映画の後はカラオケでGO!! 投稿者: UMA(うま)

「ふぇぇぇん、良かったですぅぅぅ」
映画館から出るなり、マルチが泣きながら言う。
「そうね。くすん…」
横のあかりもハンカチ片手に言う。
「ったく、二人して泣きやがって…」
そう言いながらも、俺は「しょうがないなぁ」といった目で二人を見る。

俺は、あかりとマルチを連れてアカデミー賞を取った映画、『タイタニック』
を見たところだ。
泣きながら歩く二人を連れていると、道の向こうからどっかで見た人影が歩い
て来るのに気がついた。

「ゲキガン、良かったねぇ」
「やっぱ、ロボット物のOPは必殺技連呼が基本って再認識するよね」
「あ、祐君もそう思う?」
「うん」

…この濃い会話は間違いない、祐介達だ。おーい、祐介!

「やあ、浩之。それにあかりちゃん、マルチちゃんも」
「よう祐介。二人でデートか?」
「そうだよ。浩之の方は両手に花だね」
「おう、いーだろー」

ん?またどっかでみた人影が…。今度はコーイチさんか?

「すっごく懐かしいわよね、999って」
「ああ、17年ぶりだからな。鉄郎が原作に近い、ぶっさいくな顔なのも懐か
しいぜ」
「17年ぶりでも、時代設定はアンドロメダから帰ってきてから1年後みたい
よ」

…ふーんそうなのかって、通り過ぎてるじゃねぇか。
おーい、コーイチさーん。

「ん?おう、浩之じゃないか。祐介も」
「お久しぶりっす」
「こんにちわ」
簡単にあいさつを交わす俺達。
「そう言えば、耕一さん達は何でここに?」
素朴な疑問を抱いた祐介が聞く。
「ああ、俺は初音ちゃんと映画を見に来たんだ。『長靴を履いた猫』と『銀河
鉄道999』だよね」
と、コーイチさん。横で嬉しそうにうなずく初音ちゃん。
「俺んとこはあかりとマルチをつれて『タイタニック』を見たところだ」
と、俺。
「偶然ですね、僕も映画を見に来てたんですよ。僕たちが見てきたのは『ゲキ
ガンガー3』ね」
と、祐介。…ゲキガンってOVAじゃなかったか?
「本当、偶然よね」初音ちゃんがくすくすと笑う。
「じゃあ、偶然ついでにどこか、サテンにでも行かないか?」
耕一さんがそれをフォローする形でサテン行きを提案する。
「あ、カラオケなんてどう?今の時間ならすいてると思うし」
沙織ちゃんが案を出す。
結局、全員一致でカラオケに行くことになった。

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俺達はボックスの部屋に入った。10人用らしく、7人だとちょっと広い。
早速祐介がリモコンから何か入力する。
「祐介、何入力したんだ?」
「TV版の999だよ。耕一さん達は今日、映画見たんでしたっけ?」
「おう。それにしてもTV版とは懐かしいなぁ」
そんな会話をしてるうちにホストからデータが配信されて、イントロが流れ出
す。

『汽車はぁぁぁ 闇を抜ぅけて
 光の海へぇぇぇ

 ゆくがぁぁぁおとこのぉぉぉド根性ぉぉぉ…』

「…ってオイ。途中から『巨人の星』に変わってるぞ」
思わずソファからずり落ちそうになる俺。
「でも、放送当時はこう歌ってなかったっけ?」
「そこって『夢が 広がる〜』だろ?『ゆ』しか合ってないじゃねぇか」
「まあまあ、二人とも。そんなネタなら俺もあるぜ」
そう言ってコーイチさんはリモコンから曲番号を入力する。流れ出したイント
ロは「TOKIO」だった。

『ホラを吹く!デマが飛ぶ!!
 インチキ外人 客だます!
 火を噴いて 灰になる
 FUKUOKAタワーが燃え上がる!

 MO−MO−CHI!!

 百道で迷子が泣いたまま!

 MO−MO−CHI!!

 百道はよかトピア〜

 海を見下ろす 福岡タワーに
 長蛇の列出来る

 太平 洋子に、シェイクハンズ
 吉野ヶ里跡に負けるな がんばれー!

 MO−MO−CHI!!

 百道で迷子が泣いたまま!

 MO−MO−CHI!!

 百道はよかトピア〜』

「…ってコーイチさん、なんだそりゃ!?」
コーラを吹き出しそうになった俺は、むせながら言う。
「何…って、『TOKIO』じゃないか」
しれっと答えるコーイチさん。
「その割には『百道』ってローカルな地名を連呼してなかったか?」
「気のせいだよ、気のせい」
ったく、この鬼野郎は…。
「たしか、よかトピアって10年くらい前よね。お兄ちゃん?」
「ああ、まだ、福岡ドームが出来る前のことだからな。もうそれくらいになる
のかな」

「じゃ、次私ね」
流れ出したイントロは『キャンディ・キャンディの歌』だった。初音ちゃんら
しい選曲だけど、この娘もコーイチさんと同じ「鬼」だ。侮れない。

『売れなく、たって 気にしないわ〜
 ドスブイ、だってだって お気に入り〜
 ハードの改造大好き クロックアップも大好き
 私は 私は ロクハチユーザー!

 ひとりぼっちでいると ちょっぴりさみしい
 そんな時こう言うの ロクハチ見つめて〜

 『動いて〜動いて〜、動いてロクハチぃぃぃ』
 ハングなんてサヨナラ、ね ロクハチユーザー』

「おーい、初音ちゃぁぁぁん」
やっぱり、濃い替え歌だった。
「…すっごい、寂しい歌ですね…」沙織ちゃんが泣きながら言う。
「うん。特に『ひとりぼっちでいると』の辺りが現状のユーザーを見事に表現
してていいね」祐介が言う。
「これはね、お兄ちゃんに教えてもらったんだよ。ね、お兄ちゃん」
「ああ。ちなみに、『ロクハチユーザーの歌』って言うんだぜ」
こいつら、相変わらず濃いぜ…。

ふとモニタに目をやると、次は「おもちゃのチャチャチャ」らしい。誰が入力
したんだ?
「あ、私ですぅ」マルチが手を挙げる。
なあんだ、マルチか。
濃い替え歌が続いたせいもあるが「マルチが歌う童謡」ってことでなんとなく
ほっとする。

『八女茶の茶茶茶 八女茶の茶茶茶
 茶茶茶 八女茶の茶 茶 茶

 空にきらきら お星様
 みんなすやすや眠る頃

 八女茶は箱に詰められて
 出荷されるよ 茶 茶 茶

 八女茶の茶茶茶 八女茶の茶茶茶
 茶茶茶 八女茶の茶 茶 茶』

ほっとしたのは気のせいだったようだ…。
「おい!マルチ!!」
「はい?何でしょう、浩之さん」
きょとんとして俺を見るマルチ。
「何…って歌詞が『かなり』違うぞ、それ」
「でも、私のメモリバンクにはそう、記録されてるんですけど…。私のデータ
がおかしいんでしょうか?」
マルチは悲しそうな目で俺を見る。
「いや、マルチのせいじゃないぞ。たぶん、長瀬のおっさんのせいだろうから
な。ったく、あのおっさん。なんつーローカルなデータを入れるんだ」
ふと、ある替え歌を思いついた俺は、リモコンからある曲を入力する。

そうこうしてるうちに次の曲のイントロが流れ出す。これは…「魔法使いサリ
ー」のオープニング?
「はーい、次あたしー!」
沙織ちゃんは、そう言ってマイクを取る。
「沙織ちゃん、『魔法使い○リン』はダメだよ、あれ、危なすぎるから」
「大丈夫だって、祐君。ちゃんと考えてるから」
そう言って祐介にウインクする沙織ちゃん。
サ○ンより大丈夫?何が、どう、大丈夫なんだろ…?

『マハリト マダルト ヤンバラヤンヤンヤン
 マカニト マリクト ヤンバラヤンヤンヤン

 魔法の国からやってきた
 ちょっとダンディなおじいさん

 ワードナ ワードナ

 魔法の力で 国中を
 破壊と絶望を振りまくの

 ワードナ ワードナ

 魔法使い ワードナ』

「なぁんだ、『魔法使いワードナ』だったんだ」
「へっへーん。だから言ったでしょ、祐君」
沙織ちゃんはピースサインを出してる。
「いやー、みんな『濃い』なぁ」
感心したように耕一さんが言う。
そういう耕一さんの替え歌も、結構濃いかったと思うが…。
「これは…。あ、『ドラえもんの歌』ね。誰かしら」
あかりが流れ出したイントロを聞いて言う。おっと、どさくさに紛れて俺が入
力したんだった。
「ああ、俺だ。マイク回してくれ」
マイクを受け取った俺は歌い出した。

『あんな娘といいな できたらいいな…』

俺がその続きを歌うことはなかった。
なぜなら、あかりのジャンプキックから弱中強パンチのチェーンコンボキャン
セル、瞬獄殺で倒されたからだ。

・
・
・

「う、うーん…」
俺が気が付いたとき、もうみんな帰るところだった。気が付いたと言っても、
瞬獄殺のダメージがまだ抜けきってないので誰かに支えてもらわないとまとも
に歩けない状態だ。
「浩之ちゃん、大丈夫?」
あかりが肩を支えながら心配そうに俺の顔をのぞき込む。ったく、誰が瞬獄殺
をかましたんだか…。
「それにしてもあかりちゃん、強いなあ。もしかしたら、千鶴さんより強いか
もな」コーイチさんが笑いながら言う。
「…私が、何ですって?耕一さん」
「ち、千鶴さん?何でここに!?」
コーイチさんは思い切り驚く。いきなり現れた女性の名前は柏木千鶴。初音ち
ゃんの姉で鬼の偽善者という通り名を持つ鶴木屋旅館の会長さんだ。
「駅前までお買い物に来たら、耕一さんと初音を見つけたからよ。それより、
私が何ですって?」そういってコーイチさんに詰め寄る千鶴さん。
「いや、その…」一歩、後ずさりするコーイチさん。
「何ですか?はっきりおっしゃって下さい」さらに詰め寄る千鶴さん。そのま
ま耕一さんの首に手を回し、「くいっ」と首を曲げる。
「きゅぅ!」あっさりと落ちるコーイチさん。
「あらあら、耕一さん。こんなところで寝たら風邪引きますよ。初音、耕一さ
んを家まで運んであげて」
「う、うん…」目の前で起きた、姉の信じられない行動を目の当たりにした初
音ちゃんは上の空で返事をしてコーイチさんを引きずっていった。
「では、私たちは帰りますので」丁重に礼をする千鶴さんだった。

「千鶴さんはさすが、鬼の頭領だけあるぜ…。あかり、お前の負けだ。よかっ
たな」
俺はあかりに肩を支えられたまま、あかりに言った。
「浩之ちゃん、こんなので誉められても嬉しくない…」
くすん、とあかりは少し悲しそうな顔をする。が、次の瞬間あかりは俺の肩を
支えたまま、左膝を俺の腹に入れる。さらに、俺が前のめりになった所を背中
から肘をたたき込んだ。
「げほっ…!」そのまま地面に倒れ込む俺。
薄れゆく意識の中、俺は思った。
やっぱ、千鶴さんよりあかりの方が恐いぞ…と。

<おわり>
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どうも、「美優里ちゃんとの愛の記憶が消えて思い切りブルー入ってます」の
UMAです。

#サターンの内蔵電池が切れてデータが消えたの…(T_T)

それはともかく。今回のネタは読んでの通り、替え歌歌合戦です。とは言え、
元ネタが古すぎて「MO−MO−CHI」「八女茶の茶茶茶」の歌詞はウロ覚
えですが。

書き終わってみると、あかりが歌ってないのに気がついた…。書いてる途中ま
では歌うシーンがあったんですけどね。
長くなってきたんで泣く泣く削除(T_T)

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜!