新年特大号その1 戦い後編 投稿者:UMA(うま)


あらすじ
HByHに参加した葵は、自分の対戦相手マルチの持つ自分の資料にあること
ない事を書かれてあることを知って大会本部に抗議に行く。
大会本部には長岡志保以外の全員が同じ理由で集まっていて、どうやら長岡が
書いたシロモノだと判明。
だが、長岡の単独犯行かと思われたが、実は黒幕が…。

「あ、あの娘は…!?」

「私が今回の黒幕です」
少女は言った。たしか柏木家の四女、初音ちゃんだ。案の定、さっきと身長が
違う。もっと言えば、筋骨隆々でもない。
「このハートバイハートは…」
「みんな、殺っちゃって!」
「Yes,Sir!!」
初音ちゃんの台詞を遮るようなコマンダー保科の号令の元、全員でLV3の攻
撃をする。
「あの、あの、あの…」
パニくってる初音ちゃんの声が聞こえた。様な気がするが、直後の爆発音でか
き消される。

ちゅどーーーーーん。

「あの〜、前口上はちゃんと聞くのが戦隊物のセオリーじゃないんですか?過
疎レンジャーの敵のなんとかさんが言ってましたけどぉ」
びっくりしたマルチちゃんが言う。
「マルチちゃん、この世は『勝った者が正義』なんや。負け犬のたわごとに耳
貸したらアカンよ」と、マルチちゃんを諭すように保科先輩が言う。
「Yes!『勝った者勝ち』とも言うネ!」宮内先輩が相づちを打つ。
そ、そういうもんかなぁ…。あ、そうだ。初音ちゃんは?煙幕でよく見えない
けど大丈夫なの?
「8人でどつきまわせば、さすがにひとたまりもないでしょう…」
琴音ちゃんが言う。ど、どつきまわせばって、あーた…。

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・
・

暫くして煙りが晴れてきた。
「!」
そこには無傷で立ってる初音ちゃんがいた。ゲージの色が変わっていないのが
無傷である証拠だ。
「そ、そんな阿呆な…」
「Oh,Jesus…」
二人が驚く。当然だ、今の攻撃の全てをブロッキングで防ぐのは人間業ではな
い。
「ぬん!」
驚いている二人めがけて初音ちゃんが特大のねずみ花火を放り投げる。

どっか〜〜〜〜ん!!

「きゃあああああああ!」
「Noooooooo!」
一撃でダウンする二人。一体彼女は何者…?本当に初音ちゃんなの?
「こざかしい!その程度の腕でこの私を倒そうなんざ46億年早いワ!!しか
も前口上の途中に攻撃するとは言語道断!!」
この娘、本当にあの初音ちゃん…?いえ、違うわ。彼女の「気」の感じが先ほ
どまでとは違う、別人の「気」になっているのに気が付いた。
「みんな!あれは初音ちゃんではありません、油断しないで下さい!」
私が叫ぶ。
「ああ〜ん?私が初音じゃないやとコラ。私は柏木初音本人や。なめとったら
ドタマかち割って脳味噌掻き出すぞ!」
一気に彼女の「気」が膨れ上がる。
「こ、この「気」は…鬼?!じゃあ本当に初音ちゃん?」
「おうよ、正真正銘柏木初音だ!さっきは鬼の力を押さえていたからちょっと
危なかったが、今は偽善女がくれた特製キノコのおかげで鬼の力がフルに使え
るぜ!」びしっと親指を立てる初音ちゃん…改めヤンキー初音。
鬼…それは、柏木の一族に受け継がれた呪われた鬼の力。その力は計り知れな
い…。って何のんきに解説してるの、私は?
と、そのとき、誰かに肩を叩かれた。

とんとん…。
「え?誰?」
ぷす。
振り向くとほっぺたに指が刺さった。…誰だこの忙しい時に気の抜けるような
ギャグをかますのは…って来栖川先輩じゃないですか。
「…………」
「え?さっきから呼んでるのに気が付かなかったから?そりゃ、先輩の声は大
きい方じゃありませんからね。え?これをマルチに取り付けてください?」
…こくこく。
そういって来栖川先輩はアイテムを取り出した。どこに持っていたんだろう。
「これって、ただの赤いランドセルみたいですけど。え?HM−12用のオプ
ションパーツ『わくわく殺戮セットDX』ですって?」
ランドセル型なのはカモフラージュらしい。ついでに言うと、縦笛のように見
えるのはHM−13の衛星通信機能同等のアンテナだ。
「マルチちゃん、ちょっとこれ付けてみて」
「はいです!」
かちゃかちゃとマルチちゃんに装備する。と、言ってもただ背負わせるだけだ
けど。
ランドセルを背負ったマルチちゃんを眺める。
…誰がデザインしたのかは知らないが、このランドセルはマルチちゃんによく
似合ってるなぁ…。
「…新しいデバイスを発見。ドライバをインストールします…」
マルチちゃんはランドセル用のドライバを組み込んだ。ややあって
「ぴぴぴぴぴぴ!」
いきなりマルチちゃんが叫んだ。
何、壊れたの?え、違う?来栖川先輩、どういうことですか?
「…………」
「『わくわく殺戮セットDX』のソフトが立ち上がっただけ?戦闘のプロフェ
ッショナルですから安心して下さい?」
こくこく。
戦闘のプロ…って巻き込まれたら私たちもヤバイような…。

マルチちゃんは物陰に隠れていた理緒ちゃんを見つけるとランドセルのバーニ
ア全開で近寄った。どうやら最初のターゲットらしい。
「ぼてくりこかすぞコラ!」
「ええ〜ん、私の出番これだけぇぇぇぇ?」
「しゃあしいったい!喰らえっ!!!」
前ダッシュ右アッパーからエリアルレイブ、そして空中で天魔豪斬空でフィニ
ッシュだ。

「…なんか暴走してません?」
「…………」
「え?HM−12用なので、プロトタイプのOSだと不具合があるのかも知れ
ませんですって?」
おーい、そういうことは先に言ってよぉぉぉ。

理緒ちゃんをぼこぼこにしたマルチちゃん改め真マルチは、新たなターゲット
としてヤンキー初音に狙いを定めた。
交渉拳×2発からロケットパンチ、そして一気に間合いを詰める前ダッシュ。
真マルチの連続攻撃を受け、さすがのヤンキー初音でも防戦一方だ。
だが、初音ちゃんが反撃に転じた。ヤンキー初音は真マルチに向かってジャン
プした。そして、めくりぎみに出したジャンプ中Kからアッパー決裂拳へ繋い
で、キャンセルで滅殺交渉拳を撃った。

どげげげげし!8HIT!!

ふっとぶ真マルチ。だがダウン回避で硬直中のヤンキー初音の後ろへ回った真
マルチは滅殺交渉拳で反撃した。しかもこっちはレーザー状になってる!!流
石はロボット。エフェクトが派手だ。

びびびびびびしっ!!18HIT!!

「ぬぅ、お主なかなかやるな…!」
「『滅殺モード作動中』の私に勝つげな、100億年早いったい!」
「あんだとコラ!フカシこいとったらシバくぞ!」
「やれるもんならな!」
「殺ったる!!」

そして二人は再び拳を交えた。

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人を越えた者同士の戦いを見ながら葵は、HByHに参加したことを死ぬほど
後悔していた。

終劇
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あけましておめでとうございます、UMAです。

今年一本目は、年末特大号の「戦い」の後編です。

ラスボスが初音ちゃんなんで断腸の思いで凶悪化したんですが、一度腸を切っ
てしまえば、後はなし崩し的にマルチも凶悪化してしまったという…(^^;;;

後半のヤンキー初音 VS 真マルチ戦は、某格闘ゲームの滅殺親父をモチーフに
していて、「真豪鬼 VS メカ豪鬼」というドリームマッチを想定してます(笑)
ただ、メカ豪鬼の必殺技の呼称が不明なんで、同種類の豪鬼の技で代用してい
ます。

今回は、もう一本ありますのであとがきはそっちってことで。

でわでわ〜