「…ね、はつね。起きて、初音…」 う、うーん。私を呼ぶのは、誰? お姉ちゃん…?楓お姉ちゃんなの? 私は目を開けた。目の前には心配そうに見つめる姉、楓がいる。 「どうしたの、お姉ちゃん」 「よかった。無事みたいね」 「え?大丈夫?…ってどういうこと?」 私の問いには答えず、楓お姉ちゃんは厳しい表情のまま言った。「初音。周り をよく見て」、と。 周り?どういうことなの?言われるまま私は周りを見渡した。 「!」 ここは…どこ?私は驚愕した。 「…どうやら私たち、ガディムを倒した時に柏木の血のせいで一緒に魔界へ飛 ばされたみたいなの。ただ、姉さん達や耕一さんがこっちの世界に飛ばされた のかどうか、それは分からないけど…」 確かにこの森の雰囲気は初音達がいた隆山のそれとは大きく異なる。あたりを 埋め尽くす見たことのない木々。そして、人間のものとも、獣のものとも分か らぬ殺気に満ちた森…。初音でもそれくらいは感じとっていた。が、それを認 めるのが怖かった。 「か…楓お姉ちゃん…」 心細くなった私はお姉ちゃんにしがみついた。 「大丈夫…大丈夫よ、初音…」 ぎゅっと妹を抱きしめる楓。 ひゅー、がさがさがさ…。 風が吹いた。そのせいで草が音を立てる。驚いてぎゅっと抱きしめ合う二人。 「ななな、何…?」 私は、恐怖で震えながら姉に聞いた。 「た、ただの風よ…」 そう答える楓の声も震えていた。 がさがさがさ…。 反対側からも音がした。こっちは明らかに風のせいではない。 何かが来る!二人は恐怖した。初音を自分の後ろに回し、じっと音のした方向 を見つめる楓。楓は、普段は頼りになるとは言い難い姉だが、こういう時は姉 らしく妹を守ってくれる。 厳しい表情でいる楓。だが、次の瞬間安堵の表情に変わった。 「初音ちゃん?それに楓ちゃんも?」現れたのは柏木耕一だったのだ。 「耕一兄ちゃ〜〜ん!」 「耕一さ〜ん」 二人は泣きながら耕一に抱きついた。 ・ ・ ・ 「…そうか。二人だけか…」 耕一兄ちゃんが言う。 楓お姉ちゃんがこっちの事情を説明したけど、耕一兄ちゃんは「魔界」という 言葉を聞いても笑いもせずに真剣に聞いていた。 「俺もここへ来るまで少し歩いたけど、ここは俺達の世界とは違う世界…楓ち ゃんのいう魔界に間違いないだろうな」 …やっぱり。頭では分かっているけど心では理解したくない現実…。 「ま、ここがどこであれ、俺達の鬼の力をもってすればモンスターが襲ってき ても負けるはずないからな。千鶴さんや梓、それに柳川なら特に大丈夫だろ? ってことで俺達はゆっくりと救援が来るのを待とうか?」 暗くなった場を和ませようと耕一兄ちゃんが言う。 「そ、そうですよね。救援も藤田さんのお友達の…ええっと…オカルト好きの …」 「…来栖川芹香さん?」楓お姉ちゃんがフォローする。 「そう、芹香お姉ちゃん。あの人が現実世界に私達を『召喚』して引き戻して くれるから、大丈夫ですよね」 私も努めて明るく答えた。 ・ ・ ・ 一方、その頃。 「かえでぇぇぇぇぇぇ!」 「はつねぇぇぇぇぇぇ!」 「かしわぎぃぃぃぃぃ!」 千鶴と梓と、なぜか柳川だ。どうやら、彼女らも『魔界』に飛ばされていたよ うだ。千鶴達は自分たち以外の姉妹と耕一を探していると、柳川が見つかった ので千鶴の眼力(というかガンを飛ばして)で従えている。 「…どうやら鬼の血を引いていても、俺達以外はこの世界には来れなかったよ うだな。逆に言えば俺達以外は狩猟者たる資格がない、ということか」 柳川は、偶然とはいえ鬼の血で魔界に来たことを狩猟者としての証のように言 う。 「うっさい!てめえ、耕一に殺されかけたのを忘れたのか?あたし達が来てい て、あいつが来てないはずがない!!」 梓だ。かなり苛立ってるのが分かる。 「そうです。楓や初音だって潜在的な力は私たちと同等なんですよ」 と千鶴。 「しかし、これだけ探していないのであれば『いない』と断言できるのではな いのか?」 柳川が言う。確かに、千鶴と梓が捜索を開始してすでに3時間が過ぎようとし ているが、その間柳川を見つけただけだ。 「それに奴らが、現実世界にいるのならそれでいいじゃないか。あっちは平和 ボケ出来るほど安全だ、心配する必要も無かろう?」 「で、でもよう…」 「仮にこの世界に来ていたとしても、柏木耕一以外は既に魔物に食われたのか も…」 「そんなことありません!楓も初音も、柏木の娘です!!」 柳川の言葉を遮るように千鶴が大声で叫ぶ。 ばさばさばさ…。 魔界の鳥達が千鶴の怒気に反応して一斉に飛んでいった。 楓…初音…耕一さん…。どこにいるの? ---------------------------------------------------------------------- どうもUMAです。 今回のネタはリーフファイトです。もっとも本編とは関係ない、「その後の」 リーフファイトですけどね。←じゃあ「ネタ」やないやん(笑) コットン編で楓達をけちょんけちょんに扱ったんで、今回はシリアスに行って みました。ただ、儂は根が「お笑い系」なんでちゃんとまとまるか心配です。 …って、それ以前に続ける気か>儂