おにいちゃんって呼んでいいですか 投稿者:UMA 投稿日:6月20日(火)00時12分
「ただいま。けんたろお兄ちゃん」
家に帰ってくると、スフィーはそういった。

「おかえりスフィー…って、ええっ!?」

どんがらがっしゃーん!!
健太郎は派手にコケる。巻き添えを食って近くの棚にあった皿が数枚、落ちて
割れる。

「す…スフィー…さん?今、なんと?」
カウンターによじ登るようにしてなんとか立ち上がる健太郎。

「うんと…『ただいま、けんたろお兄ちゃん』…かな?」
ちょっと考える仕草をして答えるスフィー。

「おお兄ちゃんって…。スフィー、お前俺より年上だよな?」
「うん、そうだよ」
そう答えるスフィーは現在22歳。だが、魔法の使いすぎか健太郎の趣味かは
分からないが、見た目は健太郎を生き返らせたとき同様、ちっちゃい女の子の
姿だ。

「だったらなんで俺がお兄ちゃんなんだ?」
「うんとね、お友達の初音ちゃんに教わったの。こっちの世界ではお兄ちゃん
って呼んであげると喜ぶよって」
「ほほう、初音ちゃんからねぇ…。初音ちゃんっていうと…。ああ、柏木さん
の妹さんだっけか。でも、妹が兄のことを『お兄ちゃん』って呼ぶのは普通じ
ゃないのか?」
「あら。初音ちゃんと耕一さんは兄妹じゃないわよ。あの二人はつき合ってる
のよ。恋人同士なのよ」
「なにーっ!?初音ちゃんって小学生だろ?犯罪じゃないのか、それ」
「ううん。それも違うわ。彼女、15歳よ」
「なんとぉぉぉ!?」
初音を思い浮かべる健太郎。
黄色いカバーのついたランドセルを背負った小学生風の姿が脳裏に浮かぶ。
もしくは、水色のスモックを着て黄色いポーチを下げた幼稚園児風の姿が。

「…初音ちゃんって…どう見ても小学生以下の歳だろ…」
「けんたろお兄ちゃんもそう見える?でも、実は違うんだって」
「ってことは、スフィーみたく魔法の使いすぎでちっちゃくなったとか?」
「ううん。うちゅーじんの血が混じってるけど、こっちの世界の人だから魔法
は使えないって」
「じゃあ、どうして」
「うんと…家系、かな?で、耕一さんと初音ちゃんってつき合ってるんだけど
耕一さんのことはお兄ちゃんって呼んでるんだって」
「ほ、ほほぉぉぉ…」
笑顔がかなり引きつってる健太郎。

「それで、けんたろもお兄ちゃんって呼んだら喜んでくれるかなーって思った
んだけど…だめ、かな?」
上目遣いに健太郎を見つめるスフィー。
一人っ子である健太郎は、他人からお兄ちゃんと呼ばれる事は彼の人生におい
て一度として無い。
それが、スフィーと一緒に暮らしているうちに目覚めた『ロリの波動』のせい
でお兄ちゃんと呼ばれるのは悪い気はしない。むしろ彼のツボにはまったよう
だ。

「それはもう、俺的には思い切りOKさっ!スフィぃぃぃ!!」
「きゃっ、けんたろっ!」
嬉しそうにスフィーを抱きしめる健太郎。

「…健太郎。ちっちゃいスフィーちゃん押し倒してなーにやってんの…」
「ゆ、結花?いつの間に…!?」
いつの間にか結花が店内にいた。
結花には健太郎がスフィーを押し倒したように見えたようでじとーっとした目
で見つめられる。軽蔑のまなざし、というヤツだ。

「もう、結花。けんたろお兄ちゃんとあたしの仲を邪魔しないでよー」
頬をぷーっと膨らませて抗議するスフィー。だが、

「お、お兄ちゃん?…健太郎っ!あんた、そこまで落ちたんか〜〜〜〜〜!!」
逆に結花の怒りに油を注いだだけだった。

「まて、結花。これはぁぁぁ…!!」
「問答無用、喰らえっ!!」
結花の音速のしゃがみ強キックが健太郎の足元を払う。さらに、健太郎が転ぶ
前に健太郎の腹部に立ち中キックを叩き込み、続いて立ち強キックが側頭部を
とらえる。そしてフィニッシュは炎を纏った跳び蹴りで、健太郎を壁にめり込
むほどに叩きつけた。隻眼のムエタイ使いの超必殺技、タイガーレイドという
技である。

ずどごぉぉぉん!!

「ふう。健太郎。これに懲りたらちっちゃい子に手を出したら…って、え?」
「結ぅ花ぁぁぁぁ。電刃んんん…、波動拳っ!!」
スフィーが魔法を唱える。
必殺技後の硬直中なので結花は避けられず直撃、店外まで吹き飛ばした。5段
階まで溜めたまじかるさんだーだったようで、結花はピヨっている。
ちなみに、この技はお子魔女25話『だい3のスーパーアーツ?』の話で登場
した新しい魔法で、まじかるさんだー系の上級魔法だ。

「はあっ、はあっ、はあっ…。大丈夫?けんたろお兄ちゃん?」
壁の中から健太郎を引きずり出すスフィー。大量に魔力を消費したのか、つい
さっきよりさらに体が縮んだようだ。

「あ、ああ…。なんとか無事だ…。でも、結花に会うたびに殺されるから、や
っぱ『お兄ちゃん』はなしだ、スフィー」
「ええーっ、でも、お兄ちゃぁん…」
「…惜しいけど、体が保たない」
「うん…。分かったわ、けんたろ」
しゅんとなるスフィー。

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・
・

こうして、健太郎はスフィーからお兄ちゃんと呼ばれる波動めいたことは無く
なったという。

<おしまい>
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どうも『ちっちゃいスフィーはいかがですか』のUMAです。

今回のネタはちっちゃいスフィーと、初音ちゃんがお友達なら…っていう、お
話です。

主人公はボコられてナンボですね、儂のSS(汗)

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^^)/