あかりの誕生日 投稿者: UMA
「今日は楽しかったね、浩之ちゃん」
あかりは微笑みながら俺にそんなことを聞いてきた。俺達はデートの帰りに寄
った俺ん家のリビングで、休んでいるところだ。

「ああ、楽しかったな。そうだ、あかり。ちょっと来てくれ」
「え、どこ行くの?」
「ちょっと、俺の部屋に来てくれないか?」

今日俺とあかりの二人は、水族館に行って来たのだ。
そして水族館に行った後は、おきまりのウィンドウショッピングをしていたの
で、こんな時間になったのだ。
あかりを家まで送ろうと思ったのだが、その前に俺の家に寄ってもらってるの
だ。

「もしかして…」

階段を上がりながらあかりが不安そうな声を出す。

「あん?」
「もしかして…する…の?」
「ばっ…。ち、違うよ。あかりに渡したい物があるんだ。勘違いするなよ」

幼なじみから恋人同士としてつきあい始めて1年弱とはいえ、すでに肉体関係
がある俺達である。
とはいえ、あかりからそんな台詞が出るとは思わなかった俺は驚いた。

「そ、、そうだったの?」
「安心したか?あ、もしかして、お前が…」
「もうやだぁ、浩之ちゃんったら!!」

ごすぅ!!

あかりは照れを隠すように、俺をたたく。ここは狭い階段である。俺は当然の
ように階段脇の壁に激突する。
いや、激突なんて生やさしいレベルではない。首は壁にめり込んでいるのだ。

「げほっ…。か、階段で殴るなよ、危ないじゃないか!」
「あ、ご免なさい…」

壁から首を引っこ抜き、あかりに抗議すると、あかりはシュンとなる。
などと言ってるうちに俺の部屋に着いた。

「えっと…。ああ、これだ。はい、あかり」
「え?」

俺は机の上にあった紙袋を取ると、あかりに手渡す。だが、あかりはきょとん
としている。

「2月20日。今日はお前の誕生日だろ。忘れたのか?」
「え…。わ、忘れてないよー。自分の誕生日だよ?」

なんて言ってるが、どう見ても忘れてたっぽい。
こいつは昔からしっかりしてるが、どこか抜けてるとこがあるのだ。

「ふぅぅぅん」
「なによー」
「ははは。まあ、いいや。俺からのプレゼント、開けてみ」
「う、うん…。わぁ、ワンピースだ。浩之ちゃん、ありがとう!」

あかりは服を袋から取り出すと、うれしそうに言った。

「ははっ。気に入ったか」
「うん!…ねえ、着てみてもいいかな?」
「いいぜ。…っと、着替えてる間、俺は下にいるからな」
「わかったわ。じゃあ、着替えたら下、いくね」
「おう」

そういって、俺は階下のリビングに戻った。

・
・
・

俺がリビングについてから暫くすると、階段から足音が聞こえる。あかりが着
替え終わって降りてきたようだ。
あかりはリビングに入ると、俺に見せるようにその場でくるっと一回転する。

「どう…かな?」
「綺麗だよ、あかり」
「本当?」
「ああ、本当さ」

ちなみに、あかりに買ってきたワンピースは『白』だ。
白はあかりの清楚なイメージにピッタリだと思うし、ベストだろう。

「ところで浩之ちゃん」
「うん?」
「机の上にあった、グローブ。あれ、何?」
「グローブ?…グロー…。ああ、あれは葵…はっ!!」

『葵ちゃんのプレゼントさ』と続く台詞を止める。俺の机の上にあったグロー
ブとは、野球のグローブではなく、フルコンタクト制の格闘技に見られるよう
な拳を防護するアレだ。
そして、そんなグローブをプレゼントする相手といえば、葵ちゃんなのだが、
まさかそのグローブを出しっぱなしにしていたとは、浩之一生の不覚。

「え?『アオイ』って?」
「あああ、アオイってのは…。そそそ、そう、今日は空が青いなぁ…って」
「でも、もう夜だよ」
「ぐっ…。じゃあ、あお…」
「『いつもがんばってる葵ちゃんへ 藤田浩之』ってカードがグローブの下に
あったわよ?」

さぁぁぁぁぁ…。

俺の台詞を遮ってあかりが口にした台詞を聞いた俺は、血の気が引くのを感じ
た。もはや弁解の余地ゼロ、である。

「ひぃろぉゆぅきぃちゃぁぁぁん?」
「あは、あは…。ま、まあ、そういうことだ。あああ、あかり誕生日おめでと
う。じゃあ、また月曜…」

すでにごまかしが利かない状態であると把握した俺はさっさとこの場を終わら
せようとした。だが、それは無駄な努力でしかなかった。

・
・
・

「ただいまー」

あかりは家へ帰ってきた。

「あかり、おかえり。あら、その服はどうしたの?ふぅぅぅん、分かった。浩
之くんに買って貰ったんでしょ」

あかりは、家を出たときの服装ではなく、先ほど浩之に貰った服を着て帰って
きたのだ。着替えるのを忘れていたらしい。

「えー、なんで分かるの?」
「あら、本当だったの?母さん、冗談だったのに」
「あ…」

言いながら真っ赤になるあかり。一応、あかりと浩之の関係はヒミツにしてい
たのだ。
もっとも、両親には『幼なじみ的なつきあい方』とは違う、最近の二人の態度
をから、とっくにバレているのだが。

「ふふ、いいわ。母さんも浩之くんなら安心してお嫁にあげられるから」
「もう、お母さんったら急に何言い出すのよぉ」

かぁぁぁ、っと顔を赤らめつつ、あかりは照れ隠しに母をぽかぽかとたたく。
だが、母はあかりの攻撃をいとも簡単に受け止める。
しかも片手で。
さすが、あかりの母である。

「ごめん、ごめん。それより、その浩之くんに買って貰った『赤い』ワンピー
ス、似合ってるわよ」

母は微笑みながら娘の着る、彼氏からの贈り物を誉めた。

<ワンピースの色が白から赤へ変わったのはなぜでしょう・おわり>
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どうも『1週間(以上)遅れだけどあかり誕生日おめでとー』のUMAです。

今回のネタは『あかりの誕生日』です。

1週間遅れた理由は特になし。っていうか、元々あかりの誕生日SSは書くつ
もり無かったんですけどね。葵ちゃんの誕生日SSも書いてませんし。
誕生日SSを書かない理由は、全員分書くかどうか疑問(何人か書いたあたり
で、途中で忘れやせんだろーか、とか)があったから。

でも、先日『ねっとりさぁふぃん』してて初音ちゃん関係のHPをいくつかぶ
らぶらしてたときに初音ちゃんの誕生日が2月27日と思い出しまして(汗)
で、初音ちゃんSS書くなら日頃お世話になってる(笑)あかりのSSも書かな
いといけないかな、と思って筆を執った次第です。

遅れたおかげでPS版のあかり母(年齢不詳。高校生の娘アリ。CV不明)のお
姿を拝見する機会に巡り会い、あまりのインパクトにそのまま出演が決定した
という逸話も出来たからヨシとしておこう。うん。

#ふと読み返してみたらゲームネタがゼロでやんの、このSS(笑)

ぢゃ、そういうことで。でわでわ〜(^_^)/~