「あれ？祐君、Ａｐｐｌｅなんて持ってたっけ？」

沙織ちゃんはボクの部屋に入るなり、そういった。
パソコンのモニターには英語版ウィザードリィが写っている。それを見て一瞬
でＡｐｐｌｅ版と看破するとは、さすが沙織ちゃんだ。



「違うよ。僕はＡｐｐｌｅは持ってないよ。これはゲイツ窓の…」
「ええっ!?じゃあ、エミュってるんの？」
「うん、AppleWinでエミュってる、本物のＡｐｐｌｅ版ウィズだよ」
「そうなの？移植版じゃなく？」
「移植版は…」

言いながら僕はソフトの山から一つの箱を取り出す。ゲイツ窓版Ｗｉｚリルガ
ミンサーガだ。

「…これだよ」
「そう、これこれ。操作性が激烈に悪いって言ってわずか数日で投げたんだよ
ね」
「ははっ。まあ、ね。せめて、旧パソコン版と同じ操作方法を隠しで入れてい
てくれればよかったんだけど」

僕はゲイツ窓版ウィズは発売日当日にウィズを買ったのだが、キャラメイク中
や迷宮の移動などの例外はあるものの、ゲイツ窓のショートカットやアプリケ
ーションキーによる操作も受け付けない、フルマウスオペレーションだったた
めわずか数日で投げ出したのだ。

「旧パソコン版な操作っていうと…、『Ｔ、リターン』でＴＩＬＴＷＡＩＴと
か？」
「それそれ。『ＭＡＨＡ』でＭＡＨＡＬＩＴＯとか…」
「懐かしいわね。そういえば祐くんってウィズで英語覚えたんだっけ？」
「そう…なるのかな？宝箱のたびに『ＰＯＩＳＯＮ　ＮＥＥＤＬＥ』って入力
してれば自然と覚えるさ。でも学校の英語の成績はさっぱりだったけど」

『ＰＯＩＳＯＮ　ＮＥＥＤＬＥ』とはＮ天堂版でいう『毒針』だ。比較的浅い
フロアで見かける宝箱に仕掛けられているトラップだ。このゲームは宝箱の罠
の名前をプレイヤーに入力させるため、イヤでも覚えないといけないのだ。

「あとは迷宮に入ったらディスクにアクセス中に先行入力でプリーストスペル
の『ＭＡＰＯＲＦＩＣ』『ＬＡＴＵＭＡＰＩＣ』を唱えてキャンプを抜けるっ
てのが僕の仲間内で流行ってたなぁ」

まだハードディスクもない頃の話だ。当然、ＲＡＭディスクなんてものもない
ので純粋にフロッピー上でプレイしていたのだ。
ウィザードリィはフロアの移動、キャンプ、戦闘、魔法の詠唱など、ほとんど
何をやってもフロッピーにアクセスするのだ。そして、地上から迷宮に潜った
時は１分程度アクセスするため、中〜上級プレイヤーはそのアクセス中に先行
的にコマンドを入力していたのだ。パソコンにはキーバッファがあるためそれ
を利用した表技(?)である。

「ゲイツ窓版、それもできなかったんだよね…」
「そうなんだよ…残念でしょうがないよ…。で、今回Ａｐｐｌｅ版のディスク
イメージが売ってたから買ってきたのさ。これなら、キーボードでプレイでき
るし、なんと言っても店で売ってるから合法なディスクイメージだしね」

エミュレーションが合法かどうかは今のところグレーゾーンの域を出ていない
が、ＡｐｐｌｅやＭＳＸのような過去のハードについては歴史的資産として認
めてくれてもいいのでは、と思ってる。だが、ソフトウェア資産は不正コピー
の問題があるので違法性が極めて高いと言えるが。
だが、このウィズのようにメーカーに認可されたイメージファイルであれば問
題無いと言えるだろう。

「そうだったんだ。じゃあ、本家本元のウィズがプレイできるんだね！」
「そうさ。英語の辞書とにらめっこしながら、これからにっくきトレボー討伐
に行くところなんだよ」
「いきなり＃４プレイするかなぁ？」

沙織ちゃんは苦笑する。
そう、僕が起動したのはＴＨＥ　ＲＥＴＵＲＮ　ＯＦ　ＷＥＲＤＮＡだ。これ
は＃１の悪の親玉ＷＥＲＤＮＡをが主人公のシナリオで、異常なまでの高難易
度と、不真面目ともとれるパロディのてんこ盛りで悪評の高いシナリオとして
有名だ。
なお、日本語環境でプレイできるのはＰＣ９８とＰＣ猿人だけだったので、僕
としては初めての＃４になる。

今は地下１０階のガーディアンどもと戦っているところである。

「ねえ、シナリオ＃４ってやっぱり難しい？」
「うん。最初の牢獄から出るだけでも一苦労さ。隠し扉の位置を知っていても
ＰＲＩＥＳＴがＭＩＬＷＡを唱えてくれないと永久に出られないからね」
「へー、最初はＰＲＩＥＳＴが必須って本当だったんだ。あ、ＨＰ４０の敵が
出てきたよ」
「一人だけだし、なんとかなるだろ。ＷＥＲＤＮＡ、ＨＡＬＩＴＯだ！」

と、僕は最弱の攻撃魔法ＨＡＬＩＴＯを敵ガーディアンに向けて唱えた。与え
たダメージは８。この魔法では最高だ。
だがこの直後、

「あ、敵がＭＡＨＡＬＩＴＯ唱えてきた…」
「げぇっ!!しかも、ＷＥＲＤＮＡめがけて…!!」

ＨＰが１０しかないＷＥＲＤＮＡは当然即死、ゲームオーバーだ。プレイ時間
わずか３０分で早くも最初の挫折である。

「うーむ、噂に違わぬ高難易度だな…」

僕はＷＥＲＤＮＡの遺体を見ながらつぶやいた。

「本当…。これってプレイヤーの運の要素が多分に必要かもしれないけど…。
ねえ、今度は別のシナリオ見せてよ」
「え？うん、いいよ。じゃあ、どのシナリオにしようっか」
「じゃあ、シナリオ＃１がいいな」
「分かったシナリオ＃１だね。じゃあブートするよ」

言いながら僕はシナリオ＃１をブートした。

＜おしまい＞
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どうも『ウィズはやっぱりいいですねぇ』のＵＭＡです。

今回のネタは『ウィザードリィコレクション(Wizardry Collection)』です。
これは、書籍扱いなので本屋で売ってます。

＃定価２８００円、出版元はローカス。ウィズの移植メーカーです

このコレクションには、オリジナルのＡｐｐｌｅ版のシナリオ＃１〜＃５まで
が収録されており、エミュレータの使用によりWindows上で稼働します。
本の中でも述べられてますが、エミュレータとＲＯＭイメージの取り扱いは合
法的に行ってください(マジ)。



ただ儂的にいつプレイするんだろ(汗)？＞Ｗｉｚ
今は『Ｋａｎｏｎ』プレイしてるし、まだ買ってないけど『鈴がうたう日』と
『ＧＲＥＥＮ』もプレイしたいし。

＃コンシューマの方にも欲しいのあるし…

まあ、Ｗｉｚはライフワーク的にのんびりとプレイしますかね。
５本もあるんだし…って５本もあるんだっけ(汗)
ますますやる時間がないぞ…(激汗)

ぢゃ、そういうこって。
でわでわ〜(^_^)/~