初詣 投稿者: UMA
「あれ、マルチちゃんは?」
「ん?マルチなら俺の後ろに…、ってあれ?」
俺とあかり、それにマルチの3人は揃って近くの神社に初詣にきているのだが
気が付いたらマルチがいないのだ。
「マルチちゃん…迷子になったのかなぁ…」
あかりが心配そうに呟く。普通のメイドロボならGPSと連携したりして迷子
になんかならないものだが、マルチは違うのだ。
「そうかもな。よし、俺はあっちを探すから、あかりはそっちの方を探せ」
「うん」
そういって、俺達は迷子のマルチを探すためにいったん分かれた。

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「あ、ヒロユキ。あけましてコングラチュレーション!今年もよろしくネ!」
「おうレミィ、あけましておめでとう。…って、なんだその格好は?」
境内を歩いていると、巫女さんの格好をしたレミィと出会った。
「Oh?これは巫女のバイト中ね。似合う?」
「結構似合ってるぜ」
金髪+巨乳の巫女さん…。一部の人間にはたまらないシチュエーションに違い
ない。
「ん?ところでそれは何だ、レミィ?」
俺はレミィが持ってるものを指さした。
「コレは破魔矢ね。で、こっちの弓が…」
そういって、右手に持っていた弓を左手に持ち替えると、レミィがいきなり硬
直した。
「ん、どうしたレミィ?」
「フッフッフ…、狩りよ。狩りの時間よっ!!」
俺が声をかけると、レミィはいきなりそう叫び、俺に向かって矢をつがえた。
「い!?ちょ、ちょっと待て、レミィ!まさか、新年早々ハンターモードか!?」
「…獲物が何かほざいてるワ…」
…いかん、目が据わってる上にこの発言だ。完全にハンターモードに入ってる
のが分かる。
しかも今日は例の『お願いのビン』は持ち合わせていない。イコール、今の俺
にはレミィを止める術がないのだ。
「じゃじゃじゃ、そういうことで!レミィ、学校で会おうぜ!」
俺は脱兎のごとくその場から走り去った。
「Hey,Freeze!」
と、いうレミィの言葉が遠くに聞こえるが、俺は走った。

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「…ふう、びっくりした。新年早々から死にそうな目にあうとは思わなかった
ぜ。お、あそこにいるは…」
しばらく走っているとマルチと同じメイドロボのセリオを見かけた。俺はセリ
オのそばまで走った。
「ようセリオ。あけましておめでとう。ところで、この辺でマルチ見かけなか
ったか?…セリオ?」
セリオは俺の挨拶に耳を貸さず、天を見上げたままじっとしている。そしてお
もむろに、
「…ダウンロード完了。…藤田様、何かご用ですか?」
どうやら、衛星経由で何かデータの受信をしていて、それでほかの処理が停止
していたらしい。
「ああ、『マルチ見なかったか?』って聞いたんだが」
「いいえ」
セリオは簡単にそう答えた。
「そうか、じゃあな」
「待ってください」
セリオが俺を呼び止める。
「ん?どうしたんだ?」
「新年のご挨拶がまだでしたので…。あけましておめでとうございます、藤田
様」
「お?おう、こっちこそよろしくな」
二人で挨拶をする。
「…ついでに、先ほどダウンロードしたデータを見ます?」
「いいのか?で、何をダウンしたんだ?」
「『八極拳』の実戦データです」
「ふーん…って『見せる』って…まさか、俺で試すのか?」
こくん。無言でうなずくセリオ。同時に背筋に冷たい物が走る。
「いいいいや、やっぱり今日は遠慮し…」
セリオは俺が断るよりも早く踏み込むと、崩拳を俺の鳩尾に入れた。そのまま
俺の背後に回り込み靠で俺に一撃を入れ、さらに双掌をたたき込んだ。
「ぐはぁぁぁっ!!いいい、今のはまさか…」
俺は吹っ飛びながら『アキラ三段こと『崩撃雲身双虎掌』かぁぁぁ!』と思っ
た。
「はい、今のは旧アキラ三段こと崩撃雲身双虎掌です。ついでに、修羅覇王靠
華山も見ます?」
セリオは俺の考えが読めるのだろうか…って、修羅覇王靠華山?シャレになっ
てねえぞ。
「ぢ…ぢゃぁセリオ、また今度ゆっくり見せてもらうよ…」
俺は挨拶も程々に、セリオから逃げるようにその場から立ち去った。
…体を引きずりながら。

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「ぜぇ、ぜぇ。…ったく、護身用だか何だか知らねぇが、物騒なもんをダウン
すんじゃねーよ」
俺はセリオが見えない辺りまで来た。
「あ、先輩」
「ん…。おう、葵ちゃんじゃないか。おけましておめでとう」
「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」
葵ちゃんは元気良く挨拶する。
「あ、そうだ。先輩、私冬休みの間に新しい技をマスターしたんですよ。『モ
ードチェンジ』って言うんです」
「ふーん。…って、え?今、何て?」
俺は空返事をして、一瞬びっくりする。
「『モードチェンジ』です」
「モードチェンジって…。あの…?」
「はい。千鶴さんモードとかになれる技です。今までも千鶴さんモードと、あ
かり先輩モードができてたんですけど、あかり先輩モードだと長続きしなくっ
て、まだマスターできてなかったみたいで…」
葵ちゃんはもじもじとしながらそう言う。長続きしないって…、それでも十分
凄いと思うぞ。
「それで、冬休みの間ずっと猛特訓してやっとマスターしたんです!」
「ふ、ふーん…」
俺は半分顔を引きつらせながら葵ちゃんの話を聞いた。
「じゃあ、いきますよ先輩!」
「え?マジぃぃぃ?!」
俺の狼狽をよそに、葵ちゃんはモードチェンジを発動する。

葵ちゃんは相手に背を向ける格好で立ち、気を練る。
そして…、
「はぁっ!」
気合い一閃、葵ちゃんの髪の毛が赤色へと変化した。マジ…?

『どう、浩之ちゃん先輩』
と、あかりモードの葵ちゃんが俺ににっこりと微笑む。

「どどど、どうって言われても…」
俺が返事に困っていると、
「ひぃろぉゆぅきぃさぁぁぁん!!」
と、後ろから誰かに抱きつかれる。声と言動で分かる、マルチだ。
「おう?マルチ、お前今までどこに!?」
俺はマルチの頭をなでながら聞く。
「ふえっふえっ…」
が、マルチは俺の背中にしがみついたまま泣いたままだ。すると、
「浩之ちゃん…」
「あかり?」
「マルチちゃんね、私達とはぐれて参道を反対側に行っちゃったみたいなの」
どうやら、あかりがマルチを見つけたようだ。
『…浩之ちゃん先輩』
あ、忘れてた。
「浩之ちゃん…」
ぎくっ!こっちにはオリジナル…というか、本物のあかりがいるじゃん。
「ええええっと、あかり。こっちは松原葵ちゃん。格闘技やってるんだ。それ
で、今はモードチェンジってやつであかりのなってるらしいぜ」
『あけましておめでとうございます、神岸先輩。似てますよね、私?』
「あけましておめでとうございます、葵ちゃん。でも、私、こんなかなぁ?」
「え?」
二人が俺の返事を待つ。
『似てますよね?』
「私、こんなに怖くないわよね」
再び問う。
「う…。えっと…」
困った。確かに、葵ちゃんのあかりモードはあかりそのものだ。
かと言って、ここで『YES』と答えれば、『あかりは怖い』っていうことに
なる。そうなれば当然、あかりの怒りの鉄拳が俺に炸裂するのはまず間違いな
い。
ならば…。

「うーん、葵ちゃんのあかりモードはなかなかのレベルだと思うぜ。でも、あ
かりはそんなに怖くないんじゃないのかな?」
『え…?そうなの…?』
あかりモードの葵ちゃんの表情が曇る。
『でも、この技を見たらどうかしら?』
「え?技って…まさか!」
俺の予感は的中した。
『うん、瞬獄殺だよ』
葵ちゃんは片足をあげるとそのまま俺につつーっと、近づいてくる。
そして、俺をつかむとともにホワイトアウト…。

どかかかかかかか…!!
かかーっ!!

『人』

あけぼのフィニッシュが見えるぜ…。

「どうです、先輩!これでも似てませんか?」
葵ちゃんはモードチェンジを解除して、普通の葵ちゃんに戻っていた。
「あ…う…」
体中が痛く、返事ができない。さっきから連続で凶悪な技を食らってるせいだ
が…。
「似て…ませんか?」
葵ちゃんは返事がないのは似てないからだ、と思ったようだ。
「葵ちゃん…だっけ?今のはなかなかいい筋してたわよ」
俺に代わってあかりが葵の瞬獄殺をほめる。
「本当ですか!神岸先輩!!」
葵ちゃんの顔がぱああっと明るくなる。
「でもね、本当はこうするのよ…」
『え!?』
俺と葵ちゃんが驚きの声を上げる。
葵ちゃんの『え』は自分の技が否定された悔しさと、技を惜しげもなく見せて
くれることに対する驚き。俺の『え』は瞬獄殺を連発で食らうことに対する驚
きと、間違いなく最強クラスの瞬獄殺を出すであろう恐怖だ。
「ちょ、ちょっと待ったぁぁぁ!!」
す…っと片足をあげると、あかりは俺に向かってすっと近づいてくる。移動ス
ピードはさっきの葵ちゃんの2倍はあろうか。
そして俺をつかみ、ホワイトアウト…!!

どががががががっ!!!
かかーっ!!!

『犬』

再びあけぼのフィニッシュだ。

「分かりました、神岸先輩!!スピード、技のキレ、どれをとっても私のはまだ
まだだったんですね!」
「ええ」
あかりはにっこりと微笑む。
「そっか…。あれが本物の瞬獄殺か…よし、イメージが薄れないうちに特訓し
ないと!じゃ、先輩。また一緒に練習しましょうね!神岸先輩とマルチちゃん
も、さようなら!!」
そう元気良く挨拶しながら葵ちゃんは走っていった。

「葵ちゃんって元気な娘ね」
「ああ…」
俺はあかりに支えて貰いながら起きあがった。
「ところで浩之ちゃん」
「ん?」
「なんで葵ちゃんと知り合いなの?」
「え…?」
俺の腕を握るあかりの手に力がこもる。
「なんで?」
再び問う。
「そそそそれはだねぇ…」

・
・
・

俺は三度目のあけぼのフィニッシュとともに血の海に沈んだのだった。

<おしまい>
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どうも「新年一発目はおめでたい『あけぼのフィニッシュ』でしょう」の滅殺
あかり会会長のUMAです。

あけましておめでとうございます。
昨年後半はほとんど活動を休止していたのでほとんど忘れ去られた存在(汗)か
もしれませんが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

…って、すでに年が明けて十日も過ぎてるやん(^^;;

まあいいや(をい)。

えっと、今回のネタは年末福岡に帰省した際にショッパーズの5階(6階だっ
け?)の玩具屋前の東鳩フィギュアのガチャポンでゲットした葵・レミィ・セ
リオと、友人のゲットしたあかりを使って書いてみました。マルチがちょい役
なのはフィギュアがゲットできなかったから(汗)

#実際にはレミィが2体出たんで、友人の葵(これも2体出た)をトレードした
#んですけどね

さてと、今回はこの辺で。
次回は水曜日辺りになるのかな?

#予定ではカプコンの『キカイオー』ネタ

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^^)/