人と鬼の戦い2001・8 投稿者:UMA 投稿日:3月24日(土)23時27分
<あらすじ>
 突如『ヒト』『HM』による攻撃を受けた鬼の軍勢。
 耕一は和樹と瑞希を倒したが、一方スフィー達は…。



「あ、そうだ!スフィーちゃん達どうなったの?」
「え?ああ…。えっ…と…。ええっ!」
二人はスフィー達に視線を移すが、その光景を見て驚いた。
なぜならリアンがあかりの波動拳でやられてしまったところだったからだ。み
どりはすでにダウンしていた上、かろうじて残っているスフィーも疲労困憊に
見える。

「嘘…。あかりちゃんが二人も倒しちゃったの…」
「らしいな…」
二人は呟いた。

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「こ、こうなったらっ『NOILA−TEM!』」
「えい!」
「嘘っ…。きゃあああ!」
リアンが唱えた最強の攻撃魔法をあっさりと阿修羅閃空でかわしたあかりは、
弱昇竜拳(しかも3ヒット)でリアンにとどめを刺す。

「り、リアン!」
「姉さん…ごめん…」
スフィーが手を伸ばすがリアンはばったりと倒れて気を失った。

「リアンっ!よくも…『まじかるさんだー!』」
スフィーは泣きながら雷撃魔法を唱える。するとあかりはジャンプして自ら雷
撃魔法に突っ込んできた。

「自分から当たってくれるの?なら、もう一発『まじかるさんだー』」
スフィーはさらに雷撃魔法を唱える。
あかりの行動は、一見自殺行為に思えたが、彼女は空中ガードで一発目の雷撃
魔法を防ぐと直ちに地上受け身をとることで、スフィーの背後に回り込んでき
たのだ!
スフィーが2発目の雷撃魔法を唱えた後の硬直で、防御が間に合わない一瞬の
隙をついたあかりの作戦勝ちだ。

『やばっ』
とスフィーが思う間もなく、あかりは突き上げアッパーでスフィーを真上に打
ち上げる。エリアルレイブの始動だ。
そしてあかりはスフィーを追いかけるようにハイジャンプすると、スフィーに
左ジャブ、左膝蹴り、すくい突き、旋風脚とエリアルレイブをたたき込んでい
く。エリアルのフィニッシュは当然のように空中真空波動拳だ。

ひゅぅぅぅ…。どさ。

「はあはあ…。くっ…。あ、あなた…。噂どおりやるじゃない…」
なんとか立ち上がったスフィーは、肩で息をしながらスフィーは言った。

「あら、そんなことないわよ。でも、浩之ちゃんにあんなひどいことしたんだ
から、もう少しお仕置きしないとね」
まったく息を乱さず答えるあかり。二人の状態はあまりにも対照的だ。

「こ、こうなったら…!」
「うん」
言ってスフィーは構える。残りの体力と魔力から考えると最後の一撃になるだ
ろう。それが分かったのか、あかりも答えるように構えた。

「ぴいりかぱとれ えぬ っ♪」
「めっさつごうしょうりゅっ☆」
スフィーとあかりの二人は、完全に同時にスーパーコンボを発動させた!必殺
技のかけ声がの音数が全く同じというのもポイントだ。

ぽぅん…!
スフィーが持つ得物から音符を伴った光が放出されあかりを襲う!が、あかり
は昇竜拳の出際のしゃがみこんだモーションでかわす。さらに、そのまま滑る
ように昇竜拳を繰り出すことでスフィーとの間合いをつめてきた。
そしてあかりは、技後の硬直状態のスフィーに残り2回の昇竜拳をカウンター
ヒットさせる。

「きゃっ、もうダメ…!」
あかりが移動のために昇竜拳を1回空振りした分、ダメージ的にはたいしたこ
とはないとはいえ、すでにエリアルレイブなどを喰らって体力が激減していた
スフィーはダウンしてしまった。

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・
・

「スフィーちゃん…!」
耕一と初音がスフィー達のもとに駆けつけた時にはすでにスフィー達は全滅し
ていた。

「(すげぇ…。人間でもここまで戦闘力上がるとは…)さすがは、あかりちゃん
だな…」
「お兄ちゃん!関心してないでスフィーちゃん達を助けてあげないと!」
「え?ああ…。でもあかりちゃんが…」
近くにいたみどりを抱き起こしながら初音は耕一に檄を飛ばす。
スフィーとリアンの二人はあかりの近くに倒れていて、あかりを倒さない限り
近づくのは不可能だ。

「うーん…。仕方ないわ。倒しちゃっていいよ、お兄ちゃん」
「お、おう、分かった…。そういう訳であかりちゃん。いくぜ!」
「『そういう訳で』って耕一さん…。う…ん。でも私、耕一さんと戦う理由無
いですし…」
あかりは困惑している。とりあえず浩之のかたき(=スフィー)を倒したってこ
とで、もはや彼女に戦う理由はないのかもしれない。

「俺もあかりちゃんと戦いたくなんかないさ。でもな、初音ちゃんのお願いと
あっちゃ断る訳にもいくまい!」
耕一はあかりの意志を無視して勢いよく右フックを放った!耕一は和樹を倒し
た後もずっと鬼の力120%全開の状態だ。そんな状態の彼のパンチは、まさ
に『空を切り裂くパンチ』である。

ぶおん!
しかしあかりは、首を引いてかわした。でも、ちょっと前髪がかすったようで
何本かが空を舞っている。

ぱらぱらぱら…。

「あ」
それをみたあかりは声を挙げた。直後、あかりはパンチを放つ。どうやら彼女
は怒ったらしい。

ずどん!!
「か…はっ…!」
轟音とともに耕一のボディにあかりの右ボディブローがめり込む。
ただ当たったのではない。彼女の拳が半分めり込んでいるのだ。それも、強靱
な鬼の筋肉に守られているハズのボディに、だ。
耕一は今のパンチ一発で呼吸が止まり、前のめりになる。
さらにあかりは、右フックで前のめりになった耕一の顎に左アッパーを押し当
てると、そのままパンチを打ち上げる勢いでジャンプして膝蹴りまで連続でた
たき込んだ!

「グォォォォ…ぉぉぉ…!!」
耕一は獣のような断末魔をあげるとダウンしてしまった。そして、気を失った
のか、暫くすると耕一は鬼の力を解いて元の人間の状態に戻っていった。

「もう、駄目ですよ耕一さん。女の子の髪の毛に手を出しちゃ…」
あかりは前髪を整えながら、すでに気絶してる耕一に忠告する。

「ああっお兄ちゃん…!うらぁぁぁっ!」
一撃でやられてしまった耕一を見た初音は、怒りで一気に性格が反転する。

「きさーん!あたいの耕一になんばすっとね!」
「え?だって耕一さんが私の髪の毛を…」
「しゃぁしったいコラぁ!」
初音は飛び上がり、あかりにジャンプ攻撃を仕掛ける!

ごすっ!ばきぃっ!どすぅっ!
初音は見た目は幼いとはいえ鬼の血を引く娘だ。その攻撃は一撃ごとに空気を
振るわせるほど凄まじい。
だがあかりは軽くさばきながら的確に反撃する。とはいえあかりにも必殺技を
繰り出すような余裕はなく、初音の攻撃をさばくので精一杯だ。

がいぃぃぃ…ん!
通常攻撃ではらちがあかないことに気がついた二人は一旦間合いをあける。超
必殺技を出すつもりらしい。

「もう…。おいたは駄目だよ初音ちゃん」
あかりは悪戯をした子供をしかるような口調でたしなめると、右手を大きく振
り上げ、そして地面に叩きつけた!

「甘かっ!あたいが瞬獄殺で来ると思ったと?いくぜ、あかりぃぃぃ!」
初音も右手を右手を天高く振上げると、そのまま地面に拳を叩きつけた。

ずどぉぉぉん!
ずどごぉぉぉん!
二人が地面に拳を叩きつけると同時に大地は割れ、割れた地面から強力な波動
が吹き出してきた!

『きゃぁぁぁ…』
二人はダウンした。直撃すれば瞬獄殺以上のダメージがある超必殺技、金剛國
裂斬を文字通り『直撃』したのだから無理もないだろう。
あかりの読みが甘かったのか、初音が深く考えずに超必殺技を出したのかは、
分からないが二人とも、相手が出した技を喰らってカウンターダメージを受け
たのだ。

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・
・

「…えっと…。これはもしかして、ダブルK.O.ですかね」
そこへひょっこり現れたのは源一郎だった。

「ふむ。らしいな」
返事をしたのは源五郎だ。彼ら長瀬一族(祐介除く)は人側にも鬼側にも属して
おらず、審判員としてこの戦いに参加している。見えないところで実は暗躍し
ていたのだ。

「そうなると今年は引き分け、ということに…」
「ちがうわよ」
「え?」
二人は驚く。
辺りには気を失って倒れている人以外に、誰も居ないと思っていたからだ。

「こっちですよ」
「え?ああ…。あなたは柏木楓さんじゃないですか。そういえば戦闘に参加し
てませんでしたっけ」
「ええ。今年は誰も司令室までたどり着けませんでしたから、結果として戦っ
てません」
最初楓達は柏木家に作られた司令室にいたのだが、耕一と初音が、千鶴と梓が
相次いで出撃していった結果、司令室には楓だけが残ってしまった。
そのおかげで初音とあかりが両者ノックダウンになっても一人だけ無傷で生き
残ったのだ。
もっとも、千鶴のようにしゃしゃり出ていればどうなったか分からないが。

「分かりました。人チーム全滅により今年は鬼チームの勝ちとします!」
源五郎が鬼側の勝利を宣言して、長かった戦いがようやく終わった。



<おしまい>
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どうも『ファイト フォー フューチャー』のUMAです。

今に始まったことじゃないですが『何故あかりさんは凶悪なんですか』という
質問をよくされます。

この凶悪なあかりさん(以下『滅殺あかりさん』)は、『To Heart』の
あかりエンド後のあかりという設定で『浩之とつきあい出すまで自分の気持ち
に素直になれなかった分、つきあい出したら浩之を独り占めしたいという心か
ら生まれた』ということにしています(たまに浩之とつき合う以前のあかりも
滅殺してたりしますが)。
なので、浩之が浮気しようとしたりロリコンやホモに走ろうとしたら嫉妬心か
ら浩之に『シャレにならない位、きついお仕置き』をする訳です。

#ちなみに滅殺あかりさんが必殺技の名前を叫ぶことはまずなく、今回『滅殺
#豪昇竜☆』と叫んだのが、初めてだと思います

なお浩之は滅殺あかりさんの強さを引き立たせるため(?)、二流格闘家のダン
のイメージ…だったのですが、アニメ版『To Heart』で浩之役だった
声優さんがOVA版『ストZERO』でケンの声を当ててると聞いたので、急
遽ケンの役に抜擢しました。
でも儂の頭の中では『浩之=ダン』という図式が強かったので、ケンはケンで
も『ストZERO2のオートマチック使用時のケン』という、二流っぽいバー
ジョンだったりします(超必殺技発動の時に画面暗転しなかったのは、オート
マチックだからです)。

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^_^)/~