「おめでとーございまーす！！」
『え?!』

耕一達は同時に驚いた。
動物園のゲートをくぐると、いきなりくす玉が割れた上に動物の着ぐるみにい
きなり囲まれたのだ。
これで驚かないハズがない。

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話は少し遡る。
お盆に耕一達が帰省先の隆山から帰ってきたときのことだ。

「ねえ、お父さん。今度動物園行こうよ」

と、耕一が娘に誘われたのは。

「えーっ。お父さんは疲れてるんだ。勘弁してくれよ」

言いながら耕一はそのままごろんと寝転がる。
お盆に隆山まで帰省して、今ようやく帰ってきたところだ。娘はともかく、親
である耕一たちはかなり疲れているのだ。

「でも、お父さんも鬼なんだし、疲れくらいすぐとれるんじゃないの？」
「まあそうだけど…」

耕一の娘はすでに鬼の力に覚醒しており、両親の話しで自分が田舎の伝説に出て
くる鬼の一族の末裔だということ理解しているのだ。

「だったら行こうよ。ね、お父さん。行こうよぉ」
「うーん…」
「あのねお兄ちゃん、夏休みの自由研究なんだって。だから行こうよ。ね？」
「自由研究？ああ、夏休みの宿題の？」
「うん。動物さんの観察するの」

そう。
今は夏休みなのだが、お盆をすぎた今ではそれもあと２週間たらず。ドリルや
日記なんかは順調にこなしたが、『自由研究』は綺麗さっぱいり忘れていたよ
うだ。
で、お盆を越えたあたりで急に焦りだした…ってことらしい。

「うーん…。宿題だったら仕方ない。行くか…」

耕一はあまり気乗りのしない返事を返す。

「うわーい。お父さん大好き！」
「おっとっと…。じゃあ、今度の日曜に行こうか。いいかい？初音ちゃん」
「うん。じゃあ、お弁当用意しないとね」

と、言うわけで今日耕一達は一家揃って動物園に来た、という訳である。

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「おめでとうございます。お客様ご一家が当動物園の開園５０万人目のお客様
です」
「はあ、そうなんですか」

耕一が惚けた返事を返していると、パンダさんの着ぐるみが初音たちに風船を
手渡す。

「はい、お嬢ちゃん風船だよ。こっちも」
「うわぁ、ありがとう。へへー、貰っちゃった」
「よかったね、二人とも」
「うん！」
「あ、お客様、記念品の贈呈と写真撮影をいたしますので、ゲート前へお越し
下さい」

さっき声をかけたスーツを着た男に声をかけられる。
周りが動物の着ぐるみの中でスーツ姿でいるってことはどうやら、この人はこ
この偉い人なのだろう。

「…お嬢さん、お二人ともとてもお元気そうですね」

耕一達がゲート前に移動している途中、その男から声をかけられる。
男が指さす先には、うさぎさんの周りを風船を持って走ってる初音達がいる。
ちなみに、二人はお揃いの水色の水玉模様のワンピースを着ており、ハタから
見たら仲のいい姉妹にみえなくもない。

「え？ああ、うちの自慢の一人娘だからな」
「一人娘？ああ、もう一人のお嬢さんはお友達だったんですか」
「いや、俺の女房だ」
『え？』

いきなり、着ぐるみ連中を含めて周りにいた全員の動きが止まる。
凍り付いた、と表現した方が正しいだろう。

「…い、今…何と…??」

おそるおそる、男が口を開く。

「だから、初音ちゃんは俺の『女房』だって言ったんだ」
「ええっ!?」

耕一の言葉を聞いて、全員が改めて初音達を一斉に見る。
『この娘が小学生にしか見えないけど一児の母か…』と、珍しいものを見るよ
うな目で見てる。
するとその視線に気が付いたのか、初音が耕一の所へ戻ってくる。

「お兄ちぁゃん…、みんな初音たちを見てるみたいだけど…」

初音が怯えたように涙目で耕一を見上げる。

「おおお…『お兄ちゃん』??」

完全にパニくってる男は冷や汗を垂らしながら聞いてくる。するとそこへ、

「あ、うちのお母さんね、お父さんのことをそう呼ぶの」

と、ちょっと遅れてきた娘が説明する。

「ええっ？おおお、お母さん？じゃじゃじゃじゃあ、こっちのお姉ちゃんっぽ
い方が『娘』で、妹っぽいこちらが『女房』ですかぁ?!」

初音と娘が姉妹に間違われることは結構あるのだが、たいがいがこの男の言う
とおり初音の方が『妹』に見られるのだ。

「そうだよ。だからさっきから言ってるじゃないか。『うちには娘は一人しか
いない』って」
「ほ、ほほぉぉぉ…」

そして付近一帯にいた全員の精神は崩壊した。

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それから暫くして(全員の精神が回復するまで撮影は中止された)、５０万人突
破の記念撮影が行われた。
その模様は夕方のローカルニュースで放送されたのだが、さすがに全員の精神
を崩壊したエピソードはばっさりとカットされて、至って普通の内容に編集さ
れていたという。
また、撮影された写真は次の日の朝刊にも掲載されたのだが、こちらも『嬉し
そうな柏木さん一家』と、コメントがあるだけで普通にまとめられていたそう
な。

＜おしまい＞
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どうも『50万ヒット突破おめでとうございます』のＵＭＡです。

今回のネタは、『夏休みの自由研究』です。

この間ＴＶを見ていて、自由研究のことを特集していたんで、それと『来園Ｘ
人目記念』ってネタをブレンドした結果、動物園に行こうって話にまとめてみ
ました。

なお、このＳＳに出てきた耕一達の娘の歳は10歳としてます。
つまり、初音ちゃんの歳は若く見積もっても三十路に片足つっこんでるハズで
す。もしかしたら四十路って可能性も…。


ぢゃ、そういうことで。でわでわ〜(^_^)/~