人と鬼の戦い2001・7 投稿者:UMA 投稿日:3月21日(水)22時52分
<あらすじ>
 突如『ヒト』『HM』による攻撃を受けた鬼の軍勢。
 梓に続いて祐介と千鶴までやられてしまった!
 だがそこへ、耕一達がようやく現れたのだった。



『オオオオオオオォォォォォォ…!!』
突然、獣の雄叫びが聞こえた。
その声を聞いた全員が本能的に萎縮し、地面にしゃがみ込む。それほど恐ろし
い雄叫びなのだ。

「あ、あれはまさか、耕一さん…!?」
あかりが声をあげる。
それにつられて他のみんなもあかりが指し示す方を見ると、そこには両手に人
間を抱きかかえた大きな異形の人影、鬼がいた。

ざしゃぁっ…。
両手に抱えていた人間を降ろした鬼は、戦闘形態を解いて人間…柏木耕一…に
戻る。

「千鶴さん!梓っ!!…おい、二人をやったのはお前かっ…!」
「ええ、そうよ…」
2体の幽波紋を従えた瑞希は答えた。もっとも、梓を倒したのは彼女ではなく
浩之とあかりだが。

「梓お姉ちゃん、大丈夫!?」
「けほっ…。あ、あんまし、大丈夫くない…。でも、あたしより千鶴姉を…」
初音が梓を抱き起こすと、梓は瑞希の足元に倒れている千鶴を指さした。
千鶴の近くには同じようにダウンしている祐介も見える。

「分かった。梓はここで休んでいろ。お前のかたきは俺がとる…!」
言って耕一は瑞希に向き直る。その直後、

「『はどうけん!』耕一さん、俺たちもいるんだぜ!」
「なにっ!」
浩之が撃った波動拳が飛んできた!。どうやら彼はいつの間にか復活したらし
い。そして、彼の横にはあかりがいる。巨大な数珠のような首飾りをして、真
っ青な変形空手着を着たあかりが、だ。

「ん?ちょっといいですか耕一さん?」
「…なんだ、和樹」
唐突に瑞希の影にいた和樹が耕一に話しかける。

「その、耕一さんが着ているジャアジ、ゴールドジャアジっすよね?」
「ああ、そうだが?それがどうした」
耕一の格好はジャージ姿に竹刀という、バーニングな漫画家がキャラデザした
という、体育教師の格好だ。ちなみに、彼が着ているジャージはシッポの生え
た宇宙人が主人公の漫画で、主人公やライバルが着ていた戦闘服と同じ素材で
出来ており、凄まじい伸縮性のおかげで鬼になっても素っ裸になる心配はない
という優れものだ。

「いやね、ゴールドジャアジを着ているってことは、耕一さんのファイティン
グスタイルはヌードフェンシングか…な…」
べきぃっ!
耕一は和樹の台詞が終わるより早く、彼に近づくと頭上から叩きつけるように
竹刀を振り下ろす。

「んだと、コラ?」
「ち、違うんすか」
和樹は頭からぶしゅーっと血を吹き上げながら聞き返す。

「違うわい!」
「えーっ。でもゴールドジャアジといえば、ナニを肩に担いで用を足すことの
できるっていうアレじゃ…」
べきっ!ごすっ!!
有無を言わさず竹刀でボコりまくる耕一。

「ふう…。お前があんな古い漫画を知ってるとは、さすがは和樹。オタク度が
高いな。その点は認めるぜ。だがな、俺をヌードフェンシングゴーな変態と一
緒にするんじゃねぇよっ!!」
一息入れた耕一は鬼の力を解放して再び和樹をボコりまくった!

「か、和樹っ!?…駄目、動けない…!!」
あまりの恐ろしさに近くにいた瑞希(および幽波紋)は、動けない!どうやら腰
が抜けたようだ。

「ちっ、待ってろ和樹!」
瑞希が動けないのに気がついた浩之が慌てて駆け寄る。

「やばっ、こういちさん!…こうなったら、けんたろっ、いくよ!」
「?いくって何だ、スフィー…ぃぃぃ?」
「『じゃいあんとすいんぐ♪』」
スフィーは健太郎の足を持ったまま振り回す。

ぶおん、ぶおん…。
何度も振り回してある程度のスピードになると、健太郎を人間ミサイルのよう
に浩之に投げつけた!

「なんじゃそりゃぁぁぁ!」
まさか人間をそのまま投げつけてくるとは思わなかった浩之はガードが間に合
わない!

どがしっ!
あわれ、浩之は健太郎の直撃(なんちゃってスーパー頭突き)を受けて、吹き飛
びダウンしてしまった。なお、攻撃を仕掛けた方の健太郎も被ダメージが大き
かったらしく、こちらもダウンしてしまった。

「ああっ、浩之ちゃん!」
折り重なるようにして倒れている健太郎を片手で投げ捨てると、あかりは浩之
を抱き起こす。
だが彼は、白目をむいて完全に気絶しているようだった。

「ひどい…。浩之ちゃんにこんなひどいことしたら、許さないんだからね!」
目が笑っていない。あかりはマジで怒っているようだ。

「ふーんだ、できるものならやってみなさいよ!」
あっかんべー、とあかりを挑発するLV1スフィー。

「姉さん、加勢するわ。『ADD TO LIFE』」
「私も微力ながら協力します。『シフタ』『デバンド』」
「OK!いくわよ、みんな!」
あかりと対峙するスフィー達、魔女軍団。1対3の変則マッチの始まりだ。

・
・
・

一方こちらは和樹をボコっている耕一だ。
丁度、耕一は和樹をボコボコにしたあげく、とどめの一撃を見舞おうとしてい
るところだった。

「これで、とどめ…だっ!」
耕一は上段に竹刀を構えると、そのまま振り下ろす。
だが、その瞬間!和樹が装備していた腕輪から声がする。スピーカーが内蔵さ
れているようだ。

『浩一お兄ちゃん、やめてよぉ』
「!このっ声はぁぁぁっ!」
スピーカーの声に即座に反応する耕一。

がきっ!
耕一は強引に竹刀の軌道を変えると、竹刀は和樹をかすめて地面に突き刺さっ
た。

「(た、助かった…。この腕輪のおかげ…?)」
ガードしたまま、おそるおそる目を開く和樹。その目の前に、戦いが始まる前
に大志から貰った腕輪が見える。
『最強の鬼の攻撃を無効化する』などとたいそうなことを言っていたっけ、な
どとその時は思ったが、本当に無効化しているのを見ると関心せずにはいられ
ない。
もっとも助けてくれるならもう少し、せめて耕一が鬼に変身した時に助けてく
れれば…と思ったのも事実だ。

『ぐすん…。浩一お兄ちゃん、そのお兄ちゃん、いじめたらダメだよぉ…。い
じめたら、美優里、泣いちゃうんだからぁ』
「み、美優里ちゃん、泣いちゃ駄目だよぉぉぉ!!」
スピーカーから聞こえた声の主はあさひだった。
だが耕一は最初の段階で、一瞬のうちに看破していたのだ。さすがだ。
もっとも彼は、何時如何なる時でもあさひの声『だけ』は看破することのでき
るという、素晴らしく無意味なスキルを装備しているのだから当然といえば当
然だが。
あさひが喋ってる台本を書いたのは大志なのだが、彼はアニメ以外でもあさひ
が出ているゲームもチェックしていたため、この『最強の鬼(=耕一)の攻撃を
無効化する』戦法を思いついたのだという。

『ねぇ、浩一お兄ちゃん。美優里のお願い、聞いてくれる?』
「もちろんだよ!美優里ちゃんのお願いなら俺、何だって聞いちゃうよ」
鬼の力を解除して人間に戻りつつ答える耕一。数秒前まで文字通り鬼のような
形相で和樹をボコっていたのが信じられないほど穏やかな表情だ。

「(う、動ける…?)いけっ『法皇の緑!』」
鬼の力を解いた耕一を見てようやく動けるようになった瑞希は、幽波紋で攻撃
を試みる。

「やかましいっ!俺は今、美優里ちゃんと会話してるのだよ。邪魔しないで貰
おうか!!」
どげしっ!!
耕一は裏拳で幽波紋ごと瑞希をぶん殴った。すると瑞希は断末魔の声を挙げる
ヒマもなく、一撃でダウンしてしまった。
CMピーチはあさひが声を当てているからともかく、それの元ネタにあたる漫
画にまったくはまっていないこともあって、耕一は全力でぶん殴ったからだ。
もし瑞希の格好が、病弱な9歳児的とかだった場合は躊躇しただろうが、後の
祭りである。

「…ったく。それで美優里ちゃん。お願いってなんだい?」
『あのね、お願いっていうのはね、そのお兄ちゃん達をいじめないでってお願
いなの。ダメ…かな』
「ダメじゃない、ダメじゃない。美優里ちゃんのお願いなら守るよ!」
『うわぁ嬉しい!やっぱり、浩一お兄ちゃんは優しいんだね』
一方、本物の病弱な9歳児的な喋り方で話すあさひに『お願い』された耕一は
脊髄反射で武装解除しようとする。そこへ、

「うらぁ、耕一ぃ!」
いきなり耕一にめくりジャンプキックから突き上げアッパーキャンセル強昇竜
拳、さらにキャンセル真空波動拳をかます初音。とはいえ、鬼の耕一相手だと
この程度のコンボではダメージは微々たる物だ。

「え?初音ちゃん?」
「『え?初音ちゃん?』ちゃなんね、あぁ?」
眉間にしわを寄せ、首を斜め45度に傾けつつ耕一にガンを飛ばす初音。
喋り方から分かるとおり、初音はいつもの初音ではない。性格が反転している
状態の、初音だ。
性格が反転してるからだろうか。喋り方に彼女の地元である隆山の方言が混じ
っているようだ。

「あのくさ耕一。そいつの言ってる言葉ば、よぅ聞きぃ」
「え、声?」
『浩一お兄ちゃぁん…』
「…?」
あさひの声をよく聞いたが、耕一には何のことだか分からない。

「分からんとや、耕一?やけんな、ヤツが言うとる『こういち』ってのは耕一、
きさんのことやなかって事たい」
「あ!」
「あ…」
『あ』
耕一、和樹、そしてスピーカーの向こうにいるあさひが同時に気づいた。
さっきも書いたが、あさひが使っている台本を書いたのは大志だ。恐らく彼は
あるパソコンゲームでヒロイン役のあさひが主人公の『浩一』と呼んでいたた
めに、そっちの『こういち』と、こっちの『こういち』を混同したのだろう。
もっともそのゲームであさひは、主人公の事を『こういち』呼び捨てにしてた
のであって、決して『こういちおにいちゃん』と呼んでいた訳ではなかった、
と付け加えておこう。

「…そうかそうか…。てめえら、俺がミユリストと知って、罠にはめようって
魂胆だったんだな…。許せん!」
耕一は手をポキポキと鳴らしながら一気に鬼の力を出す。相当怒っているよう
で、さっき和樹をボコったときよりさらに一回りほど大きくなった!
それを見た和樹は、今度こそ死を覚悟したようだ。合掌。

「い、いや、その…。くそっ大志。台本の字、間違ってるじゃないか…。ん?
台本?そうだ、あさひちゃん!」
『は、は、は、はい…』
「あさひちゃん、よく聞いて!台本の7ページ目の最初からだ!!」
『え?あ、うん…。7ページ、7ペー…』
和樹が機転を効かせてあさひを誘導する。が、

「うらぁ!」
ばきぃっ!
耕一は、あさひが次の台詞を喋る前に和樹の腕輪ごと和樹をぶん殴る。怒りに
まかせて殴った鬼の一撃だ。和樹は今度こそでダウンしてしまった。合掌。
よくみると耕一の背後には初音がおぶさって、彼の耳をふさいでいる。あさひ
の声がしても耕一の耳に入らないように、と初音が機転を効かせたのだ。

「フゥゥゥゥ…。初音ちゃん、もう大丈夫だよ」
耕一は和樹を倒したことを確認すると、背中におぶさっている初音に話しかけ
る。

「本当?お兄ちゃん」
初音も普段の初音に戻っていた。

「ああ本当さ。…御免な、初音ちゃん」
「いいよ、もう。それにその…。お兄ちゃんのこと…、信じてたもん…」
とは言うものの、かなり寂しそうな顔をする初音。

「うぉぉぉぉ、御免、御免よ、初音ちゃぁぁぁん…!」
「お…お兄ちゃん、もういいって…」
耕一は手を合わせて思い切り謝る。

「あ、そうだ!スフィーちゃん達どうなったの?」
「え?ああ…。えっ…と…。ええっ!」
二人はスフィー達に視線を移すが、その光景を見て驚いた。
なぜならリアンがあかりの波動拳でやられてしまったところだったからだ。み
どりはすでにダウンしていた上、かろうじて残っているスフィーも疲労困憊に
見える。

「嘘…。あかりちゃんが二人も倒しちゃったの…」
「らしいな…」
二人は呟いた。



<つづく>
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どうも『美優里の部屋へようこそ』のUMAです。

今に始まったことじゃないですが『耕一が堕ちてる美優里って誰ですか』とい
う質問をよくされます。

この美優里ちゃんというのは、PC版こみパであさひ役やってる声優さんが某
麻雀ゲームで声を当ててる9歳の女の子のことで、儂の『ゲーマー、耕一の
ある日常シリーズ』でそのゲームを買うというネタを書いた辺りから、耕一が
美優里ちゃんに堕ちていったようです。

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^_^)/~