古(いにしえ) 投稿者:UMA(うま)

「あれ?祐君、MSX片づけたんじゃなかったっけ?」
沙織ちゃんは、単色スプライトの画面を見るなりそう言った。
「え、これはMSXの画面じゃないよ」
「じゃあ、エミュレーション?fMSXかな?」
「違うよ、PSだよ」
「えぇーっ!?PSのエミュレータ?そんなの、あるの?!」
「…あるらしいけど、違うって」

今日僕の家に沙織ちゃん、瑞穂ちゃん、瑠璃子さんの3人が遊びに来たんだ。
そして、部屋に入るなり沙織ちゃんが濃ゆいつっこみを入れたところだ。

「あのう祐介さん、MSXって?」
瑞穂ちゃんが聞いてきた。
「知らない?たしか…この辺に…あ、あったあった、これのことだよ」
そう言って僕はごついキーボードを取り出した。そして、瑞穂ちゃんにこう言
った。
「よし、みずぴー。分析してくれ!」
「了解。…分析完了。CPUはZ80、メモリは128K。MSX2+です」
「どう?瑞穂ちゃん。分かった?」
「…はい」
瑞穂ちゃんは「それくらいならわざわざ調べなくても…」と言いたげな感じで
僕を見ている。だってそれ以上のこと覚えてないんだもん。

「で、このfMSX…じゃなかった、PS版MSXで何が出来るの?」
「だからエミュレーションじゃないって」
僕は聞こえないように「…たぶん」と付け加えた。
「…長瀬ちゃん、マニュアルを読ませて」
そういって瑠璃子さんはCDケースからマニュアルを取り出した。
「ええっと…。メガロムのゲームが1本と、普通のロムのゲームが9本あるの
ね」
瑠璃子さんが簡単に解説する。
「メガロムって…」
そこまで言って、瑞穂ちゃんは口をつぐんだ。また分析させられると思ったよ
うだ。確かにグラ2のロムはあるから分析は出来るけどね。
「…メガロムてのは、1メガビットの超大容量の素子を使ったロムカートリッ
ジのことだよ」
沙織ちゃんが教えてくれた。今時、たかが1メガビットで「超」大容量も無い
と思うが…つっこむのは止めておこう。
「…ねえ、キーボードは?」
「はあ?」
「キーボードよ。やっぱ、グラ2はカーソルキーでプレイしたいしね。あ、あ
と、スピコン((C)SONY)と可変速連射パッドも欲しいかな」
沙織ちゃんは、マジでMSXのつもりで言ってくる。
「…持ってない」
「え〜〜〜〜、ないのぉ〜〜〜?」
「贅沢言わないで。ほら、連射パッドだけはあるからこれで我慢して」
「ぶ〜!」

・
・
・

昔取った杵柄、というべきか。沙織ちゃんはパッドでスイスイとクリアしてい
く。…ところで、僕達何歳だ…?
が、アドバン艦の巨大感応レーザー砲(別名トコロテンレーザー)の前にあえ
なくやられた。
「こんな時、『ガリウス』があれば復活が楽なのにぃ…」
沙織ちゃんは思い切り愚痴る。
「ガリ…」
「みずぴー、分析だっ!」
瑞穂ちゃんが言うが早いか、僕は『ガリウスの迷宮』のロムカートリッジを取
り出した。
「…分析完了。RC749『ガリウスの迷宮』はRC739『ナイトメア魔城
伝説』の続編。2スロット目にそのロムカートリッジを差しておくと、やられ
ても保険カプセルを持ってれば、やられる前の装備に戻せるという、当時のK
社お得意の2スロット仕様の裏技です」
「…という訳さ」
「…」
瑞穂ちゃんは黙り込んだ。
「ねえ、『10倍』か『新10倍』は無いの?」
なんとか復活しようとがんばったけど、ゲームオーバーになった沙織ちゃんが
聞いてきた。
「今のところ無い。っていうか2スロット目ってどうやって再現するんだ?」
「『10倍…』」
「…瑞穂ちゃん、分析、する?」
「…いいです…」
さすがに2回も同じ事をさせられれば、もういいか。
「ねえ長瀬ちゃん、これは?」
今までずっとマニュアルを読んでいた瑠璃子さんが、CDケースの裏を指さし
た。
「え、何?…なんだ、グラ2の画面写真じゃない。これがどうしたの?」
「よく見て」
「?」
瑠璃子さんに言われるまま、よ〜く見た。そして
「あぁっ!!」
僕は大きな声を出した。
「えっ、何?どうしたの?」
「祐介さん、どうしたんですか?」
僕の声で沙織ちゃんと瑞穂ちゃんが驚く。そして、僕と同じように二人がCD
ケースを見る。すると沙織ちゃんも
「あぁっ!!」
と、驚いた。
「え?何なの?」
瑞穂ちゃんは分かってないようだ。
「つまりね…」
沙織ちゃんが説明してくれるようだ。
「ここにペンギン型のオプションと、魚型赤カプセルが写ってるでしょ。つま
り、2スロット目に『夢大陸アドベンチャー』を差した状態って事なのよ」
「ふーん?」
まだ瑞穂ちゃんは分からない。
「だ・か・ら!2スロット目にカセットを差した裏技かなんかがあるってこと
よ」
「え、そうなの?私はてっきりPSを2台連結するんじゃないかな、って思っ
たんだけど違うのかな」
「…瑞穂ちゃん、ちょっと無茶だよ」
これを書いてる時点(1/27)では、まだ裏技は公表されてない。
「そう?強引にRS−232CケーブルかなんかでMSXと繋ぐっていうのよ
りは現実的な裏技と思うけど」
「どっちもどっちやっ!!」
僕は電波を帯びた裏拳で瑞穂ちゃんにつっこんだ。
「きゃふっ!」
瑞穂ちゃんは一撃で伸びた。まだ電波に免疫がないのかな、と思ったがまあい
いや。
電波で壊れた瑞穂ちゃんを放っておいて、僕たちは「イーガー皇帝の逆襲」で
対戦することにした。

<終劇>

瑞穂「私って一体…」
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どうも、UMAです。
今回のネタは「コナミアンティークスMSXコレクションVol.2」です。
オリジナルのゲームは最新のグラディウス2ですら12年前なので、現役高校
生の祐介達が当時を知ってるハズもありませんけどね(笑)

と、ゆーわけでこの辺で。