ゲーマー、耕一のある日常(古(いにしえ)編) 投稿者: UMA
「美優里ちゃんはまだありませんよ」
店員は俺を見るなり、そういった。
「そりゃそうだろ。まだ発売されてないんだから。それより、俺が買いに来た
のはこっちだ」
『…ったく、この店員は。俺を見るなり、なんつーことを…。俺はミユリスト
かよ?まぁ間違っちゃいねぇが』俺はそんなことを思いながら、CDをカウン
ターに置く。それには『コナミアンティークスMSXコレクションウルトラパ
ック』と書いてあった。
「ねえ、耕一お兄ちゃん。『美優里ちゃん』って何?」
傍らにいる初音ちゃんが聞いてきた。
「『スーチーミユリめちゃ限定版発売5周年(得)パッケージ』の事だよ。たし
か、今年の冬に出るんだぜ」
「それって『スーチーパイ』じゃないの?」
「そうとも言うな」
「くすくす。相変わらず波動レベル高いんだね、耕一お兄ちゃん」
「はっはっはっ。照れるじゃないか」
「誉めてない、誉めてない…って、あれ?こんなこと前にもなかったっけ?そ
れも、2回…。これってデジャブ…?」
「そうかもな」
俺は笑いながらそう言ったが、ほぼ同じ場面があったのはデジャブではなく現
実のことだ。
まあ、そのことについては深く追求しないでおこう。

「あれ?耕一さん?」
俺がカウンターで金を払っていると、後ろから不意に声を掛けられる。
ん?誰だ、俺を呼ぶのは…?
「おう、祐介じゃん。どうしたんだ?」
「僕はこれを買いにきたんですよ」
祐介は大きめの箱と、CDを手にしてる。
「ん?せがたさんキーボードと…、ソフトは何だ?」
「キーボードとくれば当然、MSXアンソロジーっすよ。耕一さん」
なんで、今のご時世に買うソフトがMSXで『当然』なんだか…。電波使いっ
てやっぱ人じゃないのかなぁ…って俺も半分人じゃないんだっけ。俺も人のこ
と言えないのかも。俺は苦笑した。
「?どうしたんすか、耕一さん」
「いや、なんでもない。それより、今からお前ん家行っていいか?」
「今から?」
「ああ。久しぶりにキーボードでグラ2や魔城伝説をプレイしたくなってな」
「うーん…。ま、いいや。いいっすよ。耕一さん、初音ちゃん」
そして、俺達は祐介の勘定を待って、祐介の家に向かうことになった。

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「あれ?祐君、MSX片づけたんじゃなかったっけ?」
沙織ちゃんは、単色スプライトの画面を見るなりそう言った。
「え、これはMSXの画面じゃないよ」
「じゃあ、エミュレーション?fMSXかな?」
「違うよ、せがたさんだよ」
「えぇーっ!?せがたさんのエミュレータ?そんなの、あるの?!」
「一応、あるらしい…ってってあれ?前にもこんな場面なかったっけ?」
「うん、あたしも同じ事思ったわ。デジャブってやつかなぁ」

俺達が祐介の家について、せががたさんをセッティングしていたころに沙織ち
ゃんが来たのだが…。
うーん、こいつら二人って俺と初音ちゃんと同等か、それ以上に濃いのかもし
れない。彼氏の部屋に入るなり、いきなりこんな会話だもんなぁ…。なぁんて
思っていると、沙織ちゃんは、テーブルにあるものに気がついたようだ。しか
し、どうやら俺と初音ちゃんにはまだ気がついていないらしい。

「祐君、キーボードあるけど、せがたさんベーシック買ったの?」
テーブルにあったもの。
それは、さっき祐介が買ったせがたさんキーボードだ。
「いや、ベーシックは買ってないんだ。キーボードは純粋にデジタル入力のコ
ントローラとして買ったんだよ。前に沙織ちゃんがキーボードがいい、って言
ってたでしょ」
「あ…そういえば、そんなコト言ったわね、あたし。え?じゃあ、これあたし
のために、わざわざ?」
「うん」
祐介は後ろ頭をぽりぽりと掻きながら答えた。
「ありがとう!祐君!!」
そう言って沙織ちゃんは祐介に抱きつく。
「あはは。でも、僕もキーボードのほうが使いやすいって思うから、半分は自
分の為だけどね」
これは真理だ。格ゲーには不向きだが、それ以外のゲームでは最高のインター
フェースだ、と断言できる(俺&初音談)。
「それでも十分嬉しいわよ」
そういって、ぎゅーっと抱きしめる力を強める沙織ちゃん。
「あはは。沙織ちゃん、苦しいよ」
「あの〜、二人とも。私たちもいるんですけどぉ…」
遠慮がちに、初音ちゃんが声をかけてきた。目の前でいちゃいちゃされては、
さすがにあきれた様子だ。
「あれ、初音ちゃん?耕一さんも…。いつからいたんですか?」
「俺達は沙織ちゃんがこの部屋に来る前からいたんだけど…」
「あ、そうだったの?ごめーん、全然気がつかなかったわ。じゃあ、改めてこ
んにちわ」
順番がかなり前後したが、俺達は簡単にあいさつする。

・
・
・

「そうだ、祐君。今度の『N in 1』に何が入ってるの?」
沙織ちゃんは僕を離しながらそう聞いてきた。ちなみに『N in 1』とい
うのは、東南アジア系のアングラなブツで、1枚のCDや1本のカートリッジ
に複数本のゲームが無作為に入ったという、著作権を無視しまくったヤバいア
イテムの俗称だ。
「確か、ソフトが30本入ってるって。何が入ってるかは、えっと…、CDケ
ースはどこだっけ…」
祐介は、沙織ちゃんのそれに突っ込まず、CDケースを探す。
「あ、私が見てるよ」
初音ちゃんが見てるのか。
「えっとね、砂沙美版のVol1〜3までが全部入ってるんだよ」
インストカード…もとい、取説を読みながら初音ちゃんが言った。
「ふーん。ってことは、グラディウスシリーズは全部入ってるけど、ナイトメ
アシリーズは1しか入ってないってことね」
「うん、そう。だから、ガリウスとシャロムとかも入ってないんだよ」
とっても残念そうに初音ちゃんは答える。
「それは残念だわ…。あ、そうだわ。せっかくキーボードあるんだし、グラデ
ィウスでもやってみようかしら」
そういって、沙織ちゃんはキーボードの前に座る。
「あ、沙織ちゃん。左手の位置が違うよ」
「え?」
ふと、見てみると、沙織ちゃんの左手はスペースバーとMキーに置かれてる。
「この、せがたさんキーボードではABCボタンがZXCキーに対応してるん
だよ」
「え?でも、MSXのコナミのゲームはスペースキーとMキー…」
「だから、これはせがたさんだって」
濃い会話だ。と、苦笑したが、沙織ちゃんがゲームを始めて数秒で笑いが凍り
付いた。

「こ、これは…」
「目の錯覚…?」
「い、いや…まさか、そんな…」
「PS版でも再現されていないんだぜ…」

その場にいる全員が、目の前で起きた事実に衝撃を受けていた。
「初音ちゃん、確認のためにツインビーやるから、2Pお願いね」
沙織ちゃんはそういって、『それ』を確認するためにツインビーを起動する。
そして、俺達の疑惑は確信へと変わった…。

「間違いないわ…。ちらついてるのよ、スプライトが!!」
『おおっ!!』
全員が一斉に驚嘆の声を揚げる。

簡単に説明しておくと、MSX1というスペックのパソコンは、スプライトが
横方向に5個以上並ぶとソフト的に後ろのスプライトが表示されない、という
制約があるのだ。
それを回避するために、コナミ等のゲームでは、スプライトの前後を高速で入
れ替えて強引に表示させているため、目の前の光景のようにスプライトがちら
つく、という現象が発生するのだ。

その後、ちらつくスプライトに感銘を受けながらMSX談義に花を咲かせた4
人だったという。

<なんとなくおわり>
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どうも、『ちらつきがすっげぇ懐かしい』UMAです。

今回のネタは、「コナミアンティークスMSXコレクション」のサターン版で
す。

あ、そうそう。儂はまだ、サターンキーボードは買ってないです。なので、キ
ー配列は本当にZXCで合ってるか分かりません。
それどころか、ワープロやベーシック以外に使用できるのかも、不明です(汗)

#『まだ』ってのがミソ。近いうちに買うつもり
#使えると確信できれば、だけど

ぢつは、オラタンSSを書いてるんだけど、そっちが不調なんで、急遽こっち
を書き上げたんす。

#序盤でいきなりオチたり(汗)、無理矢理説明入れたらえらく冗長になってき
#たり(大汗)…>オラタン


ぢゃ、そういうことで。でわでわ〜(^_^)/~