「浩之ちゃん、お家についたわよ」 「あぁ…」 あかりとマルチに支えられて家に帰ってきた浩之は、なんとか玄関にあがる。 初日の出を拝みに行ってきて、その帰りだ。 天気に恵まれて無事、初日の出を拝むことはできたが、そのとき浩之はあかり の超必殺技を連発で食らってしまったのだ。そのダメージで歩くのもおぼつか ないのだ。 「大丈夫ですか、浩之さん」 「あんまり大丈夫くない…。ったく、正月早々から死にそうな目に遭うとは、 思わなかったぜ…」 立って歩く程度の体力は回復したようだが、まだ足下がおぼつかない。 浩之は超必殺技のダメージが抜けきっていないようだ。 「ふぅぅぅ…。ようやく帰ってこられた。…ん?」 浩之はソファーにどっかりと座るとようやく落ち着いたようだ。上着を脱ごう とすると、内ポケットに『何か』あるのに気づく。 「そういえばあかり、新聞、きてないか?」 「え新聞?新聞は…」 「あ、あかりさんは休んでいてください。私がとってきますから」 「そう?じゃあお願いね、マルチちゃん」 今日の新聞は元旦ということでスペシャル仕様で新聞受けに入りきらないほど の分量だ。 ほどなくして、その分厚い新聞の束を抱えてマルチが帰ってきた。 「も、持ってきましたー」 「ありがとう、マルチ。んーと、とりあえず年末ジャンボ宝くじの当選番号っ てどこに載ってるんだっけ…?」 「宝くじ?浩之ちゃん、買ってたの?」 「いいじゃねぇか。えっと…、あった。ここだ」 「もー、浩之ちゃんったら無駄遣いしてー。どうせ当たらないんだし…」 「ええっとぉ!7等はぁ…」 あかりの抗議は無視して、浩之は自分が買った宝くじの番号と照合する。 ・ ・ ・ 「…で、浩之ちゃん。300円以外当たった?」 『300円』は連番でもバラでも、10枚セットで買えば1枚は当たる。とい うのも、下一桁が当選番号だからだ。 「…」 「あ、もしかしなくても、やっぱり300円だけ?」 「…」 浩之は答えない。というより、固まってる。 「?どうしたの?怒ったの浩之ちゃん?」 「…あ、当たった……」 驚きで固まったままの顔をあかりに向け、そう答えた。 「当たった?…って、ホントに?」 あかりは信じられないといった目で浩之を見る。浩之は新聞の一点を指さして あかりにそこを見せるようにする。 訝しげに浩之が指さす記事を見るあかり。そこには年末ジャンボ宝くじの当選 番号が書いてあった。今度は浩之は手にした宝くじの番号を指さす。 「宝くじの番号はXM組のC68030…。7等の下一桁『0』?なぁんだ やっぱり300円じゃないの」 「違うって…」 浩之は震える指で、もう少し上の等級を指さす。 あかりも浩之の指す先を見る。どうやら3等のようだ。 「…3等は…、組下一桁が『M』で『C68030』…。ええっ!」 あかりも驚く。なんと、浩之が買った宝くじが大当たりしたのだ。 「そう!3等が当たったんだよ、100万円だぜ!」 「ひゃ、ひゃくまんえんっ!?すごい。すごいです、浩之さん!」 マルチも金額を聞いてびっくりしている。 「ははっ、信じられないな。宝くじで100万円も当たったんだぜ?まさか夢 じゃないだろうなぁ。…そうだ、あかり」 「うん?」 「ちょっと俺のほっぺたをたたいてくれないか?」 いいながら浩之はあかりに頬を向ける。 「えっと…、えい!」 ぺち。 あかりのびんたが浩之の頬を打つ。 「…あんまり痛くない…。やっぱり夢なのか…?よし、今度はもうちょっと強 くたたいてくれ」 「もっと強くだね。うんわかった」 あかりは思い切り体をよじって、反動をつける。 「『ちょっと』だ。…って、あかりぃぃぃ」 ・ ・ ・ 直後、浩之はあかりのファイナルターンパンチをモロに食らった。 「どう、浩之ちゃん?」 「ああ…、なんかだんだん痛みがしなくなってきたよ…。やっぱり、夢…だっ たのか…なぁ…」 いいながら浩之は血の海に沈んだ。 <おしまい> ---------------------------------------------------------------------- どうも『あけました・2』のUMAです。 今回のネタは見ての通り『年末ジャンボ宝くじ』です。 儂も宝くじは買ってはいますが、せいぜい6等の3000円が当たるのが精一 杯で1万円以上なんて当たった試しがないけどね。 なお、あかりがこの話で使った『ファイナルターンパンチ』は最高まで溜めた ターンパンチのことで、ヘタな超必殺技より強力な『普通の』必殺技です。 ぢゃ、そういうこって。