血。その2 投稿者:UMA


あらすじ。
ガディムを倒した。だが、鬼の血を引く6人は、その余波に巻き込まれて異世
界へと吹き飛ばされた。現在、柏木耕一・楓・初音と、柏木千鶴・梓・柳川祐
也にそれぞれ分かれて行動中だ。



「仮にこの世界に来ていたとしても、柏木耕一以外は既に魔物に食われたのか
も…」
「そんなことありません!楓も初音も、柏木の娘です!!」
柳川の言葉を遮るように千鶴が大声で叫ぶ。

「!今の『気』は…千鶴さん?」
耕一お兄ちゃんが言う。楓お姉ちゃんも無言でうなずいている。
「よし、こっちだ。いくぞ、二人とも」
「そうね、ここでじっと救援を待つよりも千鶴お姉ちゃんも一緒の方が心強い
ものね」
私たちは千鶴お姉ちゃんの気を辿って移動した。その途中幾度と無く魔界の異
形の動物が襲ってきたが、私たちはそれを撃退した。
そして、森を抜けると、見慣れた人影を見つけた。千鶴お姉ちゃんと梓お姉ち
ゃんだった。
「お姉ちゃ〜ん!!!」私と楓お姉ちゃんは駆け出していた。

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「無事だったか、柏木耕一」
と柳川。
「まあな。そっちも元気そうだな」
と耕一。
耕一と柳川は、柏木4姉妹から少し離れた位置で互いの無事を確認し合った。
「…家族というのはいいものだな」
互いに抱き合う柏木4姉妹を見て柳川がポツリと言った。その表情はどこか寂
しげだ。
「へえ、お前の口からそんな台詞が出るとは意外だな」
耕一から見れば、柳川は狩猟者としてのイメージが強く、家族やそんなものを
気にする奴とは思えないからだ。
「『意外』か…。そうかも知れないな」
もっとも、耕一が柳川の血筋を知る由もないので仕方のないことだが。

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「さて、感動の再会はその辺にして、これからのことについて考えないとな」
柳川刑事が言った。さっき耕一お兄ちゃんと話していた時の寂しげな表情は消
えていつもの「狩猟者」の表情に戻っている。
「そうですね」
千鶴お姉ちゃんが答える。毅然とした態度はいつもの千鶴お姉ちゃんのそれに
戻っている。でも、これは私たち妹に不安がらせないため、と思う。
「これから、って言ってもどうやって元の世界に戻るんだ?それを考えないと
いけないだろ?」
耕一お兄ちゃんが言う。
「来栖川芹香さんが召喚するのを待つしかないのかな…」
楓お姉ちゃんが聞く。
「でも、どうやって『ここ』に私達がいることを伝えるの?」
「…………」
「…………」
「…………」
さすがに、自力でこっちの世界に来た訳じゃない私達にはどうしようもなかっ
た。
諦めかけたそのとき、近くの空間に異変が起きた。ぐにゃりと安っぽいCGの
様に風景が歪んだかと思うとそこから何かが現れようとしている。
何か来る…!全員が身構える。耕一お兄ちゃん達はすでに鬼の力を解放して、
その空間を睨み付けている。

ぬっ…

「そこ」からはまず剣の切っ先が現れた。あれ?どっかで見たような剣…。
そして、その剣を持った、どっかでみた女性が現れた。
「…んしょっと。ああっ、やっと見つけた!」
ティリアさんだった。

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「ごめんね。あいつを倒したあと、異次元に封印しようとしたら『また』鬼の
力に過敏に反応したみたいで」
後頭部を掻きながらティリアさんは言った。
私たちはティリアさんと来栖川さんの描いた魔法陣を通って元の世界に戻って
これて、今は鶴木屋旅館のロビーにいて全員が集まっている。
「…やっぱ、そのオーブのカケラって壊れてないか」
藤田さんが言う。前にもこれが誤動作して私たち姉妹と耕一お兄ちゃんが藤田
さん達と戦ったからだ。
「『性能がいい』って言って欲しいわ!」
「まあまあ、二人とも。今回はその反応がよすぎる『おかげ』で柏木さんたち
が見つかったんですから」
月島さんが仲裁に入る。
「…それって褒めてるの?」
ティリアさんがジト目で睨み付ける。
「あ…。いや、その…。と、とにかく、全員無事に戻れたんですからよかった
のではないですか」
「そうそう。みんな無事だったんだから、それでいいじゃない?」
芹香綾香さんがそう言った。うまく問題がはぐらかされた様な気がするけど。
ちらっと見渡すと、みな一様にうなずいてる。
「…じゃ、全員無事なのとガディムを倒したのを祝って宴会せえへん?」
保科さんが一升瓶片手に言った。どっから持ってきたんだろ?

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…その夜、鶴木屋では、全員が参加しての盛大なパーティが開かれた。

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どうも、UMAです。
今回は「血」の続編です。かなり展開が早いですが、気のせいです(オイ)

前回、「血」はLF97のその後って書いたけど、正確には「ラスボスを倒し
た直後からエンディングに至るまで」に相当します。極力ネタバレにならない
ように気を付けたつもりですが、固有名詞などは仕方なく使用しているため、
そのあたりはネタバレになったかも知れませんけどね。