『赤い』シリーズ三部作 投稿者:takataka

	その1『赤いメイドロボ』


「そういう訳で今日は部屋から一歩も出ないから! いいわね!」

 言い残して、来栖川綾香は自室に閉じこもった。

 明日は綾香の正念場、一学期の期末テスト。
 いかに綾香が頭がいいとはいえ、現社や歴史など記憶ものは勉強しないとどうしようも
ない訳で。
 とにかくおぼえるのが命の教科であるため、セリオに手伝えることはない。
 ただ、こうして廊下にたたずんで綾香の根気が続くことを祈るばかりであった。

 ――綾香さま。

 しかし思わずにはいられない。

 ――何か綾香さまのためにできることを……。

 しばし所在なげにたたずみ、やがて何かを決心したかのように一歩踏み出す。

 ステップ。
 軽やかなトウの歩み。
 パ・ドゥ・シャ。

 セリオは踊った。綾香のために。
 ――私にお手伝いできることがなにもないなら、綾香さま、せめて私が今廊下で綾香さ
まに思いをはせつつ踊り狂っていることにお気づきください。
 持てる力を振り絞り、想いのたけをこめて、セリオは踊る。

 やがてドアが細く開かれ――。

 ――綾香さま? 私の想い、受け取っていただけ……

 ごっ

「やっかましいんじゃあああああ!! よそでやれよそで!!」

 見事な踵の一撃を頭頂部に受け取ったセリオであった。

 ――愛が、痛いです……。




	その2『赤い幼なじみ』


 スズメ鳴き交わす、さわやかな朝。
 時計はまだ十分前をさしていた。
 ……ふう、もうすこし余裕あるな。よし、もう一眠りすっかぁ……。

「ひろゆきちゃーん」

 奴だ。
 奴が来やがった。

「ひろゆきちゃーん、ひろゆきちゃんってばー」

 くっそうあかりめ! このオレの安眠を妨害する憎い奴!
 一度ガツンと言ってやらんと気がすまん!
 はっきりと目覚めたならおれは起こしてくれたあかりに感謝するだろうが、今のオレは
睡眠のみを追い求める狩猟者であり、言わばスリーピングハンター。
 迂闊にさわるとヤケドをするぜ!

「あかりてめえコンチクショー!」
「あ、ひろゆきちゃん!」

 …………。

「おはよう浩之ちゃん! どうかな、似合う?」
「ああ……」

 今日は、白鳥の湖か……。

「変じゃないかな?」
「いつもと比べて変じゃねえな」

 変なのがデフォルトだからな。

「白鳥の首までつけるのはやめたほうがいい?」
「ああ」

 それつけてるとまるきりコントだしな。




	その3『赤いバレー部員』


 ちりちりちりちりちりちりちりちりちり…………

「いやあああ! やめて! 電波はいやああああ!!」
「くっくっく、いい声で泣くんだね新城さん……」

 あの一件以来、月島さんと沙織ちゃんは仲良しになった。

「意外な組み合わせよねー」
 太田さんはそういって笑っていた。月島さんとは終わったらしい。
 まあ、そうでなきゃ沙織ちゃんが五体満足でいる訳ないしね。

「やめてええええ!!」
「ふふふ、素敵だよ……ほら……」

 ♪一番上の長男〜。

「ああああああ! いやあああああ」

 赤い髪に真っ赤なドレスがよく似あう。月島さんがわざわざ用意したそうだ。
 凝り性だなあ、月島さん。

 ♪だんご三兄弟〜

「やめてえええ! こんな曲で踊らせないで!」

 どうしてだろう、とても素敵なのに。
 やっぱり一人でタンゴを踊るのは変なのかな?

「ううっ、恥ずかしいよぉ……祐くん、せめて一緒に踊ってよお……」

 いや、僕はいい。

「がんばって、新城さん!」
「ふぁいとだよ、新城ちゃん」
「ほら、瑞穂ちゃんも瑠璃子さんも応援してるよ」

「ううう……それなら、せめてまともな曲で……」
「しかたないなあ、これがいいのかい?」

 ♪むりすん〜な、むりすん〜な、よばれた〜らはい、お返事っ

「あばれはっちゃくもいやああああああ!!」
「わがままだなあ。じゃあ」

 ♪お〜よネコぶーにゃん、だーよっ

「なんでそんなのばっかりなのよおおおおおおおおお!!!」

 いやあ、アニソン重要。



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