「ん…、もう朝か…」 耕一は、台風の暴風の音で目を覚ます。 「明るいなぁ…。何時だ?」 俺は布団から手を出し、手探りで枕元の時計を手に取る。 「7時…30分すぎ…か」 目は覚ましたものの、今日は敬老の日で休み。耕一はもう一度寝ようと、布団 に潜り込む。 が、その前に台風が今、どの辺に居るか知りたくなった耕一は、今度はTVの リモコンに手を伸ばす。こっちも枕元においてあるのだ。 TVの電源を入れ、国営総合放送にチャンネルを合わせる。せっかく受信料払 ってるんだし、こういうときくらい見ないと損である。 「予想進路は…っと。…げぇっ、モロ直撃コースじゃねぇか」 無情にも、このへんは台風の予想進路のド真ん中のようだ。まだ距離が離れて いれば予想進路がズレる可能性もあるがあとほんの数時間で通過する距離まで 近づいてるのでそれも無理だろう。 「ん…うみゅう…。あれ?お兄ちゃん、今日はお昼まで寝てるんじゃ…」 「初音ちゃん、起こしちゃった?ごめん、ごめん。ちょっと台風が気になった から。すぐ消すよ」 「うん…」 まだ夢見心地の初音に声をかけ、耕一ももう一度寝ようとした。 そのとき、リモコンの電源スイッチを押すとき誤ってチャンネルボタンに指が 触れたようだ。 『ああっ、みらいちゃん!!』 「ぬぅあにぃぃぃ?!ママ4やっちょるやんかぁぁぁ!!」 TVには何かアニメをやってる。誤って押したチャンネルでやってたようだ。 そして、一瞬聞こえた声を聞いた瞬間、耕一は叫んでいたのだ。 ここで耕一は、声を聞いてこ○ろぎさとみと看破したのはいつものことだが、 そこでキャラ名、さらには番組名まで一瞬で芋蔓式に思い出したため、こう叫 んだのだろう。 「どどど、どうしたの?お兄ちゃん?」 初音がびっくりして跳ね起きる。寝室で、すぐ横で大きな声を出せば初音でな くても驚くだろうが。 「ままま、ママ4が…。なつみちゃんが…」 「ママ4?…って、あ」 初音も気が付いたようだ。 「あれ?でも、この時間って『芦辺2』じゃなかったの?」 「そういや…そうだなぁ。兄弟、見てみるか」 耕一は『寝ぼけてるのか』と自問しつつ起き出す。そしてテーブルにおいてあ ったTV兄弟の14日のページを開く。 「ありゃ。芦辺、昨日で終わりって書いてるわい。で、今日からは…」 15日のTV欄には『小学4年』とかかれている。ちなみに16日のページに は『ママ小学4』となってる。 『くっ…。迂闊だったぜ…。ちゃんと兄弟を買っていながら、こんな重要な事 を見落とすとは…!!耕一、一生の不覚っ!!』 耕一はその場でがっくりと膝をつき、心底悔しがる。 「ねえお兄ちゃん。半からってことは、まだ始まって数分しか経ってないんじ ゃないの?」 血の涙を流して落胆しきった耕一を見ていた初音が声をかける。 「え?…あ!そうだね。うん、そうだよ」 事実、まだ始まって数分だ。 OPがあるから物語的にはほんの1、2分程度しか見逃してないハズだ。 「よかったね、お兄ちゃん」 「ああ」 こうして耕一はは初音のおかげで気を取り直すことができたのだった。さすが に長年連れ添っただけあって、耕一の扱いは慣れたものである。 ・ ・ ・ 「ねえ、お兄ちゃん」 「んー?」 耕一と初音は、昼ご飯を食べているところだ。あのまま二度寝してれば、朝昼 兼用になったのだろうが、さすがにあれだけ騒げば起きたため、ちゃんとした 『昼食』だ。 「もうすぐみんなが来るからね」 「みんなって?今日、何かあったっけ?」 「もう、やっぱり忘れてるぅ。今日は『敬老の日』でしょ、お兄ちゃん?」 言い忘れたが、このお話の二人は還暦をとっくに迎えた年齢だ。 娘もすでに嫁いでおり、孫もいるのだ。 「そっかぁ。今日だっけ。たしか、保育園で描いた『おじいちゃんのえ』を見 せてくれるって言ってたなぁ」 先週末、娘夫婦から電話があり、敬老の日に訪ねてくることになったのだ。そ のとき孫とそういう話しもしていたのだ。 「うん。私にも『おばあちゃんのえ』みせてくれるって言ってたよ」 初音も嬉しそうに話す。孫と久しぶりに会えるのだ、当然だろう。 さすがにこの歳になると彼女も小学生に間違われるということはめっきり減っ たが、それでも常時10〜20は若く見られるようだが。 ぴんぽぉぉぉん。 「あ、もう来ちゃったみたい。お昼をすぎるって言ってたのに…」 初音はちょっと困った風に言いながらも、どこか嬉しそうな表情で玄関に向か うのだった。 <お二人とも長生きしてね・おしまい> ---------------------------------------------------------------------- どうも『ついに耕一&初音を老人にしちゃいました』のUMAです。 『おにいちゃん』で二人が結ばれ、 『あかちゃん』で娘を授かり、 『由綺の一日園長体験談』で娘が幼稚園の頃を描き、 『わくわくどうぶつえん』で娘が小学生の頃を描き、 そして、今回。 何気なく柏木家の成長記録(か?)を続けてきたら、二人が老人になっちゃいま した(汗) もっとも、これらのSSがシリーズ物って訳じゃなく、SSを整理してて気が 付いただけなんすけど(笑) #自分のHP用に整理するために読み直してる真っ最中>SS #完成は…いつ? ぢゃ、そういうことで。でわでわ〜(^_^)/~