ゲーマー、耕一のある日常(GW編1) 投稿者: UMA
「浩之…。今…、何枚目だ…」
「『まだ』2枚目っすよ。今んとこ8枚出てるから、あと6枚っすか?」



耕一は今、浩之に呼ばれて浩之の家にいる。なんでも、面白いLDがあると、
浩之が誘ったのだ。
で、二人は今そのLDを見ているのだ。

そして、そのタイトルは…

 『カードキャプターさくら』

…だ。
なぜ、浩之がさくらのLDを持っているのか、それは分からないが。

「くっ…。浩之は俺がミユリストと知ってるよな?」

耕一は苦しそうに浩之に聞く。

「ええ、勿論知ってますよ」

それに対し、勝ち誇ったかのように答える浩之。

「なら、なんで俺にこれを見せるんだ?俺はさくらには堕ちるつもりは無いん
だが?」
「あれ、そうなんすか?今は堕ちてなくっても、春からはさくらに堕ちるんで
すね?」

どうやら、浩之が耕一をここに呼んだのは俺をCCさくらに堕とそうというも
くろみのようだ。
さくらの上映会(か?)が始まった当初、耕一は

 『俺は鋼のような精神力を持ってるのだ。簡単にさくらに堕ちるつもりはな
  い!』

と豪語していたが、話数が進むに従ってだんだんと堕ちていくのが浩之にはよ
く分かった。

「俺がさくらに堕ちる?そんなことはないんだっ」
「へぇぇぇ、そうなんですか?たしか、コーイチさんの家ってBSチューナー
がないんですよね?だから、堕ちてないのを誤魔化してるんだと思ってたんで
すけどねぇ」
「そそそそ、そんなことは…ない…」

耕一はちょっと弱気に答える。

「あれぇ、さっきより弱気ですね。ってことはコーイチさんも堕ちるつもりだ
ったんすよね、さくらに?」
「い、いや、そんな事は…」
「ほぉら、これが去年のアニメ雑誌の付録のポスターですよ」

唐突に浩之が壁を大げさに指さす。そこにはさくらの愛らしいポスターが貼っ
てある。

『ぐはっ!』
耕一は精神ポイントにダメージを受ける!!

「おおっと、こんなところにサントラCDがっ…」

『ぐはっ!!』
耕一はさらに精神ポイントにダメージを受ける!!

「こっちにはドラマCDが…」

『ぐはっ!!!』
耕一はさらにさらに精神ポイントにダメージを受ける!!

「さらにそこには『チェリオ』が!!」

『ぐはっ!!!!』
耕一はさらにさらにさらに、精神ポイントにダメージを受ける!!

「あ、LD終わったみたいだ。次、入れ替えないと…」

言いながら浩之はディスクを入れ替え、次のディスクを再生する。

「俺は…、俺は…」
耕一は放心状態だ。

「あれぇ、コーイチさん。どうしたんです?テレビ見ないで?あ、忘れてた。
月が変わったから、カレンダーめくらないといけないなぁ」

言いながら、今度はカレンダーをめくる。当然さくらのカレンダーだ。

「俺は…、俺はぁぁぁ!!」

耕一は浩之の声に耳を貸さず、叫びながら浩之の家から出ていった。

「ふっ、堕ちたか…。最強の鬼って言ってもたいしたことないじゃん」

浩之は耕一が去った後のドアを眺めながら呟いた。

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『がちゃ…』
耕一が帰ってから暫くして、再び玄関のドアの開く音がする。

「ん?コーイチさんが戻ってきたのかな?」
と浩之が思った直後、部屋に人影が現れた。そして浩之が『え?』と思う間も
なく間合を詰めると、その人影は浩之の腹部に強烈なパンチをお見舞いした。

「がはっ…、あ、あかり…?」

強烈なボディをかましたのは神岸あかり。浩之の彼女だ。そして、彼女は表情
は穏やかだが、あきらかに怒っていた。

「浩之ちゃん。何、見てるの?」

あかりはすっとTVを指さし、浩之に聞く。

「こ、これはですねぇ…、げほっ!!」

浩之が答えるより早く、あかりの肘打ちが浩之の顔面をとらえた。

「『CCさくら』…ね。どうして浩之ちゃんがそのLD持ってるの?」

ちなみに、浩之が持ってるLDは当然初回版だ。

「そ、それは…。矢島から借りたんだよ…」
「矢島…くん?」
「そう、同じクラスの、バスケ部の…」

矢島は、あかりに告白した際、あっさりと玉砕したのだが、その後いろいろあ
って今では浩之の友人の一人だ。
ただし『矢島から借りた』というのは浩之の嘘である。つまり、LDもグッズ
も全部浩之本人の所有物だ。

「で、なんで借りたの?」
「ああ、ちょっと俺が『さくらを見たいなぁ』って言ったら貸してくれ…」

再びあかりの肘。今度は浩之の鳩尾だ。

「なんで?」

肘を突き刺したまま、再び問う。

「それに、このグッズは…?」
「な、なんでって…」

浩之は何か言い返そうと思ったが、部屋のかなりの部分をさくらグッズで占め
られてるのだ。弁解のしようがないと思うぞ。

「浩之ちゃん…?」
「ひぃぃぃ…!!」
「ちょっと待ったぁぁぁっ!!」

浩之が覚悟を決めた瞬間、何者かが俺の部屋に入ってきた。

「ひろゆきくん!私のお兄ちゃん、いじめたでしょ!!」

部屋に入ってきたのは幼女だ。しかもかなり怒ってる。

「あら、初音ちゃん。いらっしゃい」
「え…?あ、こんにちわ。あかりちゃん」

幼女の名前は柏木初音。浩之の恋人だ。ちまたでは小学生小学生と呼ばれてる
が、これでも立派なレディだ。

「初音ちゃん。浩之ちゃん家に何の用なの?」
「あのね、ひろゆきくんが、私のお兄ちゃんをいじめたの。だから私がお兄ち
ゃんの仕返しに来たの!」
「ふーん。浩之ちゃん。耕一さんって?」
「あ、それはその…。コーイチさんにもこの素晴らしいアニメを布教しようと
思って…。はぁっ!!」
「『素晴らしいアニメを』…」
「…『布教』…ですってぇ!?」

二人の女性は怒りモードを爆発させる。ちなみに初音ちゃんはヤンキーモード
を発動させたようだ。

「いいい、いや…あの、あかり…さん?初音ちゃん…??」

浩之は腰が抜けたように、ひょこひょこと壁の方に後ずさる。

「浩之ちゃん…」
「ひろゆきぃ…」
「は、はぃぃぃ!?」
「『ザ・ワールド!時よ止まれッ!!』」

ヤンキー初音がポーズを取って叫んだ瞬間、世界はモノカラーへ変わる。

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(そして時は動き出す…)

再びポーズを取ったヤンキー初音がそう呟くと、一瞬の間をおいて再び時が動
き出した。すると、時が止まっていた間に蓄積されたダメージが一気に浩之の
身に降りかかる!

「ぐはぁぁぁぁぁっ!!」

浩之のやられ顔がカットインされ、そのまま浩之は壁にたたきつけられた。
かわいそうに、浩之はそのままダウンだ。

「すごいね、初音ちゃん。時、止められるんだもんね」
「あたいだって『時』くらいとめられるぜ。でも、あかりだって止まった世界
で動けるなんてたいしたもんだぜ」
「うふ、ありがと」

浩之を制止した世界でボコにした二人は、互いの技を誉め合うのだった。

<おしまい>
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どうも『さくら?何ですか、それ(^^;;』のUMAです。

今年のGWに福岡に行った際、なぜか友人にさくらの洗脳攻撃をいやって程受
けまして(汗)
いやー、LDをかなりの枚数堪能させていただきましたわ。

#福岡にいた日数が少なかったから、洗脳されなかったのか?

ほいでは次、GW編2です。