KOBE ルミナリエ 投稿者:UMA(うま)


「うわぁ…」
マルチとあかりが感嘆の声を挙げる。
「どうだ、マルチ。夏に隆山温泉で見た花火と、どっちが綺麗だ?」
「ええっと、ええっと…」
「そっか、どっちも綺麗か」
「はい」
マルチは元気よく答えた。

今、俺とあかり、マルチの3人は、神戸でやってる『ルミナリエ』ってやつを
見に来ている。これは、震災犠牲者へのの鎮魂と復興・再生への夢と希望をこ
めたもので、今年で3回目を迎える港町神戸の冬の風物詩だ。
ちなみに”ルミナリエ”とはイタリア語の「イルミナチオーネ ペル フェス
テ(祝祭のためのイルミネーション)」から生まれた言葉だ。

「ねえ浩之ちゃん、何か食べる?」
ルミナリエの光の回廊を抜けたところにある、東遊園地で休んでいるとあかり
がそう言った。
「ああ、そうだな。んーっと、梅ケ枝餅」
「…浩之ちゃん。ここ神戸よね?」
「冗談だ」
「…。あ、浩之ちゃん、あそこ見て」
あかりがある人物を指さす。
「あれは…。コーイチさん?」
柏木耕一。夏に隆山温泉でお世話になった鬼…もとい人だ。向こうもこっちに
気が付いたようだ。
「お久しぶりっす、コーイチさん」
「やあ、浩之。あかりちゃんにマルチちゃんも一緒かい」
あかりとマルチが会釈をする。
「コーイチさんは、誰と一緒に?」
「ああ?俺か」
コーイチさんがすっと指さした先には、柏木4姉妹が揃ってたこ焼き屋の前に
いる。
「初音ちゃんだけを誘ったつもりだったんだが…」
コーイチさんが苦笑いする。
「コーイチさんも大変そうですね」
「はっはっはっ…」
笑いが乾いてるよ。
「あ、あかりさん、マルチちゃん!」
四女の初音ちゃんがこっちをみて手を振ってる。

・
・
・

「それでね…」
「へー…」
千鶴・梓・楓・初音・あかり・マルチが話し込んでいるうちに話が弾んで、い
つのまにか男二人は話の輪からはずれていた。女の子はよく喋るなぁ。
しかたないので俺達は、缶コーヒーでも飲みながらぼーっと二人で人の流れで
も眺めている。
…あ、祐介と沙織ちゃんだ
…そっちには月島兄妹もいる
…あっちには来栖川姉妹…どっかで見た人が多いなぁ。ここ、神戸だよな?
…今度はセバスチャンと雅史か…ってちょっとまて!
「おい!雅史!!」
「あ、浩之」
「お久しぶりです、藤田様」とセバスチャン。が、俺はセバスチャンを無視し
て雅史に言い寄る。
「『あ、浩之』じゃねえよ。なんでセバスチャンといるんだ?しかも手ぇ繋い
で!」
「どうしたの浩之ちゃん?大声だして」
俺の声に気が付いたあかりが声を掛ける。
「…浩之。僕たちの関係、もう終わったんだよね…」
雅史は恐ろしい事を口走った。
「はあ?雅史、おまえ何言ってる…」
「えぇぇぇぇっ!浩之ちゃん、ホモだったのぉぉぉ!!!!」
俺の台詞をかき消すようにあかりが思いっっっっっっ切り大きな声で驚く。
「俺は違うって!!」
「…もう愛してくれないんだね。だから…」
セバスチャンの腕に寄り添うようにして雅史が言う。
「いやあぁぁぁっ浩之ちゃん、男同士だなんてぇぇぇ!!!」
「お、俺は断じてホモじゃねえって!」
「本当に?」
あかりが訝しげに聞く。
「ああ」
「…じゃあ、ロリコン?」
「ああ」
あ。あかりの誘導尋問(そうか?)にまんまと引っかかる俺。
「…コホン。あの〜、あかりさん?今のは…がはっ」
あかりは無言のまま右ボディブローをかました。くの字になる俺。
そして、間髪入れず左アッパーと左膝が俺の顎と鳩尾を直撃した。真上に吹き
飛ばされる俺。
さらに、俺が落ちてくるのを見計らったように、強の波動拳が追い打ちする。

どさっ…。地面に激突する俺。

あかり…。ホモだと大騒ぎするくせに、ロリコンだと無言で撲殺かい…。あか
りのそんな一面が見られるとは、思わなかったぜ…。
そんなことを考えながらクリスマスの夜は更けていった。

終劇
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どうも、UMAです。クリスマス特別編ってことで”ルミナリエ”をネタにし
てみましたが、いかがでしょうか(時事ネタだし、いち神戸市民だし、ってこ
とでね)。こないだの「血」は季節が思いっきり夏だったっけ。

あと、皆さん儂の名前を”ゆーま”なんてハイカラな読み方をされてるよーな
んですが、本当は”うま”って読むんだよーってことで、名前もちょっぴり変
えてみました。
#でも、”うまうま”って読まれそうだな(笑)暫くしたら戻そっかな?