人と鬼の戦い2002・ACT4 投稿者:UMA 投稿日:3月10日(日)23時50分
<前回までのあらすじ>
 毎年恒例の節分。
 今年は人が鬼を退治するのではなく、鬼が人を襲うというあらすじだ。
 そして、柳川が調子に乗って人を狩っているとプロトタイプ・セリオにやら
 れてしまった上、捕まった仲間を救出にきた『WHITE ALBUM』の
 メンバーを、返り討ちにしようとした梓と楓までも、たまたま近くを巡回し
 ていたマルチに乱入され、やられてしまった。
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「お兄ちゃん、瑞穂ちゃんは捕まえたわ!」
「OK、初音ちゃん!…祐介は俺が捕まえる!」
話しは少しだけさかのぼる。
ジェノサイドしまくりの柳川と別れた耕一と初音は、息のあったコンビネーシ
ョンで次々と人間を捕獲していた。
ちょうど今も、藍原瑞穂と長瀬祐介を追いつめたところだ。

「くっ…。『シールド』!」
「遅い!」
耕一に追いつめられた祐介は、いわゆる「?」の装備を呼び出す。「?」は敵
弾なら16発、敵キャラの体当たりなら8回まで防げるという、前方のみを防
御する、強力な装備だ。
しかし「?」は、装備してから画面外から自キャラに向かって飛んできてくる
ので、とっさの防御には向かない。装備の選択を誤ったようだ。

どげしぃ!
耕一は祐介を捕まえるつもりが、勢い余って思い切り殴りつけてしまう。殴ら
れた祐介は地面にたたき付けられた瞬間、柏木家の地下牢へテレポートした。

「…ふう。これで、この辺の人間は全滅かな?」
額の汗をぬぐいながら耕一はあたりを見渡す。彼には普通の人間にはない『超
感覚』があり、それで周囲をサーチしているのだ。

「そう…みたいね。お疲れ様、お兄ちゃん」
言いながらトコトコと耕一のそばに来る初音。彼女もまた、鬼の血を引くため
か、耕一同様の能力があるようだ。

「さっきの祐介で、えー…っと。…何人だっけ?」
「んと…、初音も数えてなかったけど、30人くらいじゃないかな?」
「30人かー。さすがに楽しんで狩っていた柳川のペースにはかなわないな」
「ふふ、そうだね。でも柳川さんの場合、レア度『☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆』な
人ばっかりだから、お兄ちゃんのほうが凄いんだよ」
「そうかな?」
「うん。さっきの祐介くんとかは『★★★★★★★★★☆』くらいはあると思
うからね」
「お、結構高いレア度だな。さすがは主人公とヒロイン達だ」
姉と同じような比喩をする初音。やっぱり血は争えないようだ。ちなみに初音
があげたレア度には『DBの剣』『ヴァリスタ』『ラコニウムの杖』といった
『ぬか喜びなスペシャルウエポン』が該当する。

・
・
・

「…あーあ、祐介も捕まったか。さすがに鬼連中に見つかったら、ほぼ逃げき
れないみたいだな…」
「だからといって、私たち、ずーっと隠れたままでいいんです?」
と、少し離れた藪の中から耕一達を見る人がいた。
藤田浩之と、彼の後輩の松原葵だ。

「いいんだよ。『たすけ鬼』って言えば、隠れんぼがうまいヤツが勝つって相
場が決まってるんだからな」
浩之の言葉はある意味的を射た真実だ。
実際、隠れるのがうまい人が相手だといつまでたっても見つけられず、時間切
れで鬼側の負けになるということも少なくないからだ。

「じゃあ、このまま時間切れまで隠れてるってことですか、先輩?」
「そーいうこと」
「やったー!」
言いながら葵は浩之に寄り添う。

「先輩とこうやって、一緒にいられるなんて、なんか夢のようです…」
「んんー。そうかー?」
浩之は笑いかける。

「でもいいんですか?神岸先輩と一緒にいなくて」
「あかり?いいんだよ、あいつなら一人でも十分鬼と戦えるから。それより、
せっかく二人きりなんだしさぁ…」
浩之は葵の肩に手を回そうとする。と、そのとき二人の背後に人影が現れた。

「…ねぇ『あいつ』ってだぁれ?」
「あぁ?あかりのことだよ」
「ふーん、そぉなんだ…。たのしそーね、おふたりさん?」
「ははっ。そ、そう見える?わはは…、は…は…」
浩之は背後にいる人物が誰かわかって、笑いが引きつりだした。

「か、神岸先輩!?こ、こんにちわっ!」
「はい、こんにちわ」
驚いて浩之から飛び退いた葵と挨拶を交わすあかり。顔は笑っているが目は笑
っていない。むしろ、目の奥には凄まじい怒りの炎が見て取れる。

「あああ、あか、あか、あか、あかり…さん…」
「…浩之ちゃん?どぉいうことか、説明してくれるわよね?」
「そそそ、そりゃぁもう…。うぉあ?!」
腰が抜けた浩之が後ずさると、バランスを崩して藪から転げ落ちた。

「いててて…」
「お兄ちゃん!あそこ、浩之くんだ!あかりちゃんと葵ちゃんもいるよ」
「よっしゃぁぁぁ!浩之、そこを動くなよぉ!」
「し、しまった!」
浩之は耕一達に発見されてしまった!耕一と初音は一直線に浩之達の所へかけ
だす。

「ストーップ!」
だが、あかりは声を上げると耕一と初音は思わず動きを止めてしまう。

「あかりちゃん?」
「私は浩之ちゃんとお話しているのよ?邪魔しないでちょうだい」
「でもぉ…」
「い・い・わ・ね?」
「…うん」
初音が何か言おうとしたが、あかりが強引に却下する。

「うん、いい子ね。さて、浩之ちゃん。…浩之ちゃん?」
あかりが浩之の方を振り向くと、そこに浩之の姿は無かった。

「あかりちゃん、あっち…」
「え?んもう、浩之ちゃんったら…。えい☆」
初音が指さす方向を見ると、腰が抜けたまま、へこへこと逃げる浩之の姿が見
えた。
それを見たあかりは、問答無用で真空波動拳を放ってとどめを刺した。

「のぉぉぉぉ…!」
真空波動拳ではじき飛ばされた浩之は、近くの巨木に激突し、気を失った。
ただし、『鬼の攻撃で』気を失った訳じゃないので地下牢へのテレポートはな
い。

「うん…っしょっと。初音ちゃん?私たちを捕まえてくれる?」
あかりは気を失った浩之の元へ歩み寄り、抱き起こす。そして、初音の前まで
移動すると、そんなことを言った。

「え?」
「だって、私たちも捕まえるんでしょ?」
「そうだけど、いいの?」
「ええ。一緒に捕まれば、ゆっくりお話できるもん。ね、浩之ちゃん?」
あかりは浩之の胸のあたりに一撃を見舞い、活を入れた。

「よかったなぁ、浩之。『至れり尽くせり』だな」
「『踏んだり蹴ったり』じゃぁぁぁ…!」
浩之はそう叫ぶと、再び気を失った。

・
・
・

「…さてと。今度こそ、この辺の人間は全滅かな?」
「うん、そうだね」
浩之とあかりを捕獲した耕一と初音は、虎燕拳で果敢に立ち向かってきた葵を
なんとか倒したようだ。
もっとも、あかりのように素直に捕まってくれるように説得したのだが、あっ
さり交渉決裂、結局力ずくで捕まえることになったからだが。


ちゃっちゃちゃー、ちゃららちゃらら…。
突然、携帯電話の着メロが鳴る。初音はポーチから携帯電話を取り出す。

「ん?『魔城伝説』の着メロってことは、千鶴さんからだね」
「うん。そうだよ」

ぴ。

「もしもし、お姉ちゃん?…うん、こっちは大丈夫だよ。…え?柳川さんが?
うん、うん。…わかったわ」

ぴ。

「どうしたの、初音ちゃん?柳川がどうかしたって?」
「うんとね、柳川さんがやられちゃったらしいの」
「え!またか!」
「うん『また』。それとね、お家の方に誰かが攻めてきたみたいなの」
「ふーん。ま、梓達がいるから大丈夫だろ?」
「そうなんだけどね、初音、何か悪い予感みたいなのがするの。だから、念の
ために、お家に戻ろう?」
「悪い予感?初音ちゃんがそういうなら、何かあるかもしれないな。よし、家
に戻ろう」
「うん、お兄ちゃん」
耕一は初音をおんぶすると、柏木家へ向かって走り出した。



<つづく>
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どうも『今はいつでしょう…』のUMAです。

今回のネタは見ての通り『節分』です。

毎年のことなので、なんとかマンネリにならないようにない知恵を絞って続け
ているシリーズです。
で、悩んだあげく今年は『鬼ごっこ』で落ち着きました。

にしても、開始から一ヶ月たつけど、まだ終わってませんね(笑…えん)

でもなんとか次で終わる(と思います)ので、おつきあいのほどを。

ぢゃ、そういうこって。