その日耕一と千鶴ら四姉妹、それに柳川の６人は柏木家の居間で一週間後に迫
った今年の節分について会議をしていた。

「えっと…。『チキチキ本物の鬼で節分しよう』の１回目が私たちの勝ちで、
２回目は負け…」
「負けたのは千鶴姉の寒いギャグのせいで…」

さくっ。
千鶴は梓の軽く頸動脈をかっきる。

「…次、３回目と４回目は私たちの連勝。今のところ３勝１敗ね」
「なんだ、結構勝ってるじゃん俺たち。ねー、初音ちゃん」
「うん、おにいちゃん。初音達、鬼さんだもんね」
「当然だ柏木の女よ。狩猟者たる我々が人間ごときに負ける訳があるまい？」
耕一達に向かって、柳川が勝ち誇ったように腕組みしたまま言い返す。

「でも１回負けてるし、それに柳川さんって戦いに出ても瞬殺されてますよ。
むしろ、人間でも電波使いの祐介さんや魔法使いの来栖川さん、スフィーさん
の方が戦力になってますが？」
「ぐっ…」
楓が戦闘記録を見ながら柳川に言う。なお、楓が見ている過去の戦いについて
は、図書館に納められているので参照されたし。

「ところで千鶴さん？今年のバトルはどういうルールなんだい？」
「えっと今年のルールは…」
言いながら千鶴は手にした封筒をあける。
封筒の差出人は本大会の出資者でもある者来栖川芹香だ。

「あら…？なんか、今年はちょっと違うみたいよ」
「違うって？どうしたの、千鶴お姉ちゃん。人数を限定したチーム戦みたいに
して戦うの？」
耕一の膝の上でミカンを食べていた初音が聞く。

「ううん、そんなんじゃないの。鬼ごっこよ」
「お、鬼ごっこぉ？」
一同、思い切りずっこける。

「鬼ごっこって、あの鬼ごっこ？」
「ええ、その、鬼ごっこよ。で、ルールはね
　1.捕まえるメンバー(以下、鬼)は逃げるメンバー(以下、人)を『タッチ』で
　　はなく『捕まえる』必要がある
　1.鬼が捕まえた人は捕まえられた後アジトにて『捕虜』になる
　1.人は武器を携帯してもよく、反撃も認める
　1.人が鬼を攻撃する際、鬼を発見したことを『告知』する必要はない
　1.人が全員捕まるか、または鬼が全員リタイアした時点でゲーム終了
といった感じよ」
「ふーん、鬼ごっこってより『たすけ鬼』ってヤツに似てるな」
「耕一はそう呼ぶんだ？あたしは『お助け鬼』だったね」
「そうか柏木？俺の子供の頃は『けいどろ』って呼んでたぞ」
「柳川さんの子供の頃って、想像できないカモ…。お兄ちゃん、初音も梓お姉
ちゃんと一緒で『お助け鬼』だったよ」
鬼ごっこといえば代表的な子供の遊びだ。それ故、地方ごとどころか同じ町内
でもグループによってローカルなルール・ローカルな呼び名があったりする。

なおこのたすけ鬼はその名の通り、鬼に捕まった仲間を『助ける』ことができ
るのが醍醐味で、メンバーの半分以上が捕まっても数人のメンバーで鬼のアジ
トを襲撃して一気に助け出したり(逆に鬼に待ち伏せされて一網打尽にされる
こともあるけど)というのが面白いのだ。

「…混乱するから呼び名はいいや。それで、メンバー分けはどうなってるんだ
い？」
「捕まえるメンバーが、柏木耕一、柏木千鶴、柏木梓、柏木楓、柏木初音、そ
して柳川祐也の６人。あとは全部逃げるメンバーね」
「というと、我々以外全員『狩って』いいのだな？」
「ええ、今年はこちらから『狩り』にでますから、思い切って心ゆくまでじゃ
んじゃん『狩って』ください」
「おっしゃー！」
すさまじくヤバ目の内容の会話を交わす鬼ども。

「ところでお兄ちゃん、たすけ鬼って、捕まえた人、助け出せるんだよね？」
「うん、それが面白いんだよ」
「でもそれだと、鬼が勝つのって相当難しくない？捕まえても、捕まえても、
終わらないっぽいよ？」
「大丈夫だよ、逃がさなければいいんだよ。それに、逃がそうとして大勢でや
ってきても、逆に俺たちなら一気に捕まえられるしね」
「でも、逃げる人たちって武器を持ってるんだよ？」
「へ？…あ、本当だ」

ルールにはしっかりと『人は武器を携帯してもよく、反撃も認める』と書かれ
ている。
武器の種類については明記されていないが、そうたいしたことはないだろうと
耕一はタカをくくる。

「だ、大丈夫だよ初音ちゃん。人が携帯できる程度の武器程度じゃ俺たちは倒
せないから」
「お兄ちゃんは大丈夫かもしれないけど、初音は大丈夫くないよぉ…」
ぐすっぐすっと泣きそうになる初音。
彼女も鬼の血を引いているから、鬼の力を解放すれば拳銃程度はものともしな
いだろう。
しかし、柳川や耕一らと違って実戦経験のないから怖いのだ。

「それなら、俺が初音ちゃんを守ってやるさ」
「ふぇ…本当？」
「もちろん本当さ。千鶴さんいいだろ、俺と初音ちゃんがペアで行動して？」
「しょうがないわねぇ…。梓、楓もいいわね？」
「あんま…よくないけど…。耕一、初音を泣かすんじゃないわよ！」
「…いいよ…」
しぶしぶ姉の意見に従う二人。

「じゃあ、ついでだから、係りも決めるわよ」
「係り？ああ、『人を捕まえる役』と『アジトを守る役』ね」
「ええ、そうよ。まず柳川さんは…」
その後話し合った結果、
　柏木耕一　　　『人を捕まえる役』
　柏木千鶴　　　『アジトを守る役』
　柏木梓　　　　『アジトを守る役』
　柏木楓　　　　『アジトを守る役』
　柏木初音　　　『人を捕まえる役』
　柳川祐也　　　『人を捕まえる役』
と、決まったのだった。




＜つづく＞
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どうも『節分です』のＵＭＡです。

今回のネタは見ての通り『節分』です。

毎年のことなので、なんとかマンネリにならないようにない知恵を絞って続け
ているシリーズです。
で、悩んだあげく今年は『鬼ごっこ』で落ち着きました。
まだ全部書き終えた訳じゃないので断言はできませんが、たぶん３話程度で終
わると思います。


ぢゃ、そういうこって。

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