『To Heart』PC版>PS版差分 3(智子篇) 投稿者:takataka
 ゲーセンで大暴れする委員長をなだめつつ、夜の公園へ誘導した。
 こうして町の平和は守られた! ありがとうオレ。
 なんてな。
「それにしても、今日は委員長の意外な一面が見れて、面白かったぜ」
 オレは、ぷっと、吹き出しながら言った。
「……意外な一面?」
「ゲーセンでキレる委員長。ぷっくっく……」
 オレが笑うと、委員長は顔を赤らめた。
「……だ、だって、ムカついたんやもん」
 うっ、いいんちょ、こんな一面もあるのか。かわいいぜ。
 よし、こういう時はなでなでだな。
 オレはうつむいた委員長の頭に手を置いた。

「藤田くん危ない!」

 ひゅっ。

 俺は目をうたがった。
 腰まで届きそうな委員長のおさげ。
 そいつがすっと鎌首をもたげて、委員長の頭越しにオレの手をかすめたのだ。

「気ぃつけんとあかんやんか、藤田くん! コイツ気に入らんやつ刺しよぉねん!」

 え?
「コイツって……」
「なにボケとんのや! おさげにきまっとるやないかい!」
 委員長の肩のうえに乗っかったおさげ。
 それはまるでさそりの尻尾。
 心なしかびくびく震えているようにも見える。
「よしよし、こわないこわない。怖い兄ちゃんは行ってもうたからなー」
 安心したのか、おさげは重力にしたがってぱさっと落ちた。

「委員長、……それ……」
 きっとオレを睨み付けて、
「ほんま気ぃつけてや! とっさに頭下げたったからいいようなものの、刺されとったら
タダやすまんとこやったで。
 コイツの毒、ベンガル虎5頭は軽くイケるからな」

 毒!?
 ベンガル虎!?
 あるのか、刺したこと!?

 委員長は気が抜けたようにはあっとため息をついた。
「……でもまあ、刺されたとこで藤田くんやしな。まあいいかって感じもすんねやけど」
 おいおいなんだよそりゃ。
 ぺしっ。
 オレは委員長にすかさずツッコミを……
 あ! 頭!

「アホぉ!!」
 どんっとオレを突き飛ばす委員長。
 しかしおさげの勢いは止まらず、

 とすっ。

 委員長の頭頂部に突き刺さる毒針。
「はうぅ……」
「委員長! しっかりしろぉ!」
「はは……藤田くん無事だったんか、よかったぁ……」

 オレは倒れる委員長を抱き起こして、ぎょっとした。
 毒が全身に回っているのか、体が異様に熱い。

「委員長! 死なないでくれ委員長!
 今だから言うけど、オレ、ほんとうはお前のことが……」
「藤田くん……」

 弱々しい瞳で公園を見渡す委員長。
 街灯の明かりの下、あたたかい夜風に吹かれ、桜の花びらが舞い散っていた。

「私が死んだら……桜の木の下に埋めてや。
 そして毎年……桜の花が咲くたびに、性格ブスで、つんけんしてて、不器用で、素直に
『好き』って言えなくて……
 そんな女の子がおったこと、思い出して。お願いや……。
 ……そんな子でも、藤田くんのこと大好きだったこと、忘れないでいて……
 約束、やで……」

「委員長! いいんちょおおぉ!!」
 苦しい息の下、智子は最後の力をふりしぼって微笑んだ。

「最後にひとつだけお願い……智子って、呼んでや……」

「何度でも呼んでやるぜ! 智子、ともこ、ともこおぉ!!
 ……智子? 智子、おい智子!! ともこおおおおお!!

 おおおおおおおお!!
 フリーーーーーーザぁーーーーーーーーーー!!!」



「……てのはどうよ? 思わぬ悲劇的展開!! これでPS版もバッチリいただき!
 ほんでもって智子の葬儀にTo Heartメンバーが勢ぞろいしたところで、いよい
よパソコン版『To Heart 2』! 悲しい別れにせつなさ炸裂!!」
「――藤田くん?」
 委員長は、にっこりと微笑んでみせた。
「おう、気に入ってくれたかいいんちょ?」
「よかったなあ藤田くん。この世で最後に見るもんが私の笑顔で」
「……え? それはどういう」
「往っ生せいやああああああああああ!!」


 どげしっ。


<PS版もといPC版ひみつ情報>
 そんなわけで、『To Heart 2』は浩之の葬儀から始まるらしいです。
 せつなさ充填120%!!


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