ゲーマー、耕一のある日常(GW編2) 投稿者: UMA
『東京〜、東京〜…』
「ふう、やっと着いたか」
俺は新幹線からホームへ降り立つと、そうつぶやいた。



今日俺は用事があって秋葉原へ向かっている。その用事とはX68000オン
リーのイベント、その名も『フェスタ・68』だ。
X68000というのは、目の付け所がシャープなメーカーが制作・販売して
いた国産のパーソナルワークステーションのことだ。
今となっては『過去の遺物』と呼んでも差し支えないようなマシンだが、ユー
ザの魂はかなり熱く、ついにこんなイベントを催すに至ったのだ。

「前にきたのは…いつだったかな…」

俺は山手線に乗り込みながらそんなことを考えていた。
前にきたのは九十九電機からX68000の販売エリアがなくなると友人から
聞いて、あわてて飛んできたのだ。

あれから数年。俺のメインマシンもX68000から、自作AT互換機に変わ
った。だが、X68000を所有する一人としてこういうイベントには参加し
たかったのだ。

「さて…、と」

秋葉原に到着した俺は、辺りを見渡す。インターネットで知り合った知人と待
ち合わせをしているのだ。
X68000でBBSにアクセスしていた頃も遠くの人と知り合ったが、さす
がに電話代が怖くてチャットなどはしてなかったな、と、ふと昔を思い出す。

『ああっ!美優里ちゃんがいじめられてるぅ!!』
「ぬぅあにぃぃぃ!!!!」

俺が物思いに耽っていると、突如そんな叫びが聞こえる。俺は鬼の力をフルパ
ワーに引き出しつつ、声のあった方向、みどりの窓口へと向かった。

「俺の美優里ちゃんんに手ぇ出すげな、どこのバカじゃぁ…って、あれ?」

だが、そこには美優里ちゃんはおろか幼女の姿はなかった。
おかしいなぁ、と思っていると背後から声をかけられる。

「すいません、柏木さんですか?」

と。

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どうやら、彼らは俺の顔がわからなかったらしく俺を見分けるために先ほどの
芝居をうったようだ。

「…にしても、本当に『美優里ちゃんが!!』て叫んだら現れるとは思いません
でしたよ」
「さすがミユリスト…。あ、コレが伝言板に書いてあった『トゲピーのキーホ
ルダー』っすか?」
「はっはっはっ」

などと会話しつつ、俺たちはフェスタ68の会場へと向かった。

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フェスタ68は68オンリーイベントということもあり、68用のハード、ソ
フトが所狭しとあった。
もっとも、会場に到着したのがもう、開場からかなりの時間が経っていたせい
か、すでに『品切れです。すいません』とか『Sold Out!』といった
張り紙があったのが残念だ。

「…ところで、この格ゲーっぽい音、なに?」

会場の一角から対戦格ゲーなBGMとともに小気味よい連続技の決まるような
打撃音が聞こえる。

「SFXVIだと思うよ。たしか、ゲーム大会やるって聞いてたから」

このSFXVIというのは、キャラデータをプラグインのように追加すること
のできる、68の対戦格闘ゲームだ。基本セットにはリュウとケンの二人分し
かデータがなかっのだが、今では総勢何百人いるのか見当もつかない。
ちなみに、今戦ってるキャラは赤ずきんチャチャと、RX−78−2という、
とんでもない組み合わせだ。
ゲイツ窓にも同人な対戦格闘ゲームはあるが、ここまで無茶なゲームはみたこ
とがない。

「ほら、これがSFXVIのTo Heartキャラ版さ」

俺が指さすとそこにはTo Heartなキャラが、某スーパーストIIのよう
なマップ画面に並んでいた。そして、当然のように『売り切れ』の張り紙が。

結局、俺は超連射68kなるシューティングゲームを手に入れ、会場をあとに
した。本当は『PS2マウス→X68マウス変換器』がほしかったのだが、す
でに売り切れていたのだ。

その後、ヤクドで昼飯をとり、ゲーセンへ向かった。まあ、ゲーマーなら当然
の経路か。もっとも、俺は最近はやりの『音ゲー』と言われるものはやらない
のだが。

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一通り対戦を堪能してゲーセンを出ると、DDRで華麗なステップを披露した
彼が、バイトがあるといい、去っていった。名残惜しいが、仕事があるなら仕
方ない。
そして、残った我々は、中古ソフト・同人誌・AT互換機のパーツを見て回る
ことにした。

「ああっ!これがさくらの新作ですよ。買わないんですか?」
「おおおお、俺はさくらには、おおお堕ちてないから…。ってあんたはオネ買
わないのか?」
「ええ。だって俺、一般人っすから」
「『逸』般人、の間違いだろ?」
「そ、そんなことはないですよ」
「ほう、薔薇の君とは思えない発言だな」

とあるショップでの、ごくごくふつうの会話だ。
新作ソフトコーナーにある1本が、俺を誘惑する。さらに一人が追い打ち的な
ことを言ってくれるが、俺は必死に抵抗した。

「…っかしぃなぁ。大阪の日本橋にも同じような店があるから、アキバまでき
ても特に買うものはないと思ったのに」

俺はさくらなソフトは買わなかったが、ゲイツ窓の壁紙集と同人ビデオ1本ず
つを買っていた。

「そりゃ、ここが『秋葉原』だからでしょ?」
「あ、ナットク」

その後、AT互換機のパーツショップを見て回る。パーツは、さすがに店舗数
が多いだけあって、同じパーツでも店により値段が千差万別で、みてるだけで
おもしろい。
もっとも、ここから家まで運ぶ手間を考えたら『安い!買おう!!』という考え
は起こらなかったけど。

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「ふう…」

一通り見て回った俺たちは喫茶店に入った。

「そうだ、せっかくだからみなさん、寄せ書きしてもらえません?」

言いながら俺はノーパソを取り出した。電源を入れるとカリカリという音とと
もに起動する。

『うっ…』*4
「あれ?みなさんどうしたんです?」

画面には起動中だが、すでに壁紙が表示されている。当然、美優里ちゃんの、
だ。ちなみに、ウィンドウズの各種イベントの音声も『当然』美優里ちゃんで
ある。
みなさん驚いてるけど、これくらいふつーじゃないのかなぁ。

「じゃ、起動したんでみなさんお願いします」

そして、一人ずつテキストファイルにメッセージを書いてもらった。やっぱ、
こういう時、ノーパソは小回りが利いて便利である。

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その後、喫茶店が閉まる少し前までこのノーパソ上で動くリーフな対戦格ゲー
をみんなで鑑賞し、ミニ東京オフは解散となったのであった。

<おしまい>
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どうも『この日の雨は、故・祝一平氏の死を悼む涙かもしれない』のUMAで
す。

今年のGWは、フェスタ68なるX68000オンリーイベントにいくため、
東京まで足を延ばしました。
そこで、チャットなり、SSページなりで知り合った方々と実際にお会いでき
たので、それをネタにしてみました。

最初はGW編1みたく、出会った人を全員をリーフキャラに置き換えようかと
思ったけど、ゲーマーなキャラでかつ、男性キャラっていないので、しかたな
く固有名詞ナシにしてみました。

#このSSに登場することを快く承諾していただいた、関係者各位に感謝!

ぢつは、日本フカシ話の後編が詰まってて、あっちがいつ終わるかわからん状
態(汗)になったので、途中だけどこっちをアップしちゃえ、ってのが真相だっ
たりします>GW編(笑)

ぢゃ、そういうこって。