「すいません、健太郎さん。この茶碗いただけますか」
「はい、みどりさん。ちょっと貸してもらえますか」

健太郎はみどりさんから茶碗を受け取り値踏みする。
その茶碗はかなりの年代物のようだが、銘が有るわけでもなく価値としては並
程度だ。22,000〜23,000円というのが妥当な値段だろうが、みどりが買い手と
いうことで健太郎は値引きする。

「えっと、この茶碗なら税別19,800円ですね。消費税を入れると…」
と、そこまで健太郎が言いかけたところで、

「ちゅぅぅぅぅとはんぱやなぁぁぁぁ!!」
いきなりみどりさんは叫ぶ。普段のみどりさんからは想像もつかない大声だ。

「みどりはっ！中途半端がっ…!!」
一旦そこで言葉を区切ると、みどりは財布から１万円札を取り出し、

「大っ嫌いじゃぁぁぁ!!」
大声で叫びながら１万円札をカウンターに勢い良く出す。

ばしぃぃぃぃん!!

「おおっ…お？」
あまりの迫力に思わず気圧される健太郎。だが、カウンターに出されたお金を
みて驚く。

「…って、１枚だけ？10,000円？あの、みどり…さん？消費税込みで20,790円
になるんですけど、分かります…？」
「みどりはっ…！中途半端がっ…!!!」
みどりさんは健太郎の声を無視している。

「あの…、みどり…さん？せ、せめて20,000円はいただかないと…。消費税分
はともかくですね…」
「大っ嫌いじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
健太郎の言葉を完全に無視した上に再びシャウトするみどり。店内の骨董品が
びりびりと震える。ちなみにスフィーは、いつもと違うみどりさんに怯えたの
か、大きな壺の影で小さくなって震えてる。

ふと、あることに気が付いた健太郎はみどりに聞く。
「…もしかして、みどりさん。お金、無いの？」
「…はい。ちょっと今日は手持ちが…」
やや置いて小さく頷くみどり。健太郎の考えは大当たりだ。

「あの…、健太郎さん…？」
「なんですか」
「…まけて(はぁと)」
「ダメ。却下」
にっこりと微笑んで懇願するみどりだったが、健太郎は速攻で却下した。

・
・
・

「ごめん！」
そういって一人の客が来た。みどりの父、高倉宗純だ。高倉は店内を一通り見
た後、一枚の絵皿を手に取る。そして、

「店主、これをいただこう」
「ありがとうございます。えっと…」
健太郎は皿を手にとって値踏みする。
その皿は取り立てて特徴も無ければ、柄もありきたりだ。健太郎の鑑識眼では
せいぜい10,000円ちょいといったところだろうか。
ちょっと値引きしようと思った健太郎だが、さっきのみどりさんの件もあるの
でキリのいい値段にすることにした。

「この皿なら税込み10,000円で…」
「高いっ！高いぞ店主っ!!!」
言いかけた健太郎の言葉を遮るように、くわっと目をかっ開いて高倉は大声で
叫ぶ。
あまりの大声に陳列棚ごと骨董品が皿、壺問わず砕け散る。おまけにガラスの
ショーケースまで粉々だ。そのためか、スフィーは壺の影で失神している。

「店主よ。わざわざキリのいい値段にしたのだろうが、この程度の皿なら、そ
この和光さんの店なら中途半端だがさらに安く、税抜きで8,980円だったぞ！
精進が足りぬわっ!!」
税抜き8,980円。消費税を入れると9,429円。たしかに10,000円よりは安いが高
倉さんがここまで騒ぐほどか、と思い健太郎は考えた。

「はぁ、確かに和光さんの方が安いですね…って、もしかして高倉さん。値引
こうとしてます？」
「…うむ、そうだ。まけろ」
表情を変えず威圧的に頷く高倉。だが健太郎は

「却下。っていうか、その前に今破壊したすべてを弁償しろ」



＜おしまい＞
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どうも『値切るには限度があります』のＵＭＡです。

今回のネタは前半はミドリデンキという電器屋のＴＶＣＭが元ネタです。

＃男が税別19,800円で買ってきた家電品を見せると、漫才師の相方が『中途半
＃端やなー！ミドリは中途半端が大嫌いじゃー!!』と叫んでミドリ電器なら税
＃込みで20,000円だ、と反論するというＣＭ

で、後半が和光デンキってとこのＣＭです。
丁度ミドリデンキのＣＭが流れた後くらいからやってるせいかミドリデンキに
対抗した内容のＣＭです。

＃選挙演説風に男が「税込み10,000円」を力説していた所へ別の候補者がやっ
＃てきて『和光なら税抜き8,980円。中途半端でまだ安い!!』と切り返すという
＃ＣＭ

…って、両方とも関西ローカルやね、多分(汗)

まあそれはともかく。
普段とかなり違う雰囲気のみどりさんを書けたんで、ヨシとしましょう。
うん(^^;

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^^)/