エルクゥの国の初音ちゃん(題字:Fool氏) 投稿者: UMA
「んー、今日も平和だなぁ…。ん、誰だ。あの娘。俺の方を見てるけど…」
俺がいつものように学校から帰っていると、俺に近づいてくる女の子がいるの
に気がついた。



ここは、日本のとある町。
そして、俺はごく普通の高校生、藤田浩之だ。
『ごく普通の』とは言ったものの、実際には巨大ロボット『キカイヲー』のパ
イロットやってるから、あまり普通じゃないのかも知れない。
ちなみに、このキカイヲーは元々長瀬主任が極秘裏にHMX−12マルチ用に
開発していた周辺機器の一つだったらしいが、使い込みなどが会社にバレそう
になったので俺が預かってるのだ。
でも、あれば使いたくなるのが人情。俺はこのキカイヲーを使って正義の味方
のようなことをしているのだ。
同じクラスの矢島は『キチ○イに刃物』なんて言ったが、キカイヲーの素晴ら
しさをイヤってほど見せつけてやったら(矢島家を粉砕)、次の日から何も言わ
なくなったっけ。



「やっほー、ひろゆきくん。うわきしてなかった?」
俺の前に現れた少女…いや、幼女と言うべきか…は、いきなりそんなことを言
った。…はて、全部ひらがなに聞こえるのは俺の気のせいか…?
「は?誰だお前」
誰だろう。どっかで会ったような気がするんだけど…マジで思い出せないぞ。
「ひっどーい。はつねのこと、わすれたの?じゃあ、これでどう?」
そういって幼女は小さな棒…どっから見ても魔法少女ライクな魔法のバトン…
をどこからともなく取り出すと、それを振りかざした。
するとみるみるあたりが真っ白な光に包まれた。
「…っ。なんだぁぁぁ!?」
光がおさまって俺が目を開けると目の前にはぶっさいくな巨大ロボットが立っ
ていた。
それはボディにガスタンク、電車、ビルなどをくっつけた、一般常識どころか
物理法則を無視しまくったデザインである。
「やっちゃえ!ボロン!!」
幼女がびしっ!と魔法のバトンで俺を指さすと、ボロンというぶっさいくなロ
ボットが動きだし、俺を踏みつぶそうとした。
「わーっ!ちょ、ちょっとまったぁぁぁ!!」
俺は叫びながら逃げる。が、ボロンの攻撃は止まることがない。
「ちぃ…。こうなったらロボットにはロボットだ!『キカイヲー、ゴー!!』」
俺はポーズを決めるとキカイヲー召還のシャウトをする!

すると空のかなたから俺のロボット、キカイヲーが飛んでくる。こいつはオリ
ハルコン合金をふんだんにつかった地上最強のスーパーロボットだ。
「キカイヲーがいれば千人力だぜ!いくぞ、キカイヲー。…って、あれ?ボロ
ンの鉄球がないぞ…?」
キカイヲーに乗り込もうとして、ボロンの方をちらっと見たとき、腕について
た鉄球が無いのに気が付く。
「あっち」
幼女は上空を指さしている。俺もつられて空を見上げると、そこには確かに鉄
球が浮かんでる。
「なんであんなところに…?」
俺の疑問は一瞬にして解けた。直後に鉄球がキカイヲーの上に落ちてきたから
だ。

ぐしゃ…。

「キカイヲォォォォ!!」

あっという間の出来事だった。俺のキカイヲーは、起動してわずか数秒で一瞬
にしてノシイカになってしまった。
「俺の、俺のキカイヲーがぁぁぁ…!!」
俺は号泣した。長瀬主任が会社の金をパチってまで俺のために(本当はマルチ
のためだけど)作ったキカイヲーがあっさりと、しかも、あんなふざけた攻撃
でやられたからだ…。
「どう?おもいだした?」
そういいながら、俺の腕にくっついてくる幼女。
「だーっ、くっつくな!!」
俺がその幼女、初音ちゃんを引き剥がそうとしてると、背後に人の気配を感じ
た。
「…浩之ちゃん。その娘、誰?」
「はっ!!あ、あかり!?」
背後にいたのは、神岸あかり。俺の彼女だ。
「…誰?」
一歩踏み込んで、あかりはもう一度聞く。
「はつねだよ。なかよくしてね」
俺の腕にくっついたまま初音ちゃんは言った。
「ふーん、そうなの。良かったわね、浩之ちゃん」
あかりはにっこりと俺に微笑みかけてきた。
「あの〜、あかりさん。これには深〜い訳が…って。あかり、待ってくれぇぇ
ぇ…ってあれ?」
俺の台詞を無視していきなり駆けだしたあかりは、俺に軽く一撃を入れるとそ
のまま素通りして走り去った。普段ならキャンセルで瞬獄殺か、良くて真昇竜
拳に繋ぐハズだが…。

と、俺がほっとした瞬間、体中に激痛が走った。

どががががっ!!
「ぐはぁぁぁっ!!」

俺は吹っ飛びながら『そうか、今のは喪流のスーパーコンボ『惨影』だったん
だ…』と理解した。

「だいじょうぶ?ひろゆきくん」
「あ…あんまし大丈夫じゃない…」
初音ちゃんに支えて貰いながら俺は立ち上がる。
すると、今度は別の方角からもっと凄い怒気を込めた人の気配がする。いや、
これは『ヒト』の気配か?

 ばさばさばさ…。

その『気配』を読みとった鳥が一斉に飛び立つ。

 どだだだだ…。

さらに、犬や猫までが一斉に逃げ出す。

何が現れるんだ、と思い気配のする方を見る。すると異形の生物が近づいてく
るのが見える。
「な、何だぁぁぁ!!」
とてもボキャブラリが貧困だが、あの異形の生物を形容するなら『鬼』といっ
たところだ。
…って、鬼?どっかで見たような気がするぞ。
「おにいちゃん…」
俺の腕にしがみついた初音ちゃんがそう言う。

「あ」

その一言で思い出した。
この娘は柏木初音。隆山温泉にある鶴来屋旅館を経営してる柏木家の四女で、
鬼の血を引く一族の娘だ。
そして、その初音ちゃんが「お兄ちゃん」と呼ぶのは柏木耕一って男で、彼も
鬼の血を引いてる一人だ。

ゴゴゴゴ…

JOJOばりの効果音が聞こえそうな迫力でコーイチさんは近づいてくる。
前に一度、隆山で鬼のパワーを全開にしたコーイチさんを見たが、今の姿はそ
の数倍はパワーを出してるように思える。
そして、コーイチさんが初音ちゃんと一緒にいる俺を見つけると、びしっと指
さしてこう叫んだ。
「きさーん、俺の初音ちゃんに手を出すげな、えー根性しちょうるやん。のう
浩之!!」
「は、はいぃぃぃ!?」
俺はビビった。確かにここに初音ちゃんはここにいるが、まったく心当たりが
ないからだ。
「ななな何のことですかぁぁぁ、こここコーイチさんんんん!!」
恐怖のあまり呂律が回っていない。
「しゃあしいったい。俺んとこからおらんくなった初音ちゃんが貴様んとこに
おるのが証拠たいって。分かったら、大人しくこの刀のサビになれ!」
「ひぃぃぃぃ!!」
コーイチさんは俺の台詞を無視して手にした刀を勢いよく振り下ろす。

ぶぉん…!!

俺とコーイチさんとは距離的にかなり離れていたが、コーイチさんの刀から振
り下ろしたときの衝撃波が発生し、こちらに向かって飛んできた。
しかしその衝撃波は起動を大きくそれて、先ほどノシイカになったキカイヲー
を直撃した。ちなみに、長瀬主任がどっからともなくやってきて回収作業をし
ていたのだが、一緒に吹き飛んだようだ。
「ちぃ…、はずしたか。きさーん、浩之。逃げたら当たらんやろーが!!」
「ににに逃げてないっすよぉぉぉ!!そそそそれに、あああ当たったら死ぬじゃ
ないすかぁぁぁ!!」」
俺は今の衝撃波で腰を抜かし地面に尻餅をついたまんま抗議する。
「問答無用!喰らえっ!!」
再びコーイチさんは刀を振りかざす。すると、俺の前に初音ちゃんが立つ。
「まって!おにいちゃん!!」
「初音ちゃん?そんなぁぁぁ。初音ちゃぁぁぁん、俺よりそっちの浩之の方が
いいのかよぉぉぉ?!」
コーイチさんは泣いた。そして八つ当たりとばかりに刀の衝撃波を四方八方へ
無差別にとばす。いい、迷惑だ。
「ちがうの、おにいちゃん!!」
「え、違うの?」
初音ちゃんの言葉で、コーイチさんの動きが止まる。
「わたしがいえをでたのは…。おにいちゃんが『美優里ちゃん美優里ちゃん』
っていって、さいきんわたしのことみてくれないんだもん」
「いや、その…。俺、ミユリストだし…」
コーイチさんは返事に困っている。っていうか、言い訳になってないぞ。
「それに、わたしが『クリスマスにドルカスかって』っておねだりしても『美
優里ちゃんがいないから買わない』って…。それで、それで…」
後半、初音ちゃんは涙声になってる。
あーあ、泣かせちゃったよ、コーイチさん。
「初音ちゃぁぁぁん。俺が悪かったから泣きやんでくれよぉぉぉ」
鬼の姿のコーイチさんは、初音ちゃんの頭をなでる。が、
「イヤっ!おにいちゃんなんかキライだもん!」
そういって初音ちゃんは泣きながらコーイチさんの手を払いのける。
「そんなぁ…。機嫌なおしてくれよぉぉぉ。ほほほほら、ドルカス買うちゃる
けん…」
「ぐすっ、ドルカスだったら、ひろゆきくんももってるもん。ね」
そういって初音ちゃんは泣きながら俺にふる。
「え…。確かにドリキャスなら持ってるけど…」
俺のドリキャスは来栖川経由…っていうか、マルチのユーザってことで優待的
に手に入れたのだ。でも、何で初音ちゃんが俺がドリキャス持ってることを知
ってるんだ?
「じゃ、じゃあ…。そ、そうだ。初音ちゃん!」
そういって、コーイチさんは初音ちゃんの両腕をがしっとつかむ。
「いたっ!はなしてよぉ、おにいちゃん!」
「初音ちゃん!!俺ミユリストやめるよ!!これなら機嫌なおしてくれるだろ?」
「え…。本当?本当にミユリストやめるの?」
「ああ。俺にとって本当に大切なのは初音ちゃんだからな」
そういって、そっと抱きしめるコーイチさん。
「おにい…ちゃん。ほんとう…?」
「これが嘘を言ってる目かい?」
「…ううん…。おにいちゃん…」
初音ちゃんはうっとりとしてる。どうやらよりが戻ったようだ。
ちっ、つまらん。そーだ、かきまわしたれ。けけけ。
「ところでコーイチさん。例の美優里ちゃん、応募しました?」
そこへ俺が口を挟む。『例の』とは、せがたさんに出た『アイドル雀士スーチ
ーパイめちゃ限定版発売5周年(得)パッケージ』のアンケートのことだ。
「ん?ああ、発売日のうちに出したぜ。当然、『等身大フィギュア着せ替え美
優里ちゃん』のとこに印つけてな。今から届くのが楽しみだなぁ…って、初音
ちゃん!?」
「おにいちゃんの…おにいちゃんの、ぶぁかぁぁぁ!!」
初音ちゃんが泣きながら思いっきり叫ぶと、それに呼応してボロンが大爆発す
る。
「て、てめぇ浩之、俺に何の恨みがあるとやぁぁぁ!!」
という、コーイチさんの断末魔が聞こえる。いつかのお返しだ。

どっかぁぁぁぁぁん!!!

・
・
・

しばらくして爆風が収まった頃、俺は体の上に乗っかったガレキをどけながら
起きあがる。防御姿勢をとっていたので、ダメージはない。
「ふう。それにしても初音ちゃんか。自爆ことねーじゃねーか…」
なんて思っていると、ガレキの山から一組の男女が出てくる。爆風をモロに食
らったのだろう。服はボロボロである。
「やっほー、ひろゆきくん」
…やっぱり女の方は初音ちゃんだった。そのまま初音ちゃんは俺の腕にすり寄
る。ってことは男の方はコーイチさんか?
「いやぁ、すまない浩之。ドルカスあるんだってな?なら、初音ちゃんともど
もしばらくやっかいになるわ」
「おにいちゃんがね、『俺と一緒ならお泊まりしてもいい』って。だからよろ
しくね!」
「あ…、ああ…」
俺は元気よくしゃべってるのを上の空で聞いてる。どうやら鬼の一族には『他
人の迷惑』という言葉がないらしい。
「あ、そうそう。俺がミユリストでもいいって、初音ちゃんに認めてもらった
から、さっきのようなことはもうないぞ」
コーイチさんは笑いながらそう言った。

ざぁっ…。

突然、背後にすさまじい殺気を感じる。さっきのコーイチさんの殺気と同等か
それ以上だ。
「浩之ちゃん。心配して来たんだけど、とっても楽しそうね…」
「あかりぃ!?いや…その…。違うんだあかりさん、これには海よりも深〜い訳
がだねぇ…」
俺は滝のように脂汗をかきながら弁解する。だが、半裸の女性が抱きついてき
てる(ように見える)のだ。弁解の余地なんぞあるハズもない。
「ふーん、そう」
あかりは微笑む。直後、あかりの横に人影が見えたかと思うと、あかりを中心
に背景がシロクロに変わっていく!
「げぇっ!あれは『世界』のスタ…

・
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・

…ンドかぁぁぁっ!?ぐはぁぁぁっ!!」
夕日をバックに俺の死に顔がアップでカットインされる。時間が止まっていた
間の記憶は無いが、身体的なダメージはあるのだ。
「わぁ、すごーい!あかりちゃんのいまのわざ、ザ・ワールドかなぁ。それと
もスタープラチナかなぁ」
「うーん、どっちだろう。でも、どっちでも凶悪な必殺技に違いないぜ。初音
ちゃんはあんなことしないよね」
「それはおにいちゃんしだいだよ」
「ははっ。そっかぁ。気をつけないとな」
「うん」
そういって二人はそっと口づけをした。



夕日が二組の(非常に対照的な)カップルを優しく照らし出している。
日本は今日も平和である。

<おしまい>
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どうも『早くドルカスに移植されるといいなぁ>キカイオー』のUMAです。

今回のネタはカプコンのアーケードゲーム「超鋼戦記キカイオー」より「魔法
の国のポリンちゃん」です(タイトルは、Foolさんに付けていただきまし
た。Foolさん、サンクス!)。

ポリンちゃんのCVがこ○ろぎさんだったから、ポリンちゃん役は初音ちゃん
にすんなり決まって、さらにジュンペイとサオリが浩之と滅殺あかりに見えた
もので(笑)、この3人は初ゲーム目であっさりと決定。
で、ほかのキャラも配役考えて、キカイオーをそのまんまパロにしても面白そ
うだったけど、長くなりそうだった(元々全6話だし)ので1面と最終面(エン
ディングA:ラスボスがポリンの父)という構成にしてみました。

#ちなみにエンディングBのときのラスボス(ポリンの母)は千鶴さんで考えて
#ました


ぢゃ、そういうことで。でわでわ〜(^_^)/~

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