117 投稿者: UMA
「へっ…くしゅん」
私はくしゃみをする。私の名は、保科智子。当時、中学1年生であの日は前日
から風邪をひいて寝込んでいたのだ。
「大丈夫?」
母はリンゴを剥きながら私に聞く。
「あんまり大丈夫やない…」
「風邪ひいたときは暖かくして寝るのが一番よ。リンゴ、ここ置いておくから
ね。おやすみ」
「うん、おやすみ…」
と、そのときだった。

ぐらっ…。

「あれ?今、なんか揺れた?」
「え、別に揺れてないわよ。熱のせいじゃないの?」
「そうかも…。お休み、お母さん」
ここは神戸だ。地震なんぞあるハズがない。という固定概念があったとはいえ
熱で頭がクラクラしてたから、それで揺れてるように感じたのだろう。
私はそう、理解した。
後から分かったことだが、このとき感じた揺れは、本当に地震の揺れだったら
しく、『阪神大震災の予震では?』と言われている。

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その日の晩、熱のせいで眠りが浅く、寝たのか寝てないのかよく分からない感
覚だった。そして、何度目か目覚めのとき、時刻は朝の5時半を回っていた。
「ん…。もう朝なん…」
朝とはいえ、冬の朝だ。辺りはまだ薄暗い。
「体温計は…っと」
ごそごそと体温計を探し、脇に挟む。しばらくして計測が完了したことを告げ
る電子音が鳴る。
そして、
「う」
体温計を見てさらに気分が悪くなる。
「あかん。今日は休みや、休み!」
そう決めると私は再び布団に潜り込んだ。
と、そのときだった。阪神地区を未曾有の大地震が襲ったのは。

ぐらっ…!!

今度は熱のせいでもなく本当に揺れているようだ。しかも凄まじく強烈な揺れ
だ。辺りからは太い木がへし折れるような音、お皿をまとめて叩き割るような
音などが響き渡っている。
私は恐怖のあまり布団の中で震えていた。

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時間にして10秒にも満たない時間だろうが、私にとってはとても長く感じら
れた。
私がおびえながら布団から頭を出すと、近所から人のざわめきが聞こえる。今
の揺れで皆、目が覚めたのだろう。

よく聞くと、
「火事だ!」
だの
「隣の家が潰れてる!」
といった、悲鳴にも似た叫びも聞こえる。

「智子、大丈夫!?」
すると、部屋の外から母の叫び声が聞こえる。
「うん、大丈夫。それより今のは何?」
私は答えながら起きあがる。そして、なぜ母が部屋に入らずドア越しに声をか
けた訳が分かった。ドアの近くにあった本棚が倒れてドアを塞いでいたのだ。
「地震よ地震!とりあえず、家から出るわよ」
「うん、分かった」
私は返事をすると、寝間着の上からジャンパーを羽織り、邪魔な棚をどけて部
屋を出た。ドアの向こうには寝間着に上着を羽織った母がいた。
「風邪は大丈夫?」
「あんまし…。熱も下がってへんし」
「そう。歩ける?」
「うん…」
母はそのまま私の手を引いて家を出た。

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家を出ると近所のおじさん、おばさんと出会い、お互いの無事を確かめた。そ
してひとまず避難場所に指定されてる小学校へ避難することにした。
私が小学校に着くと、すでに何人かが避難していた。
「保科さん、大丈夫?」
クラスメイトもいた。こういった状況だと、知り合いに会うというのはとって
も安心できるものである。
「そっちこそ大丈夫やった?」
クラスメイト同士、お互いの無事を確認しあっていると一人、また一人とクラ
スメイトが増えてくる。
すると安心感からか、熱がぶり返してきたようだ。
「ふう」
私は花壇の脇に腰掛けた。さっきまでは緊張感で風邪のことを忘れていただけ
かも知れないが。

しばらくすると、誰かが携帯のラジオを持ってきた。音量が小さく私のいる辺
りまではよく聞こえないが、かろうじてこの辺りの震度が7だったことが聞こ
えた。
「震度7って…。マジ?」
そう呟きながらぐるっと遠くを見渡す。太陽が出たせいか、辺りはかなり明る
くなってきたようだ。おかげで遠くまでよく見えた。

ぱっと見ても、黒煙があがってるところは5箇所はあった。
潰れた家、潰れかけた家は…たくさんあっただろう。
熱でぼーっとしてるせいもあるが、『悪夢(ゆめ)なら覚めてほしい』と願わず
にはいられないほどの状況だったのは確かだった。

<おわり>
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どうも『あれから4年。時の経つのは早いものです』のUMAです。

今回のネタは1995年1月17日の早朝に発生した、忘れたくても忘れられ
ない阪神淡路大震災です。
記憶をたどりつつ、しかも語り部を保科さんにしたのでフィクションの部分も
ありますが、話の大筋は儂の実体験です。

#儂は福岡出身の神戸市民です

震災で亡くなられた、すべての方々のご冥福をお祈りいたします。


ぢゃ、そういうことで。でわでわ〜(^_^)/~