うらない 投稿者:UMA 投稿日:11月6日(月)00時00分
「よう、先輩。こんなとこで何やってんだ?」

私、来栖川芹香が1年の教室を伺っていると、背後から男性に声をかけられま
した。



「え、俺を探してたって?光栄だなぁ」

声をかけたのは藤田浩之さんでした。私の一つ後輩です。
私は先日の本のお礼にと彼を占って差し上げようと思い、彼の教室まで来たの
です。でも、教室には彼の姿はなく、すでに帰られたようでした。
そして私があきらめて帰ろうと思った、ちょうどそのときです。その藤田さん
に声をかけられたのは。

私は言いました。『貴方を占わせて下さい』と。
普通の婦女子にとっては何気ない事かも知れませんが、異性に声をかけること
の少ない私にとっては、とても勇気のいることなのです。

「先輩に占ってもらえるの?じゃあ…、ここの教室で一丁頼むぜ」

良かった。
彼は喜んで承諾していただきました。もし、ここで承諾頂けない場合は魔王の
呪いでもおかけしようか、と召喚グッズ一式を用意したのですが、そんな心配
は必要なかったようです。

「で、何で占ってくれるんだ?易者みたく筮竹とか使うの?」

ふるふる。
私は首を振って否定します。私が使うのはタロットカード。つまり、カード占
いだからです。
そのことを彼に話しながら机の上にカードを並べていきます。

・
・
・

分かりました。この2枚のカードが彼の未来を暗示するカードです。

「…何か分かったのか」

私の手が止まったため、彼が声をかけてきました。

はい、分かりました。

「で、どうなんだ?」

まず1枚目のカード、スタープラチナは…

「スタープラチナ?それって、元国民機って呼ばれてたパソコンで出てた花札
風のゲームのことか?ゲイツ窓に移植されたんだっけ。なぁんだ、先輩もやっ
たことあるのか。俺も持ってるんだぜ」

…違います。
っていうか、そのようなゲーム、私は知りません。

「そうなの?残念だなぁ」

…。
話しを戻します。スタープラチナは正位置なので、正しい行いをしていれば正
当に裁いてくれます。心にやましいことがあったり、不正な行いをしていれば
かなり強力な制裁を加えられるでしょう。

「ほ、ほぉぉぉ。おっかないんだなぁ。ま、俺はそんな心配ないと思うけど。
で、もう一枚は?それも俺に関係してるんだろ?」

はい。こっちの…

「『なるほど…」

…ザ・ワールド…

「…春の祭典すぺっしゃる』」

…って、変な茶々入れないで頂けます?

「はっはっはっ。ごめん。それにしても懐かしいなぁ。たしかアレってニャン
コ先生の声優さんが司会をしてたクイズ番組だよな」

たしかにそうですけど…。
彼は私の後輩です。つまり私より(一つだけど)若いのです。その彼が、いなか
っぺ大将をご存じとは、ちょっと驚きです。
リアルタイムで見てたとは思えないので、再々放送くらいで見たのでしょう。

「で、そのカードがどうかしたのか?アフリカあたりで恋人探しクイズのロケ
でもやらされんの?」

ふるふる。

さすがにそのようなことはありません。このザ・ワールドは世界を統べる力を
暗示してるのですが、それが逆位置なのでおそらく、個人を統べようと
してる方向へ働いてると思います。
それも正位置のスタープラチナが力を増幅してるので、かなり強烈に、です。
藤田さんをそんなにお慕いしてる人がおられるなんて、ちょっと…ううん、と
ても嫉妬してしまいます。

「え?後半、よく聞こえなかったんだけど」

い、いえ、別に何でもありません。
ただ、この2枚のカードから、近いうちに貴方の身に災いが訪れるのは間違い
ないと思います。

「ふーん。よくわからないけど、それって命に関わるレベル?」

こくり。
私はうなずく。

「ははっ、そ、そう?」

彼は苦笑いされてます。
カードの運命は私には変えられません。でも、緩和することはできますよ。

「本当か、先輩!」

私の独り言をあざとく聞きつけた彼は、そういって私の手を取る。

は、はい。
この『幸せを呼ぶ青水晶』を身につけておけば、大丈夫です。見た目はちょっ
と胡散臭そうな感じがしますが、私の祈りを込めた立派なお守りですよ。

私は開いた方の手でポケットから青い水晶を取り出し、彼に手渡しました。

「先輩、サンキュー!恩に着るぜ」

そういいながら嬉しそうに私の手を握る。ちょっと痛いですが、彼が喜んで下
さるのでしたら我慢します。

・
・
・

それでは、私はこれで失礼します。
私はカードをしまうと彼にそう告げた。

「サンキューな、先輩。また何かあったら占ってくれ」

そういって彼は笑顔で私を見送っている。

ぺこり。私は軽く会釈をして彼の教室から出た。
そのとき、私と入れ違いに教室へ入っていく一人の女生徒がいました。
そして、暫くすると私が去った教室の方から男女の声が聞こえます。なぜか気
になった私はドアの影からそっと教室を覗きました。
覗きなんてはしたないですが、気になったのですから仕方ありません。私はそ
う、自分に言い聞かせました。

「…浩之ちゃん、それどうしたの?」
彼女は私が藤田さんに差し上げたお守りのことを聞いているようです。

「ん、このお守りか?これは来栖川先輩にもらったんだ」
「来栖川先輩?」
「ああ、ついさっきまでここにいたんだ。お前もドアん所ですれ違っただろ」
「うん。でも、なんで2年生が1年の教室にいたの?」
「このあいだ先輩とぶつかったとき、本を落としただろ?それを届けてやった
ら、それのお礼に俺を占ってくれるって言ってわざわざ来てくれたんだ」
「ふーん。そうなんだ」
「で、占ってもらったら、俺に災いが来るらしいんだ。それで、そのお守りを
くれたって訳さ。先輩ってカード占いできるんだな。俺、初めて知ったぜ」
「ふーん。ねえ、占いで出たカードって、なんてカードだったの?私、ちょっ
とくらいなら知ってるよ」
「そうなのか?えっと、確か2枚あって…。たしか1枚が、スタープラチナっ
てカードだ。俺が持ってる18禁ゲームと同じ名前だから覚えてるんだ」

そう、一枚目はスタープラチナ。
もう一枚はザ・ワールドですよ。

「え…、18…禁…?浩之ちゃん、今いくつだっけ?」
「16だけど?…あぁっ!!」
「そうだよね?じゃあ、なんで18禁ゲームを持ってるの?」
「ぎくっ!!ななな、何でだろうなぁ。あはは…、じゃ、じゃあ、おおお俺、先
帰るから。あああ、あかりは志保とでも帰ってくれ。じゃっ!!」
藤田さんは鞄を掴むと急いでその場を去ろうとしています。

「待って、浩之ちゃん!」
「え?」

彼女が藤田さんを呼び止めます。
藤田さんが驚いて振り返った瞬間、あたりは一瞬にしてモノクロな世界に変わ
りました。どうやら『星の白銀』の真の力、『時よ止まれッ!!』を発動させた
ようです。
発動したのは先ほどから藤田さんと親しそうに喋っていた彼女。どうやら彼女
が先ほどの占いに出てきた『藤田さんをお慕いしてる人』だったみたいです。

え?なぜ私が静止した世界で動けるか、ですって?
実は今私は、廊下に広げた簡易式魔法陣の中にいるからです。魔法陣から出ら
れないからあまり意味は無いですけどね。
さて、彼女は静止した世界でどうされるのかしら?と見ていると、真空波動拳
から真昇竜拳へスーパーキャンセルしたり、さらに時が動き出す直前に瞬獄殺
を決めたりと、藤田さんをボコボコにしました。
スーパーコンボが使いたい放題というのは見た目にも派手で面白い…もとい、
悲惨です。

・
・
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そして再び世界が動き出した瞬間、静止していた間に蓄積していたダメージが
一気に藤田さんの身体に与えられて画面端…もとい、黒板まで吹き飛ばされて
いきました。
どうやら私が藤田さんに差し上げたお守りは、彼を守る為ではなく、彼女のパ
ワーを増幅する作用をもたらしたようでした。だって、彼女はパンチ一発分の
一瞬ではなく、2秒も時を止めていたのですもの。
可哀想な藤田さん。今度、また占って差し上げますからね。そしたら、またお
守りを差し上げますよ。
大丈夫、今度は貴方をお守りするお守りですから。多分。



<おわり>
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どうも『18歳未満のうちは18禁ゲームに手を出してはいけませんよ。マジ
で』のUMAです。

今回のネタは、To HeartのPS・PC版どちらにもある、来栖川先輩
のイベントです。

なお、儂はタロットカードや占いのことはよく知らないので2枚のカードの意
味は適当です。
…っていうか、JOJOの第3部をそこまで覚えていないだけ(汗)

ちなみに、このSSを書いたのは2年以上前(笑)
仕事が忙しくって休筆中だったりとか、いろいろとあってアップする機会を逃
していましたが、今回ドリームキャストダイレクト専売の
『ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産 for Matching Service』を買ったの
で、それに合わせてアップしてみました。

#ちなみにこの『for Matching Service』版はインターネット対戦ができるっ
#ていうシロモノ
#ついでにVGAに正式対応してます


ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^^)/