人と鬼の戦い(前編) 投稿者:UMA(うま)

う゛ぃーっ、う゛ぃーっ。

ふいに、警報が鳴り響いた。近くのモニタには極太ゴシック体で「DANGE
R」と書かれた文字が点滅している。
「隆山第弐レーダーに反応。侵入者です」
「何ですって?楓、分析急いで!」
千鶴は、レーダー手の楓に命令する。
「了解。…パターン『黄土色』、ヒトです」
「『シト』?」
傍らにいた初音が聞く。
「ううん。『ヒト』、ホモサピエンスのことよ」
「ヒトって…。なんで今日だけ反応するの?ヒトなんてそこら辺に幾らでもい
るじゃない?」
「さあ?作者もそこまで考えてないらしいわよ」
…悪かったな…
「あれ?今、何か聞こえた?…まあいいわ。初音、侵入者を映して」
命令された初音ちゃんはコンソールを操作して、侵入者が映っているカメラを
探した。そして、それらしい映像を見つけると、その映像をメインモニタに転
送した。
「映像、出ます」
100インチプロジェクタに、雪の中を歩く不審な二人組が映る。
「侵入者の正体が判明しました。月島拓也と月島瑠璃子です」
別モニタに、月島兄妹のプロフィールが表示される。
それをざっと読むと、彼らは「電波使い」で「危険度B」ということらしい。
「総員第一種戦闘配備!柳川を迎撃に出して!!」
千鶴は迎撃命令を出す。
「柳川さん…ってあの刑事の?」
初音が聞き返す。その顔には「その人はどこにいるのか知らない」と書いてあ
る。
「そうよ。今、彼にはカタパルトデッキに待機してもらってるから。急いで」
「え、そうなの?でもなんで?」
「柳川さんが攻撃性能が高いからよ。ほら、復唱はどうしたの?」
初音は「何故、柳川さんがここにいるのか」を訊いたつもりだったが、深く追
求しないことにした。
「あ、うん分かったわ。…柳川さん、迎撃お願いします」
「…」
「柳川さん?聞いています?」
「…」
返事がない。
「柳川さん?…千鶴お姉ちゃん。柳川さん、返事しないよ」
「貸しなさい」
千鶴は初音のインカムを奪い取り、すうっと息を吸うと大声で、
「柳川ー!さっさと行けーーーーーーー!」と叫んだ。
「りょ、了解いいいいいい!!」
その声にビビったのか、柳川は即座にカタパルトで発進した。

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一方、こちらは月島兄妹だ。大雪原をロクな装備もしないで来たもんだから、
遭難寸前にも見える。
「おーい、瑠璃子ぉ。本当にこっちであってるのか」
拓也は、自分の前を歩く妹に声をかけた。
「うん、あってる」
瑠璃子のこの自信はどこから来るのかは分からないが、きっぱりと答えた。
「そうか?ならいいんだ。でもさあ、もう少し暖かい装備して来た方がよかっ
たんじゃないかなぁ」
拓也の格好は、赤い軍服にドクロのついた軍帽だ。
「でも、お兄ちゃんが『ゼロのあいつは好かん』っていってマントを捨てたん
だよ」
そう。最初、瑠璃子が持ってきた衣装にはマントもあったのだが拓也が自分で
脱いだのだ。
「はっはっはっ。そんなこともあったか」
「そうよ、お兄ちゃん」
「はっはっはっ。はあ〜…」
と、思い切りため息をつきながら、拓也は妹のマフラーを恨めしそうに見つめ
た。
「あ、お兄ちゃん。流れ星よ」
そういって空を指さす。
「流れ星に願い事3回言うと叶うんだってね」
瑠璃子は「お兄ちゃんといつまでも一緒に居られますように」と3回言った。
拓也は「愚民共を始末できますように」と3回言った。
「…ってあれ?流れ星、こっちに向かってきてない?」
瑠璃子が言った。よーく見ると確かに光点がだんだん大きくなっているように
思える。
と思った刹那、拓也達の横を流れ星が通り過ぎた。そして、それは地面をえぐ
るように激突し、そのまま突き進んで大きな岩にぶつかって停止した。
「流れ星…じゃなさそうね」
「ああ…。なんか人の形をしていたっぽいが…」
拓也達は流れ星「のようなもの」に近づいていった。
「!」
そこには、着地に失敗してひん死のように見える柳川がいた。
「し、し、死ぬかと思った…。ん?なんだ貴様等。…なるほど、貴様等が例の
『侵入者』か」
数瞬で普段のクールな柳川に戻る。いや「狩猟者」の柳川に、だ。
柳川は即座に鬼の力を解放し、戦闘態勢に入った。
「お兄ちゃん…」
「瑠璃子、下がってろ!」
拓也が瑠璃子の前に立つ。
「ほう、お前が俺の相手をするのか…」
「ああ、そうだ!」
そう言って拓也は電波を右手に纏うと、そのまま身体を回転させて突進してき
た。
「くっ…」
腕をクロスしてガードする柳川。
だが、攻撃がヒットした瞬間拓也は攻撃態勢を解き、そのまま柳川を放り投げ
た。

「なっ…!サイコ投げ!?」
司令室でモニタを見ていた耕一が叫ぶ。
「何ですか、それ?」
千鶴が耕一に訊く。
「あれはシャドルーに伝わる太古のハメ技だ。まさか月島が使えるとは…」

「やるな…」
壁に打ち付けられた柳川が言った。
拓也はとどめとばかりに2発目のサイコクラッシャーの体勢を取っている。
「これで…とどめだっ!」
ごうっ、と電波のオーラで身体を包むと再び拓也は突進してた。
だが、柳川はそれをジャンプでかわした。
「何っ!」
拓也がそう思った直後、柳川は急降下蹴りで上から踏みつぶした。そして、地
面に降り立つと同時に旋風脚で空高く蹴り上げた。

すたっ。柳川が着地するのと数瞬遅れてズタボロになった拓也が落ちてくる。
どさっ。
「お兄ちゃん!」拓也に駆け寄る瑠璃子。
「る、瑠璃子…」
「…分かったわ。次は私が相手をします」
すっと身構える瑠璃子。
「ほう、次は貴様か。今度は最初から全開で行くぞ!」
いきなり、気弾を打つ柳川。しかし弾は瑠璃子に当たる直前に空中にとけ込む
様に消えた。
「くっ…怪しげな技を…。ならばこれならどうだ!」
今度は高速移動しながら瑠璃子の周囲から気弾を連発した。数十発の気弾が一
度に瑠璃子を襲う!
が、結果は同じだった。
「…それでおしまい?」
瑠璃子が余裕を見せて、微笑む。
「今だ!これでも喰らえ!」
一瞬の隙を見逃さず、柳川は両手から炎を打ち出した。その炎はまるで悪魔の
顔のようにも見える。
だが、炎の先に瑠璃子はいない。
どこだ?…上!さっきの台詞はフェイントだったようだ。
前方ジャンプで炎をかわした瑠璃子は、柳川の目の前に着地すると
「ソウルスパーク」
「ソウルスパーク」
「ソウルスパーク」
「ソウルスパーク」
「ソウルスパーク」
「ソウルスパーク」
「ソウルスパーク」
「ソウルスパーク」
どうやら気弾は消えていたのではなく、瑠璃子のマフラーで吸収していたらし
い。そして、吸収した気弾でパワーアップした電波を連発で柳川にたたき込ん
だから、さすがの柳川でもひとたまりもなかった。

・
・
・

「こ、今度は冥土送りコンボか…。瑠璃子の方の危険度はAだったかも」
モニタで柳川の敗北した場面を見ながら耕一は言った。
「どうします?このままだと彼らにここがに到達するのも時間の問題ですよ」
千鶴が耕一に指示を仰ぐ。
「ああ…」
ヤバい、何か手を考えなければ。耕一は焦った。
「耕一さん、N2爆雷はどうでしょう」
楓が進言する。
「N2爆雷か…それしかないか。よし、千鶴さん。N2爆雷だ」
「は、はい。N2爆雷射出準備!総員対ショック、対閃光防御!」
「了解!N2爆雷射出準備!」
初音はコンソールを操作しつつ、サングラスを掛ける。
「射出!」
千鶴の命令により、N2爆雷は打ち出された。

「お兄ちゃん、しっかり!」
そう言って瑠璃子は拓也を前後左右に思い切り振る。
「る、り、こ、く、る、し、い…」
拓也はマジで苦しがってる。
「あれ、また流れ星?」
瑠璃子が空を見上げると、また何かが飛んで来る。
「違う…長瀬ちゃん?」
「そう。僕さ」
ざしゃあっ…と着地する長瀬祐介。柳川みたいなボケはかまさない。
「どうして、どうしてなの?」
瑠璃子は長瀬がなぜ、ここにいるのかを電波を通して知った。長瀬は対ヒト用
兵器「N2爆雷」別名「Nagase爆雷」としてここに来たのだ。
「今、柏木さんとこでアルバイトしてるんだ。これも仕事なんだ。ごめん」
そう言って長瀬は心の中に隠された、最も危険な爆弾を解除した。
長瀬の周囲にぱちぱちと紫電が走る。
「…滅んでしまえ。…みんな、みんな、みんな滅んでしまえッ!!」

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・

「…モニタ、レーダー回復します」
「『ヒト』は…?」
初音がおそるおそる訊く。
「反応ありません。全滅です」
楓が答える。
「ふぅ。これでもう安心だな…」
耕一が安堵する。
「いえ、あれが最後のヒトとは思えないわ。きっと第2第3のヒトが…」
千鶴がそう言い掛けたそのとき、再び警報が鳴り響いた。
「隆山第壱レーダーに反応。侵入者です」
「言ってるそばから!」

つづく
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どうも、UMAです。

今回のネタは一応ストリートファイターZERO2(とアルファ)とリーフフ
ァイトです。

#月島祐也はスト2ダッシュのベガ
#月島瑠璃子はゼロ2のローズ
#柳川祐也はストIIIの豪鬼

なぜ、彼らが戦うのか?
それは後編で書く(と思う)。ヒントは「今日の日付」です。

ぢゃ、そういうことで。