母から娘へ 投稿者: UMA
「おう、あかりに浩之くん。さあ、あがったあがった」
「おじゃまします、お義父さん」
俺とあかりはあかりの実家に来た。先日産まれた俺達の娘を連れて。

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「おお、可愛いなぁ。ほぉら、おじいちゃんだよぉ」
あかりの腕の中にいる娘に、お義父さんは笑顔でのぞき込む。お義父さんにと
って、この子は初孫にあたる訳だから、とても嬉しいんだろう。
まさに、『目の中に入れても痛くない』って奴だろう。

「もう、お父さん。起きちゃうでしょ?」

あかりはすやすやと眠る娘をかばうようにしてお義父さんに抗議する。

「あ、ああ、すまなかったな…」

お義父さんはあかりに言われてちょっと反省してるようだ。

「あ、あかり。ちょっと来てくれる?」
「え?うん、いいよ。浩之ちゃん。この娘ちょっとお願い」
「おう」

あかりはそういって娘を俺に預けてお義母さんのところへいった。

「ははっ。浩之くんは相変わらずあかりのやつに『浩之ちゃん』って呼ばれて
るのか」

お義父さんは笑いながらコップのビールを飲み干す。

「ええ…。まあ…」

俺は苦笑しながらお義父さんのグラスにビールをつぎ足す。

ったく。
結婚前から『ちゃん付けはやめろ!!』ってあかりには言ってるのだが、いまだ
に俺は『浩之ちゃん』である。子供が産まれたのに、だ。

「ま、それだけ二人が愛し合ってるって証拠だしな。それより浩之くん」
「何です、お義父さん?」

お義父さんはいつになく真剣な顔で聞いてきた。

「あかりって、結構嫉妬深くって浮気がバレた時は烈火のごとく怒るだろ?」

お義父さんはなぜ、そんな事を聞くんだろう?まあ、酒が入ってる訳だし、い
いっか。
俺は疑問に思いつつ、答えた。

「え…。そ、そうですね。真昇竜拳や瞬獄殺を喰らった回数は数知れませんか
ら…」
「やっぱり…。私も母さんに若い頃は浮気がバレた時に『ライダーキック』や
『スペシウム光線』で死にそうな目によく合ったからなぁ…」
「ぶっ!!お、お義父さんもなんすか?」

俺は思わずビールを吹き出しそうになる。まさか、そんな話になると思わなか
った俺はマジでビビった。
今、お義父さんが言った技は、お義父さん達の時代の必殺技だ。お義父さんも
若い頃は苦労してたんだなぁ。

「そうだよ。あ、私がお義父さん…、あかりのお祖父さんに聞いた話だと、お
義父さんも浮気がバレた時は『必殺!一億火の玉』っていう火球攻撃の直撃を
うけたり竹槍でめった突きにされたって言ってたなぁ」

いいながら遠い目をするお義父さん。

「ほ、ほぉぉぉ…」

俺は心底ビビった。あかりだけが攻撃力が高いと思ったのだが、お義父さんの
話でこの家系の女性全員がそうらしいと分かったからだ。

「だから多分な、今さっき母さんにあかりが呼ばれたのは母から娘へ、何か必
殺技を伝授してるんじゃないのか、って思うんだ。母さんのときも、あかりが
産まれた時そうだったから」
「ひ、必殺技?ちょ、ちょっと待って下さい義父さん!!あかり達を止めないと
ヤバいんじゃないですか!?」
「無駄だよ、浩之くん。っていうか、止めようとしてもボコられるのがオチだ
ろうな」
「た、たしかに…」

お義父さんに言われて、ボコられる自分を想像して冷や汗を流す俺。

「はっ!!ててて、ってことは…」
「そう、その娘も大きくなったら、あかりと同等かそれ以上の攻撃力を発揮す
る女性になるだろうな…」

お義父さんはコップのビールを一気に飲み干し、きっぱりと言った。

「ははっ…、ははっ…」

俺は引きつった笑いを浮かべながら将来ほぼ確実に最強の女に育つ、我が娘を
ぎゅっと抱きしめた。

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それから20数年後。

俺達の娘もすくすくと成長しついに結婚し、先日女の子を出産した。
今日は旦那さんと一緒に初孫を連れてやってきたところだ。
娘は、あかりに呼ばれてリビングから退室している。俺とあかりに娘が産まれ
た時と同じだ。

「…ところでうちの娘って、結構嫉妬深くって浮気がバレた時は烈火のごとく
怒るだろ?」

俺は初孫を抱いた娘の旦那に聞いた。なぜそんなことを聞くんだ?って顔をさ
れるが、この一族の習わしみたいなもんだ。さっさと答えろ。

「え、うーん、そうですねぇ。結構嫉妬深いですかね、お義父さん。結婚前は
各種必殺技でボコボコにされたことが何回も有りますから…」
「やっぱり…。俺も母さんに若い頃は浮気がバレた時に『真昇竜拳』や『瞬獄
殺』で死にそうな目によく合ったからなぁ…」
「ぶっ!!お、お義父さんもなんすか?」

<そしてエンドレス>
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どうも『滅殺は一日にして成らず』のUMAです。

今回のネタは、あかりの家系です。

ネタ的には先日貸借天さんからいただいた感想から考えたんすけどね。

#貸借天さん、サンクス!!

あかりと母に続いて、祖母と娘にも『最強』の称号を与えてみました(笑)



ぢゃ、そういうこって。

でわでわ〜(^^)/