はじるす』買ってなかったっけ?」
『はじるす』それは浩之が買った『はじいしゃ』の前作(?)にあたるゲーム
で、『はじめてのおるすばん』のことだ。
あまりにも若々しすぎる双子の女性と一緒に留守番をするという内容で、一部
の好事家にクリティカルヒットしてしまったため、その結果ユーザのニーズに
応える形で『はじいしゃ』が発売されるに至ったという。

「ぐすん…。ま、前にお兄ちゃんがそれみたいなゲーム買ってきたけど、初音
が『めーっ!』て言ったら、もう買わないっていってお店に返すって言ってた
もん」
耕一も『一部の好事家』だったりするので、『はじるす』はしっかり買ったの
だが、この通り初音に怒られたので、泣く泣く処分してしまったのだ。
そうでなければ、浩之に頼むまでもなく、自分で買いに来ていたハズだ。それ
も、予約して特典のテレカもゲットしていたに違いない。

「あ、それで店に返すのも何だからって言って、はじるすが俺んとこに回って
きたのか…」
「え、はじるすって?…浩之ちゃん、それも持ってるの?」
「あ」
浩之はあっさりと墓穴を掘る。
かわいそうに。よけいなことを言わなければバレなかっただろうに。

「…浩之ちゃん?」
「は、はい?」
あかりはちょっぴりお怒りモードに入った様だ。
それを本能で察したのか、浩之は地べたを這いずるようにしてあかりから逃げ
ようとする。

「まちな、あかりぃ」
「え?初音ちゃん?」
あかりが浩之に向かおうとした瞬間、いつの間にか泣きやんで不良化した初音
が呼び止める。初音は今ではキノコの力を借りずとも、不良初音にモードチェ
ンジ可能になったのだ。

「あたいの耕一を侮辱しやがったんだ。あたいにも浩之を殺らせな」
「え、うん…」
「よぉぉぉし、あかり『ゴレンジャーストーム』だ」
「うん!…って、ええっ!?初音ちゃん、私たち二人しかいないわよ?」
初音はどこからともなくサッカーボールを取り出すが、それをみてあかりが驚
く。
ゴレンジャーストーム。
それは、五人そろってナンボな戦隊が使っていたというバレーボール型爆弾の
ことで、桃→緑→黄→青とパスをつないでいって、ラストをリーダーである赤
が怪人に向かって蹴るというものだ。後に、怪人に向かって蹴るととげが生え
たり怪人の苦手なモノに変形したりするようになる。
ちなみに、ゴレンジャーストームをパワーアップしたゴレンジャーハリケーン
というものもあり、こちらはラグビーボール型爆弾を使用する。

「大丈夫だ、あかり。あたいたちなら2人で十分」
「うん、それもそうね」
「おっけぇっ!じゃあ、改めていくぜ、『ゴレンジャーストーム、ドライブタ
イガーショット』!」
「うん!」
あかりもあっさりとナットクし、初音と一緒にボールを蹴った!
二人の蹴ったボールは空気との摩擦熱により激しく燃え上がり、やがて虎のよ
うになった!

「いぃぃぃやぁぁぁぁぁ!」

どっかぁぁぁん!
虎の形の炎をまとったボールは浩之を直撃、カメラが引くと同時に大爆発を起
こした。

「殺ったぜ、あかり」
「うん、初音ちゃん。これで浩之ちゃんもわかってくれるわよね」
冥土への片道切符をがっちり握りしめている浩之を見ながら二人は微笑んだ。



<おしまい>
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どうも『いいわけは見苦しいです』のUMAです。

今回のネタは『GW前に発売されたゲーム』です。
…多少、発売からSS発表まで間があいている気がしますが(汗)

よくは知りませんが、GW直前にかなりの数のエロゲーが発売になったそうで
久しぶりにリーフからもゲームが出たのでネタにしてみました。
ちなみに儂は買ったけど、積みゲーと化しています(誰彼もまだ積んだままだ
っけ)。

んで、フィニッシュはサッカーワールドカップの年だし、ってことでゴレンジ
ャーストームでシメてみました。
ドライブタイガーショットは『某顔のパーツが20年前と全然成長していない
ような気がする上に、劇中に実名の選手が出演していてもW杯メンバーは全員
コミックのキャラクタになるに違いないというサッカーマンガ』が元ネタでは
ありますが、『実写版ミスター味っ子と呼び声の高いアクショングルメ映画の
監督の新作である少林寺拳法の達人同士による超人サッカー映画』をイメージ
して書いていたりします。

#先行ロードショーが急な出張で見られなくなったよー(涙)>少林サッカー

なお、ゴレンジャーストームとゴレンジャーハリケーンについては記憶を元に
書いています。
なので、ごっちゃになってる可能性があったりします(もしかしたら他の戦隊
物や仮面ライダーとかも混じってるかも…?)。
儂の記憶だと、ゴレンジャーストームってバレーボールだと思ったんだけど、
インターネットで調べたらサッカーボールみたいだし…。
儂の記憶って適当なのね(汗)
ま、ゴレンジャーなんて、幼少の頃にみたっきりだからだからねぇ。いや、田
舎では高校生の頃に再放送してたな。PAO〜Nでよくネタになってたっけ。



ぢゃ、そういうこって。