ねっとりさーふ 投稿者:UMA(うま)

「あかり、『パソ通』って知ってるか?」
「うん。ニィパッパッモデムでやってるわよ。今はゲイツ窓95でやってるけ
ど、確か…まだX68にも環境は残ってるはずよ」
「…。じゃあ、『いんたぁねっと』ってしってるか?」
「名前は聞いたことあるんだけど…よく知らない。ごめんね、浩之ちゃん」
「こんなバカに謝る必要ないわよ。いいわ、歩く『インターネット』の呼び声
の高い私が教えてあげるわ。インターネットってのはね『複数のネットワーク
同士を相互接続した世界規模の通信ネットワーク』の事でしょ。常識よ、ジョ
ーシキ!」
志保がフォローする。フォローというより「自慢」にも聞こえるが、これが彼
女の芸風だ。

俺は、あかり・志保・雅史の4人で一緒に日本橋のでんでんタウンを歩いてる
所だ。前々から「インターネット」ってのに興味はあったが先立つものがなか
った(マルチ積み立て)のと、パソコン自体がよくわからなかったこともあっ
て、今まで手が出せなかったのだ。
もっとも、パソコンの知識は「立ち上げは電源入れて、立ち下げは『Windows
の終了』をクリック」程度だが。
志保曰く「それだけ使えれば大丈夫!明日から立派なネット猿になれるわよ」
だそうだ。そんな志保の根拠のない保証をされたのが、インターネットをやろ
うと思ったきっかけだ。

「で、まず何が要るんだ?」
俺達は大手家電ショップに入った。志保が言うには「どすぶい屋」って所の方
がいろいろなパーツが手に入って便利らしい。
が、その分知識も必要らしいので、無知な俺は無難に家電ショップに入った訳
だ。
「まずは、パソコン本体よ」
「お、そうか。それが無いと話にならねぇな」
「ねえ志保ちゃん、『せがたさん』でもインターネット出来るんじゃない?」
雅史が口を挟む。
「うーん、『せがたさん』ねぇ。悪くはないけど、おすすめは出来ないわね。
パッドで文字を入力するのもかなり酷って話よ」
「それならキーボードを買えばいいんじゃない」
「う…。で、でおぉ、288モデムでも遅いって時代に、さらに遅いモデムで
接続したい?したいっていうのなら別だけど」
やっぱり話術では志保に勝る者はいないようだ。

「次、モデムはどれがいいんだ?」
「単純にここの数字が大きい方がいいわよ。詳しい説明は省くけど、早さのこ
とだから」
「ふーん。なあ、この「55600」って書いてある奴、2種類あるけど、ど
う違うんだ?」
「えっとね…、あれ?何だっけ??」
「へぇ、天下の志保様でもド忘れすることがあるんだ」
俺は嫌みったらしく言った。
「うっさいわね!そんなこと言ったら、あたし帰るからね!」
「待て、志保。ここでお前に帰られたら俺はどうすればいいんだ」
「じゃあ、謝りなさいよ!『志保様、失礼なこと言ってしまい誠にすいません
でした。今後は私のことは『犬』とお呼び下さい』ってね」
「…あやまるのはともかく、最後の『犬』ってのは…」
「何よ!別に帰ってもいいんだからね!」
「わーったよ!『志保様、失礼なこと言ってしまい誠にすいませんでした。今
後は私のことは『犬』とお呼び下さい』…」
俺は血の涙を流した。目と、心の中で。
「よろしい。556モデムのことだけど、マジでわすれちゃった。ただ、互換
性のない『k56flex』『X2』っていう二つの規格が市場に出回ってて
ユーザーはどっちを選べばいいか難しいところよね」
「で、どっちがいいんだ?」
「パソ通じゃそこまでの速度のBBSはほとんど無いから556で接続するの
って、ほぼ確実にインターネットプロバイダのアクセスポイントのはずよね。
だから、接続先のプロバイダがどっちの規格か、で決めるのが一番ね。ちなみ
に、どっちのモデムでもそれ以下の速度のモデムとしても使えるから、近くに
336や288のアクセスポイントしか無くても大丈夫よ」
「そーいや、『あいえすでぃーえぬ』ってのを使えば64kとか128kの通
信速度が出せるらしいが?」
「ああ、それ?それについては『アルルさん』っていう人が解説してるからそ
っち読んで」

結局、俺達はミイソ98ってのを買うことにした。モデムは哀話製だ。


数時間後、パソコンのセッティングをするため、みんなが俺の部屋に来た。
ゲイツ窓のインストールだけは終わって、今試用だからって言って志保が自分
のプロバイダの設定でNNの設定をしているところだ。

「当然、帰るときにはこの情報は抹消しておくからね」
ぬぅ、ぬかりのない女だ。

「で、『いんたぁねっとぷろばいだ』ってどこがいいんだ?」
「『値段』『信頼度』『付加価値』。そのどれに重点を置くかで変わるわよ。
値段は『1時間あたりいくら』で判別できるし、『付加価値』はメールの送受
信やホームページ開設が出来るか否か、等々ね」
「ふーん、で『信頼度』は?」
「『信頼度』は、ホストがハングしたり、回線の混み具合とか。でも、ここら

辺ってのは人から聞くしかないけどね。あ、プロバイダによっては回線の混み
具合をホームページ上で公開してる場合もあるから覗いてみてもいいんじゃな
い。…ところでヒロ」
志保が俺に聞いてきた。
「なんだ?」
「あんた、クレジットカード、持ってる?」
「持ってるぜ、JCB。それがどうしたのか?」
「プロバイダに限らず、インターネット上の決算はカードでやるのよ。国内な
らJCBでもいいと思うけど、ワールドワイドに考えるならVISAの方が何
かと便利よ」
「ふーん」

俺は大手レコード会社系列のプロバイダを選んで、オンラインサインアップし
た。後は資料が郵送されて来るのを待つだけだ。

「じゃ、あたしらは帰るから。あかりも早く帰りなよ」
あかりが作った晩飯をみんなで食べて一息ついた頃、志保が言った。
「あ、うん。玄関まで送るわよ」
あかりがぱたぱたと台所から出てくる。
「いいって。あかりはそのバカと一緒にネットサーフしてなさいって」
「じゃあね、あかりちゃん」

そして、俺とあかりが残った。

<たぶんおわり>
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どうも、UMAです。今回のネタはアルル御大の「あるるにょ!(みなさん、
ごめんねぇ)」っす。

一カ所訂正を入れようと思っただけ…だったんだけどそれだけじゃ芸がないん
で(笑)

で、訂正は
 > それに恐怖の「ああっ、きれた!」
これ。
ミカカに「キャッチホンにしてちょ」って申請しないと切れません。
みなさんご安心を。

…。ほら、これだけじゃ寂しい(笑)

#伏せ字は「大文字のオー」より「○」のほうがらしいと思うじょ。

不明点、つっこみ、その他はメールでもOKよん。

ぢゃ、そういうこって