こどもの日スペシャル『日本フカシ話 ももたろう』 投稿者: UMA
(ナレーション)
 むかーし、むかし。
 あるところにおじいさんとおばあさんがすんでいたそうな。

 ある日のこと、おじいさんがインドへシヴァを狩りに、おばあさんが化学洗
 剤を持って川へ洗濯に行ったときのことじゃ。

 おばあさんが全自動洗濯機のスイッチを入れようとすると川上から大きな桃
 がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきたそうな。



「桃…。明かに怪しいわね。あんなに大きかったら味も大味っぽそうだし…。
うん、とるのやめようっと」

と、おばあさん役の澤倉美咲が桃に対して無視を決め込んだ瞬間、桃が勝手に
割れて中から元気な男が現れた。
こいつの名は柏木耕一。現役の鬼だ。

「まてーい!ここで桃を拾わないと話しが続かないじゃないか!!」
「だって、そんなまずそうな桃、彰くんに食べさせたくないもん」
「がぁぁぁん!!」
「でも、お話が続かないなら仕方ない、拾ってあげるわ。ありがたく思うこと
ね」
「へへーっ」

(ナレーション)
 こうして、桃から生まれた鬼は『桃太郎』と名付けられおばあさんの家に居
 候することになったのじゃ。

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(ナレーション)
 その日の夜じゃった。おじいさんがいつもなら帰ってくるはずの時間になっ
 ても帰ってこんかったのじゃ。

「それにしても、彰くん、遅いなぁ。『ちょっとシヴァ刈りに行って来る』っ
て言ってたのに」
「し、シヴァ狩りって…。もしかしてやられたじゃないのかな?」
「んー、そんなことないわ。だって、ハンドアックス持っていったんだもん。
あれで十分よ」
「ほ、ほぉぉぉ…」

かなり無理無茶無謀なことをしれっと言う美咲さん。なお、会話でわかるとお
り、おじいさん役は七瀬彰だ。

「しかたないわね。じゃあ、耕一さん。本来ならおじいさんとおばあさんの二
人から言うシーンだと思うけど…」
「はいはい、鬼ヶ島に行って、鬼を倒してこいっていうんでしょ」
「はい、よくできましたね。当然、金銀財宝を山のように持ち帰ってくれるの
よね?」
「へーへー」
「あと、ついでに彰くんも拾ってきてくれるとうれしいな」
「彰はついでですか…。まあいいや、鬼ヶ島の帰りにでも探してみますわ」

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(ナレーション)
 こうして、桃太郎は鬼を退治に鬼ヶ島へ向かったのじゃ。
 すると、さっそく犬が桃太郎の前に現れおった。

「『(音符)おーにいちゃん、おにいちゃん。
 おこしにつけた、きびだんご
 ひとつー、わたしにくださいな』」

「『(音符)あーげましょう、あげましょう。
 これから おにのせいばいに
 ついてーくるなら あげましょう』…って、初音ちゃん?」
「うん、はつねだよ。わんわん!」

耕一の前に現れたのは犬の着ぐるみを着た柏木初音だった。

「うわぁ、かわいいなぁ。このままお家にもって帰りたいくらいだよ」

言いながら耕一は初音を抱き上げる。抱き上げるというより、『高い高いして
る』と言った方があってる。耕一は自分が『桃太郎』ということを完全に忘れ
て、素で初音を抱き上げたようだ。

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん。みんなみてる…。恥ずかしいよぉ」

初音は顔を真っ赤にしながら耕一に抗議する。

「はっはっはっ。ごめんごめん」

耕一は笑いながら初音をおろす。

「もう、お兄ちゃんったら…。あ、それよりきびだんごちょうだい」
「え…?ああ、そうか。『ももたろうさん』のお芝居やってるんだっけ。よし
よし、今あげるからね」

耕一は初音の両手に吉備団子を乗せる。

今日、耕一たちリーフキャラは芝居をしている。しかも、自分以外の配役は知
らずに、だ。
ちなみに、こんな無茶な企画を立てたのは緒方プロの緒方さんだ。『家にいる
ときも、誰にも自分の役名を教えちゃダメだよ』と、厳命してたらしく耕一も
初音が犬の役で出ることは知らなかったようだ。
ついでに言うと、この芝居に台本というのも特に存在してなく、みんなは緒方
さんに役名と、そのキャラの出るシーンを教えてもらっただけで、あとはアド
リブで、ってことらしい。
つまり、冒頭で芝刈りにいかず、シヴァ狩りにいった彰の行動もアドリブの為
せる技である。

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(ナレーション)
 お供の犬を手に入れた桃太郎は、さらに旅を続けた。すると今度は猿が現れ
 たのじゃ。

「よう、耕一。あたしにも吉備団子、くれよ」

国産パソコンのCMに出てくるような猿の着ぐるみを着た柏木梓が、ふらっと
耕一達の前に現れた。

「あ、梓お姉ちゃんだ。やっぱりお姉ちゃんがお猿さんの役なの?」
「なぁんだ。やっぱり梓が猿か」
「や、やっぱりって何だよ。二人とも!」
「ああっ!お兄ちゃん、こんなところに黒板があるわよ!?」
「あ、本当だ。おい梓、おまえが猿役にぴったりって証拠、見せてやる」

二人は梓を無視してなぜかあった黒板を引っ張ってくる。

「何でそんなもんが、こんなところにあるのさ?」
「いいから、いいから。おい梓、ちょっと黒板引っ掻いてみろ」
「な、なによ、それ?」
「いいから、いいから。ね、お姉ちゃんやってみて?」
「ったく。しょうがないわね。一回だけよ?」
『うんうん』

耕一と初音が見守るなか、梓は黒板を引っ掻いた。

カスーッ。

「なにーっ!!黒板引っ掻いたのに『キーッ』って言わんげな!?」
「へへーん、昨日爪切ったっちゃーん」

愕然とする耕一に対して得意顔で言い放つ梓。

「きーっ、くやしかー!!」
「あぁっ、今、耕一が『きーっ』って言うた!!ってことは耕一が猿やったっち
ゃん」
「そんなぁぁぁ、俺が猿やったんかぁぁぁ」
「えーん、お兄ちゃんが猿やったの〜?」

大げさに驚愕する耕一と、それを見て泣いてる初音がいとあわれ…。

(ナレーション)
 桃太郎は二匹目のお供を手に入れた!

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「ねえお兄ちゃん。『ももたろうさん』ってことは、お供はあとキジさんだよ
ね」
「そうだね、初音ちゃん」

耕一と初音は仲良く手をつないで歩いてる。
梓はその後ろをついてきているのだ。結局、梓が猿の役、ってことで納得した
ようだ。

「あれ?あそこにいるの、楓じゃない?」
「え?本当だ。あの格好から察するに、楓ちゃんがキジさんってことかな」
「そうなんじゃない?あ、楓の方からこっち来るわよ」

キジの着ぐるみを着た柏木楓は耕一達の前まで来ると、

「けんけん…。キジです…」

とだけつぶやいた。

「…………」
「…………」
「…………」
「キジ…さん?」
「はい…」
「…………」
「…………」
「…………」
「あの、耕一さん」
「え?」
「吉備団子…ください」

(ナレーション)
 こうして、桃太郎は三匹目のお供をゲットしたのじゃった。
 これであとは鬼ヶ島に行って悪い鬼どもを懲らしめるだけじゃが、続きはま
 た別の機会に、ということで。

<たぶん、つづく>
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どうも『こどもの日は子供に萌えてもいいって日ですか?』のUMAです。

えー、今回のネタはこどもの日ってことで手堅く『桃太郎』です。

本当は1話完結のつもりでしたが、書いてるうちに長くなって、前後編に分け
ます。
ただし、まだ書いてないので、後編が中編と後編になるかも…(汗)

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^_^)/~