「ただいまぁ」 「あ、お兄ちゃん、おかえりなさい。外、寒かった?」 そういって初音ちゃんは俺からコートを受け取る。今日は日曜日だが、俺は仕 事にかり出されていたのだ。 「んー、今日は昨日よりは暖かかったな」 言いながら玄関にあがる。そこで、俺は手に持ってる大きな箱に気が付く。 「そうそう、今日は初音ちゃんにお土産があるんだ」 「え?何?あ、ドルカスだ」 初音ちゃんにドルカスの大きな箱を手渡す。 今日は、平日で言う『定時』にあたる時間で仕事があがったので、その足でゲ ーム屋に行ったのだ。 「ああ。前から初音ちゃんが欲しがってただろ?」 「うわぁ、お兄ちゃん、ありがとう!」 そういって俺に抱きつく初音ちゃん。 「ははっ、うれしいかい?」 「うん!お兄ちゃん、だーい好き!!」 ・ ・ ・ 「…でな、その店員、ひでぇんだぜ」 俺は部屋着に着替えると、早速我が家の新型ゲーム機、ドルカスのセッティン グを始めた。 「そうなの?」 「だってな、俺が『ドルカスくれ』って言ったら『正気ですか?』なんて言う んだぜ?しかも、真顔で」 俺が今している話しは、俺がドルカスを買った時の店員のことだ。 「えー、お兄ちゃん、正常だよぉ」 「だよね?その後な、その店員は『そのマシンには美優里ちゃんいないんです よ?後悔しませんね?』だってよ。俺が美優里ちゃんのいないマシンを買うの がそんなにヘンなのかねぇ」 「そ、そんなことないわよ。美優里ちゃんがいないハードだって…。メガドラ も、マスターシステムも持ってるもん。ね、お兄ちゃん」 初音ちゃんが相づちを打つ。 「おう。それに、PC−FXもな」 「それはチャップちゃんがいたらかじゃ…」 「え?初音ちゃん、今、何か言った?」 「う、ううん。何も言ってないわよ」 「そう?…っと、これでOKかな?」 俺は、再度接続をチェックする。 「…接続、ヨシ!!…っと。では、電源オン」 最初の起動だったため、ドルカスは日付の設定を要求してきた。 「ふむ。最初は日付の設定か。えっと、今日は…」 「2月14日だよ。あ、お兄ちゃん。私からお兄ちゃんに渡すものがあったん だ。ちょっと待っててね」 そういって初音ちゃんはキッチンへ行く。 「あ?ああ、分かった。えっと、2月、14日…っと」 俺は初音ちゃんが帰ってくるまでに日付の設定をする。すると、画面はドルカ スのメインメニューが現れた。 「…って、あれ?音が無いぞ?あ、そうか。このディスプレイにはスピーカー 無いんだっけ」 言い忘れたが、ドルカスはパソコン用のディスプレイに接続しているのだ。 ちなみに、せがたさんや砂沙美を接続してるディスプレイにはスピーカーが付 いてるのだが、VGAに対応していない(と思う)のだ。 「えっと、オーディオケーブルは…」 言いながら押入からオーディオケーブルを引っぱり出す。昔のゲーム機の接続 ケーブルと一緒にしてるから思い切り絡まっていて取り出すのに一苦労する。 「よし、今度こそOKだろ…って、画面が暗くなってるじゃん。これって、ス クリーンセーバー?」 マニュアルによると10分で画面の輝度が50%になり、さらにプラス10分 で輝度が20%になるそうだ。 VGAモニタに接続出来ることといい、さすがにゲイツなOSを乗せてるだけ あって『パソコンっぽい』要素が一杯である。 「おにい…ちゃん!」 「わ!びっくりした。初音ちゃん?」 いきなり後ろから初音ちゃんに目隠しされる。思わず振り返ると、初音ちゃん は手に包みをもって立っていた。 「はい、お兄ちゃん。チョコレートだよ」 「チョコ…。あ、14日!今日って、バレンタインだっけ」 「うん」 「ありがとう、初音ちゃん」 俺はチョコを片手で持ち、空いた方の腕で初音ちゃんを抱き寄せる。 「きゃっ!もう…、お兄ちゃん…」 「愛してるよ、初音ちゃん」 「ん…」 言いながら唇を重ねる俺達。 ・ ・ ・ 「じゃ、ゲーム始めようか」 「あ、そういえば、ゲーム、何買ってきたの?」 俺の膝の上で初音ちゃんが聞く。我が家での初音ちゃんの指定席は俺の膝の上 なのだ。対戦格闘ゲームをするときは、それぞれが専用コンパネで戦うから、 そのときは初音ちゃんはコンパネの前に座るけど。 「『セバラリー2』さ」 そういってドルカスのGD−ROMドライブのふたを開け、ディスクをセット する。ふたを閉じるとドルカス用ディスクと認識して、自動的にゲームが起動 する。いい忘れていたが、ビジュアルメモリも初期設定を済ませてパッドにさ してあるのだ。今、液晶画面にはロード中のゲーム、つまりセバラリー2のタ イトル画面が表示されている。 しばらくすると、ゲーセンで見慣れたセバラリー2のタイトル画面が表示され る。 さすがにRGBモニタで表示すると『まんまゲーセン版』って感じである。 「あ、これってアーケードからの移植のレース物だね。でも、お兄ちゃん。レ ース物って苦手じゃなかったっけ?」 「ん…。ホントは、来月の『マリーベルVSパピコン』まで買わないつもりだ ったんだけどさ。いざ、冷静に考えてみたらソフト買った日にハードまで買っ てたらセッティングとかでゲームプレイする時間が無さそうだったから、先行 的に買ったんだけなんだよね」 「そうなんだ」 「でも、セバラリーはゲーセンでも結構面白いって思ってたのは事実だぜ」 「でも、スノウィ、クリア出来ないんだよね」 初音ちゃんはおかしそうに言う。 「う…。ま、マウンテンをまともに走れないんだから、そのせいで残りタイム が厳しくなるんだよ、スノウィは」 事実である。俺はデザートはだいたい満足出来る走りが出来るようになったの だが、マウンテンはまだ走りが甘く、そのせいで次のスノウィで残りタイムが 足りなくなるのだ。よって、ゲーセンのチャンピオンシップではリヴィエラは 走ったことがないのだ。 「だから、これで練習しようかなぁって思ってね」 操作系が、パッドとハンドル+フットペダル+サイドブレーキではかなり違う とは思うが、コースを覚えるのには役に立つだろう。 「そうなの?じゃあ、最初はお兄ちゃんがやってみて」 「いいの?これ、初音ちゃんに買ってきたのに」 「ううん、いいの。お兄ちゃん、先にプレイして。私がコドライバー担当して あげるからね」 言いながら手に持ったパッドを俺に手渡す。うう、いい娘だなぁ、初音ちゃん って。知ってるけど。 「じゃあ、お言葉に甘えて、ぽちっとな」 そして俺はアーケードモードのチャンピオンシップを始めるのだった。 <おしまい> ---------------------------------------------------------------------- どうも『どりぃむきゃすと、買いました』のUMAです。 今回のネタはバレンタイン+ドリームキャストです。 本体と一緒に儂が買ってきた、セガラリー2はマジで遊べます。 たまぁに処理落ちするけど、ほとんど気にならないレベルですし、チャンピオ ンシップを10年間続けるモードや、人気が高すぎて繋がらないと評判のネッ トワーク対戦など、ご家庭用ならではの要素も多いですから。 さらに、ゲームに登場する車の紹介も入ってます(ナレーションは古谷徹)ので ラリーに疎い人でもOKでしょう。 #とはいえ、『ここをこうすれば…』的なところも結構目に付くので、手放し #でベタ誉めできるとは言えないのも事実だけど あと、パソコンユーザならVGAボックスでRGBディスプレイに出力するの をおすすめしますよ。画質がビデオやSなんかと比べ物にならないくらい綺麗 になりますから。 #VGAボックスは、15ピンRGB出力と別に、S出力とビデオ出力も出せ #るってのもポイント #ただし、VGAボックスとケーブルで合計10k近い出費ですけど… で、このSSを書き終わってセガラリー2のマニュアル読んでみたら、ドルカ ス1台でも二人プレイは可能なのね。儂ゃてっきり、通信対戦以外の対戦は出 来ないものと思ってたっす<大馬鹿(笑) #なので、上のSSのラストは『パッドをもう一つ買ってくれば同時プレイで #きた』ということに気が付いたという…(汗) じゃ、そういうこって。でわでわ〜(^^)/