休日  投稿者:UMA


1st PLANT:SHIZUKU

「あ、祐君、祐君。これ見て」
「何?沙織ちゃん」

沙織ちゃんは雑誌のあるページを指さしたまま止まっている。僕は何だろう、
と思い沙織ちゃんが指さす先にあるページを見た。

「えっと、『DCでインターネットゲーム配信サービスが云々…』。これがど
うしたの?」
「よく読んで。メガドラとPCエンジンのゲームがDCで遊べるのよ」
「へー…って、マジ?」

僕は驚いた。
メガドラやPCエンジンといった『旧世代マシン』のゲームが、DCで遊べる
とは思えなかったからだ。しかも、PCエンジンはセガとは別メーカーのゲー
ムマシンだ。そのゲームがDCで遊べるというのも非常に驚いた点だ。

「うん。タイトルは未定だけど、300タイトルくらい予定してるって。祐君
は何が入ってて欲しい?」
「僕?僕は、うーん…そうだな、『魔法の少女シルキーリップ』なんかどうか
な?」
「…祐君、それ、本気?」

う…。
なんか沙織ちゃんの目が怖い…。

「い、いや、冗談だよ。僕、やったことないし。沙織ちゃんは?」
「あたしはもちろん!」
「もちろん?」
「もちろん、『ソードオブソダン』や『おそ松くん はちゃめちゃ劇場』よ。
メガドライバーなら当然よね!!」
「ほほう」

沙織ちゃんが挙げた二つのゲームはメガドライブ系ゲーム雑誌のランキングで
常に最下位争いを繰り広げていたゲームで、一部の好事家を中心に有名なクソ
ゲーである。ちなみに、ソダンは『帝王』の名で呼ばれていた。
たとえて言うなら、『サターンにおける、デス様や大冒険野郎などと同じ、負
のオーラをまき散らしてるゲーム』といえる。
そんなゲームを『当然』のように挙げる沙織ちゃんの濃さに改めて僕は驚かさ
れた。



2nd PLANT:KIZUATO

「あれ、お兄ちゃん。新しいゲーム雑誌が出てるよ」

俺達は今、街の本屋にいる。ゲーム屋に言った帰りに寄ったのだ。手に持って
る紙袋にはドルカス用ツインスティックが2本にオラタン2枚と、キティちゃ
ん仕様のスケルトンなドルカスが一つ入ってる。本当は対戦ケーブルも欲しか
ったのだが、すでに売り切れていたのだ。
で、何か裏技か何か載ってないかと思って帰る途中にここに寄ったって訳だ。

「本当だ。アーケード専門誌?ああ、ゲーメストが復刊したのか…って、タイ
トルが違うぞ?」

初音ちゃんが手にした雑誌の表紙を見る。そこには最近でた格闘ゲームの主人
公クラスの男が二人と、『ARCADIA』の文字があった。

「『アルカディア』…どっかで聞いたことあるタイトルだね」
「そうだね。たしか、バンダイが販売してたテレビゲーム機だな。1980年
頃の」
「うわぁ凄いなぁ。ハーロックより先にそっちの方を思い出すなんて、さすが
お兄ちゃんだね」
「ふっ…照れるじゃねぇか」
「誉めてない、誉めてない…。それにしても、『Oh!X』が復刊したり最近
は復刊がブームなのかな」
「どうだろうね。でも、この分なら『少年キャプテン』や『MSXファン』、
『テクノポラリス』も復刊するかもしれないな」
「さ、さすがにそれらは無理なんじゃないかなぁ。それと、3番目の雑誌の名
前は『テクノポラリス』じゃなくって『テクノポリス』だよ、お兄ちゃん」
「あれ、そうだっけ?」
「そうだよ。『テクノポラリス』は昔のパソコンのアドベンチャーゲームに出
てきた架空の会社の名前だよ」
「うーん、言われてみればそんな気もしてきた…」
「でも、初音もよく覚えてないんだけどね」

まだ8ビットマシン全盛期の頃の話しだ。初音ちゃんがよく覚えてなくて当然
かも知れない。そう思いながら俺達は本屋を後にした。



3rd PLANT:TO HEART(ROUND1)

「結構細かく色分け出きるんだな…」

俺は今、オラタンのバーチャロイドのカスタマイズをやっている。バーチャロ
イドは当然俺のメインマシンであるテムジンだ。
ふと頭部の緑色を何気なく強くしたとき、俺は有ることを思いついた。

「そうだ、このテムジンはマルチ専用にしよう」

と。

そうなると、配色が問題だ。
当然の事ながらバーチャロイドはメイドロボとは全然違う。だからという訳じ
ゃないが配色パターンは全然違うのだ。
まあ、ある程度は妥協はしかたないか…。

と、そのとき。

どっかぁぁぁん!!

「な、何んだぁぁぁ?!」

いきなり部屋のドアを吹っ飛ばして何者かが入ってきた。

「ひろゆきさぁぁぁん、とまりませぇぇぇん!!」
「ま、マルチ!?」

いきなり入ってきたマルチは、手にしたモップをぶんぶん振り回している。
それは、フェイズ3のブリッツセイバーを振り回してるテムジンのように見え
る。
ちなみにコマンドは旋回中にCWだ…って、俺は何冷静に解説してるんだ!?

「ぎゃぁぁぁ」

俺は『ソード突き出し回転』の直撃を受けてダウンしてしまった。



3rd PLANT:TO HEART(ROUND2)

「あー、ひどい目にあった」
「すみませぇぇぇん!!」

言いながら泣き出すマルチ。
おおかた、研究所からもらってきた『新しい掃除道具』ってのを試しただけだ
ろう。ったく、あのおっさんは何考えてるだ。
まさか、俺の行動を読んで…?いや、まさかな…。

「いいって。マルチのせいじゃないさ」
「でも、浩之さんにご迷惑を…ぐすっ」
「大丈夫だって。さ、俺はこの部屋を片づけるから、マルチは下の掃除の続き
を頼むよ」
「は、はい」

・
・
・

「ふう」

俺はある程度部屋を片づけると一息ついた。

「マルチ専用テムジンなんて考えたのがまずかったのだろーか。いや、偶然に
違いない。よし、気を取り直して、次はあかり専用だ。あいつ、ゲームはあま
りしないけど、専用マシンを用意すれば喜ぶだろうな」

そう思い、俺は再びドリキャスを立ち上げ、カスタマイズを始める。

「あかり専用は、そうだなぁ…。うん?これなんかいいぞ、うん。アファーム
ドBに決定だ!!」
「…なんで?」
「あん?そりゃ、RNAを基調にすればボディの色があいつの髪の色と同じ赤
系統になるだろ」
「それだけ?」
「近接戦闘の強さは全VR中一番なのもあかりらしくっていいぞ」
「それだけ?」
「あと、近接で昇竜拳出せるのもあかりっぽくて…って、誰?」

俺は今、誰と話してたんだ?そう思い、背筋に凄まじく冷たい物が走るのを感
じながら振り向いた。

「私」
「あかり?」

そこには案の定あかりがいた。

「ああああ、あかりさん、何でここに?…っていうか、その手に持ってるソレ
は何ですかぁぁぁ?」
「うん、浩之ちゃん何してるのかなーって思って来たんだけど。これはこない
だから綾香さんから護身術習ってたから、その道具よ」

そういって両手のトンファーを構える。そして、ちらっとモニターに目をやる
と俺ににっこりと微笑み…。



3rd PLANT:TO HEART(ROUND2)

「あー、死ぬかと思った」

俺は、あかりの近距離右ターボCWをたたき込まれてダウンしてたようだ。

「マルチ専用テムジンやあかり専用アファBだからまずかったのかも。よし、
こうなったら絶対にネタかぶりしないマシンを選んでやる!!」

そう心に決めて選んだバーチャロイドはエンジェランだ。

「ふっふっふっ。これなら大丈夫だろう。しかも、雅史専用だぜ!?どうだ、こ
れでぜぇぇったい大丈夫だ!!」

俺は勝ち誇ったように笑った。

・
・
・

だが浩之は知らない。
雅史に女装癖があり、今まさにその雅史が藤田家に近づいていることを。

「浩之、今いくよ!」

<おしまい>
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どうも『約2ヶ月ぶり』のUMAです。

今回のネタはDreamcast用オラタン等です。テクポリやMSXファン、知って
る人ってどれくらいいるのカシラ(^^;;

#アルカディアを実際に触ったことあるのって、さらに少ないカモ


ぢゃ、そういうことで。でわでわ〜(^_^)/~