人と鬼の戦い2002・ACT3 投稿者:UMA 投稿日:2月26日(火)23時11分
<前回までのあらすじ>
 毎年恒例の節分。
 今年は人が鬼を退治するのではなく、鬼が人を襲うというあらすじだ。
 そして、柳川が調子に乗って人を狩っているとプロトタイプ・セリオにやら
 れてしまったのだ。
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ひゅぅぅぅ…、どさ。
誰かがここ、柏木家地下にある特設地下牢に降ってきたようだ。

「…あら、また誰か飛んできたわよ」
「ここ何分か飛んでこなかったのって、やっぱりお昼ご飯だったということで
しょうか」
「たぶんな。耕一達も昼メシが終わって午後の狩りが始まったってことだろ…
って、柳川じゃないか!」
『ええっ!?』
牢の前で食後のお茶を飲んでいた千鶴と楓は驚いて梓の視線の先を追う。
そこには、数度にわたるハリケーンミキサーを食らって、ボロ雑巾のようにな
った柳川が牢の前に倒れていた。

「…もしかしなくても柳川さん?『また』あっさりと負けたのですか?ま、い
つものようにあっさり負けたと思いますので、あえて誰に負けたかは聞きませ
んけど」
虫の息の柳川を抱き起こすこともなく、そのまま見下して(『見下ろして』に
非ず)死人に鞭打つような情け容赦のカケラすら感じられない言葉を投げかけ
る千鶴。

「こ、今年は何百人も狩りまくったぞ!またって言うなぁぁぁ…」
「でもレア度『☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆』なザコキャラばっかりじゃ、数のうち
に入りませんよ?」
「そ、そんなに俺が狩ってきた奴らはザコだったのか…」
「ええ、ザコです」
口ごもる柳川。
たしかに柳川が狩ってきたのは、ほぼ全員がゲーム中に名前が一切表示されな
いような『背景』のようなキャラばかりだ。
当然思考ルーチンも無いに等しく、RPGの村人のように同じ事を言わないよ
うな連中であるため抵抗らしい抵抗もしなかったのも事実だ。
ちなみにレア度というとのは、某国産ネットRPGに出てくる武具の強さを測
る尺度で、レア度『☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆』というのはもっとも弱い、ただの
セイバーとか普通のハンドガンなどが該当する。

「倒したって言うんなら、せめてレア度は『★★★★★★★★★★★★』くら
いなくっちゃ、満足できないわ」
「…え、えらい高いレア度をご所望で…」
千鶴があげたレア度に該当する武器は『ラヴィス=カノン』『ヘブン・パニッ
シャー』『サイコウォンド』といった超絶にレアなアイテムだったりする。
と、そのとき。
からん、からん…とレトロ感覚いっぱいな侵入者検知システム、鳴子が鳴る。
どうやら、誰かが鬼に捕まった連中を解放しにきたようだ。

「ん!誰か来たわ。梓、見てらっしゃい」
「待ってました!誰も攻めてこなくて、ヒマだったからな。食後の体ごなしに
ちょっと行ってくるわ。楓、あんたもおいで」
「うん…ごくん」
湯飲みのお茶を飲み干した楓は梓についていった。

・
・
・

「さっき鳴った鳴子はこの辺…よね?」
「ええ…。あ、梓姉さん。あそこ!」
「あ、見〜っけ!」
言いながら二人はあたりを伺いながら前進していると、視界の端に人影を見つ
ける。梓はその人影に向かって駆け出した。

「やべっ!逃げろ!」
梓達が見つけたのは、藤井冬弥だ。傍らに七瀬彰もいる。二人は脱兎のごとく
逃げ出すが、あっさりと追いつかれる。梓は鬼の力を出していないようだがか
なり足が速い。陸上部というのは伊達じゃないようだ。

「まずは、一匹…!」
「ほげぇぇぇ!」
そういって思いっ切り冬弥をぶん殴る梓。一人、ではなく『一匹』と勘定して
いる時点でわかるが、彼女の行動パターンに『捕まえる』というコマンドはハ
ナっから存在しなかったようだ。
梓にぶん殴られた冬弥は吹っ飛ばされて壁に激突、その瞬間消えた。牢へテレ
ポートしたのだ。

「次ぃ!」
「冬…ゃ…」
七瀬彰が声を上げた瞬間、梓は返す刀で薙いだ手刀で切り伏せた。首から吹き
出した鮮血が綺麗な弧を描く。一撃だった。

「七瀬君!…当ったれー!!」
「いない。…上?」
茂みから、ヤスミノコフ7000Vと小銃「ミラ」で梓を狙撃した篠塚弥生と
川島はるかだったが、二人の放った弾が着弾したときにはすでに梓はそこには
居らず、バック転で飛び上がって二人を飛び越えるところだった。
そして梓は着地と同時に地面をたたきつけて衝撃波を起こす。その衝撃波は硬
直中の二人を直撃、吹っ飛ばした!

「ああっ、みんな!」
「由綺、あぶない!」
「さ・ら・に!見〜っけ!」
森川由綺が思わず声を上げる。そして、由綺を止めようとした緒方理奈も見つ
かってしまった。どうやらここに攻めてきたのは『WHITE ALBUM』
の一行のようだ。

「ふっふっふっ…。次はどっちを狩ろうかなぁ…」
「ね、姉さん…!」
明らかに梓の目は据わっていた。ある意味、柳川よりもタチが悪いかも知れな
い。

「決ーめたっ!次は由綺ちゃん!あんたよ!」
「ええっええっ!」
びしぃ!っと由綺を指さすと、梓は大ジャンプで飛びかかる!

が、梓が宙に浮いた瞬間、

きぃぃぃぃぃん!

「え!?きゃぁっ!?」
高速で飛んできた一条の光が梓を貫いて、そのまま壁にたたきつけた!

「けほっけほっ…。すいませーん、直撃でしたかー?」
「…もしかして、マルチちゃん?」
「はい、私ですー」
砂埃の中から声がした。間の延びた声はプロトタイプのマルチのそれだ。どう
やらさっきの光は、マルチの空戦用装備(いわゆる747F型)によるグライデ
ィングラムだったようだ。
なお壁にたたきつけられた梓は、そのまま気を失ったため『倒した』と判定さ
れて、柳川同様に牢にテレポートしたようだ。

「あれ?マルチちゃんはセリオさん達と一緒に行動してたんじゃなかったかし
ら?」
「はい。セリオさん達と一緒でした。そのとき、セリオさんが柳川さんをやっ
つけたのでメイドロボチームは一旦解散して、ほかの皆さんのお手伝いをしよ
うってことになったんです」
「ふーん。そしたら、私たちを見つけた、って訳ね?」
「そうですー。私がこの上空にさしかかった時、梓さんが虐殺してるのが見え
たので、ちょうど良かったですー」
にっこりとほほえむ、返り血で真っ赤になったマルチ。

「ふーん。そしたら、楓ちゃんを倒してくれる、って訳ね?」
「はい、やってみます!」
理奈に言われて、マルチは構える。

「行きます!『しゃぁぁぁいにんぐぅぅぅ…』!」
マルチは叫びながらポーズをとると、背中のバーニアを全開にふかしながら文
字通り飛んできた!

「そ、その技はまさか『シャイニングゴッドフィンガー』!?…いえ、そんな
ハズはないわ。作者はGガン見てないから…。ってことはアテナの超必『シャ
イニングクリスタルビット』?…それも違うわ。ネオジオやってないって話し
だし…って、あ」
何気に波動に充ち満ちた考えを巡らせた楓だが、その一瞬が命取りだった。

「しゃぁぁぁいにんぐぅぅぅ、ごぉぅ、しょぉぉぉっく!」
がしぃ!
マルチは楓を掴んだ。そしてホワイトアウトと同時に響き渡る打撃音。

どがががががが…!

かかーっ!
背中のウイングが『V』の字を描いた上にマルチの背に『減』の文字が浮かん
だ。

SHINING GOU SHOCK。
それは瞬獄殺をメカメカしく、そして凶悪にパワーアップした、一瞬で24発
もの打撃を相手に見舞うというマルチの必殺技だ。
もっとも、神を超えたあかりが繰り出す『瞬獄殺』はさらに凶悪で、32ヒッ
トもするのだが。

「…その技って、あかりちゃんに教えてもらったの?」
「はい、あかりさんに教えて頂いた技なんですー」
「ところでマルチちゃん?さっきの字、『滅』の間違いじゃないの?」
「え?…はわわわっ!」
電子頭脳を持っているハズのメイドロボにしては、信じられないボケをかます
マルチ。ある意味人間くさいといえるのだが。

「す、すいませ〜〜〜ん!!」
ぺこぺこと頭を下げるマルチ。

「まあまあ、失敗は誰にでもあることよ。気にしなくていいわ」
「で、でもぉ…」
「次がんばればいいのよ。さ、鬼の本拠地に乗り込んでみんなを助けるわよ」
「そうね。次、がんばろうねマルチちゃん」
「は、はい!」
言いながら3人は柏木家へと向かっていった。



<つづく>
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どうも『ゲームネタ、いろいろ』のUMAです。

今回のネタは見ての通り『節分』です。

毎年のことなので、なんとかマンネリにならないようにない知恵を絞って続け
ているシリーズです。
で、悩んだあげく今年は『鬼ごっこ』で落ち着きました。

まとまってませんねぇ(汗)
構想時点と結果とでかなり変わってます、今回。
最初はPSOだけとか格ゲーだけ(基本的に1タイトル)とか考えていたのです
が、結局ミックスにしちゃいました。

#ついでに、最近バージョンアップした『バーチャロンフォース』も入れてみ
#ました
#まだ747系テムジンには搭乗できませんが(T_T)

ぢゃ、そういうこって。