「雫」Another Story〜祐介の受難〜第二章  投稿者: TNT
第二章 〜長瀬一族〜




昼休み、僕は屋上に叔父から呼び出されていった。
叔父はこの学校の教師であり、毎日のように顔を合わせているのだが僕の父にコンプレックスを抱いている
ため滅多に話し掛けてくることはない。
前に一度僕に因縁を付けてきた不良を電波で病院送りにしたあとこんな風に呼び出されたことがあるだけだ。


あのときは一言
「情けない・・・」
と言われただけだった。
頭に来た僕が電波を放出してしまったときでもフッと軽く笑われ気が付いたときには僕の体は宙に舞っていた。
背中からコンクリートの上に叩き付けられた僕が歯を喰い縛り鬼のような形相で僕の心の奥にあるどろりとした
負の感情のカタマリ・・・僕の「新型爆弾」を破裂させたときもまるでハエが止まっていてうるさいなぁでも叩き
にいくのは面倒くさいなぁという余裕の表情を浮かべていた。
次の瞬間、首の後ろに凄い衝撃が走り僕は意識を失った・・・
気が付いた時には鉛の箱に押し込められ祖父と一緒にカナダへ渡っていた。
祖父宛ての叔父の手紙には
「甥の祐介が電波などというちんけなもので遊んでいます。根性を叩き直してやってください。」
と書いてあったらしい。
「そんなぁー、僕はただ町のゴミ掃除をしただけじゃないですかー!!」
と泣き叫んだのだが
「喝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーつ!!! 
 ゴミぐらい自分の手で掃除せんかーーー−−−−−−つ!!!」
と怒鳴られてしまった。
どうやら、口では勝てそうにない。腕力ではもっとだ。
僕は覚悟を決め最大の電波を放った。
視界があまりにも強力な電波のせいで真っ白に染まる。
だが・・・
だが、しかしそこには変わらず仁王立になっている祖父がいた。
「甘い!! 甘いぞ!!! 祐介!! そのような軟弱な精神で生み出した『気』で私を倒せるか!!!
 喝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーつ!!!」
愕然とした僕の目の前でかんらかんらと笑うと
「見よ!!! わが秘儀せばすちゃんびぃぃぃぃーーむ!!!」
祖父の掛け声とともに目から赤い閃光が放たれ、その先にあった山の中腹から上が蒸発して、消えた!?
「そーじゃ、おまえの『気』を応用して次ぎは・・・せばすちゃんさんだぁぁぁぁーーっ!!!」
まるでうるとらまんのすぺしうむこうせんのように白い稲妻が先ほどの山を、襲った!?
ズガガガガガガガガガガァァァァァァァァァーーーーン!!!
ビリビリと辺りの山々を響かせる轟音が走ったかと思うと山が在った場所はただの平地になっていた。
「あああああああああ・・・・」
「ふむ、やっぱり電『気』はいかんな。やはり熱く魂をゆさぶる熱『気』でないとのぅ。
 うるさくてかなわんわ。ふぉふぉふぉふぉふぉふぉっっ!!」
僕はすっかり小動物になりながら祖父に尋ねた。
「お、おじいさん。や、やまをこわしてい、いいんですかぁぁぁーー!?」
「うむ。問題はない!」
そういうと祖父はふところから携帯電話を取り出しおもむろにこう言った。
「C−201地区の造成は完了した。芹香お嬢様に伝えよ。以上!」
「・・・・・」
来栖川が戦後巨大コンツェルンになったのってこのじじいがなにかやっていたからじゃぁ・・・・
僕は狂気の扉を開いた先の扉に手をかけてしまったようだ・・・

 
「用ってなんですか・・・」
切り出したのは僕だった。自分ながら、とても身内同士の会話とは思えない。
叔父はおもむろに懐からタバコを取り出しいつもの百円ライターで付けようとしたがガスが切れていたらしい
チッと舌打ちするとメガネをはずしタバコを見つめた。
赤い閃光が走りタバコの先に火が灯った・・・しかしその先にあったフェンスは飴のように熔けていた。
「あっ!」
叔父さんはしまったという顔をすると熔けたフェンスを素手でつかみブンと振ってから息を吹きかけた。
多少いびつさを残しながらもフェンスは元の姿を取り戻した・・・

にんげんじゃない!にんげんじゃない!にんげんじゃない!にんげんじゃない!にんげんじゃない!
にんげんじゃない!にんげんじゃない!にんげんじゃない!にんげんじゃない!にんげんじゃない!にんげん
じゃないーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

叔父さんはぽりぽりと頭をかくと
「最近、深夜学校に不振な人物が出入りしているらしいという噂を知っているか?」
僕はびびりながらこう答えた。
「いえ・・・」
叔父は顎をおさえ、なにか考えている様子で
「ふむ・・・」
と頷いた。
「それが、何か・・・」
と僕が聞く。
「いや、不審な人物が出入りしているという噂が校内で広まっていてな。中には幽霊だと騒ぎ立てる奴も
いるんだ。」
「ゆ、幽霊!?」
「ん?なんだ祐介お前も幽霊が怖いのか?」
「冗談じゃありませんよ!! おじいさんにあってから・・・いえ、なんでもありません。」
(もっと怖い目に合ってきましたからっっ!!!)という叫びを心にしまいこみ愛想笑いを浮かべた。
「そうか」
叔父さんはさもありなんとちょっと同情の入った目で見つめたあと話を切り出した。
「我々もそんな噂が立っているのを傍観できないので深夜の見回りを開始した。」
はあ、一応教師らしいこともやっているんだなぁーと思って聞いていると
「しかし、我々が見回りをしている日に限って不審人物は現われなかった・・・そして、見回りが行われない
日に不審人物が目撃されている。」
ここで、言葉をとぎらせ古畑任三郎のように目をつむりながら
「うーん。つまり、こーういうことです。犯人は我々の行動をあらかじめなんらかの手段でもって知っている。
そんなことが出来るのは、学校関係者とごく近しい人物・・・そう、つまり・・・犯人は・・・あなたです。」
とびしっと指先を僕に向けた。
「なっ、なんで僕なんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
「ふっふっふっ、そーれはですねー・・・あなたが電波の力を持っているからでーす。」
「なっ!?」
「あなたが、電波の力で我々教師の頭の中を見て、我々を避けて校内に忍び込んでいることは解っています。」
「なっ、なに言ってるんですか!? そんな事したら叔父さん達には筒抜けじゃないですか!? 叔父さんに
だって電波を感じる力があるんでしょ?」
「ないよ。そんなもん。」
「へっ!?」
「俺、いや俺達には他人の『気』なんて感じる能力はないよ。だって、他人がどうなろうと関係ないからな。」
どうやら、長瀬一族の人間は『自分勝手』と『鈍感』も秘めているらしい。
確かに未だに独身のこの叔父を見ていると頷ける。
「とにかく、僕じゃありませんよっ!! 大体、毎日家に来てごはんをたかりに来ているのは誰です
かぁぁっ!!」
「おおっ!! いま明かされる衝撃の事実っ!!」
「衝撃の事実じゃぁぁぁないぃぃぃぃー!!」
「祐介!」
叔父さんは目を伏せ悲しそうな表情で言った。
「俺には解っている・・・俺だって電波の力があれば、うら若き乙女達を洗脳してあんなことやさらにこんな
こともやってしまうだろう・・・」
「はあっ?」
「わかるっ!わかるぞっ!深夜の校内に乙女達を呼び出しHするなんてシュチエーションが非常に
たまらんということも・・・」
「・・・・」
「だがなっ!! なぜ・・・なぜ・・・俺にだまってそんなことをするんだっ!! 俺がいれば撮影も編集も
バッチリしてやるというのにぃぃぃぃぃーーーーーーーー!!」
「言いたいことは・・・・それだけ・・・かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!! このチンカス野郎ぉぉぉ!!!」
渾身のパンチを受け、叔父さんはきりもみをしながら20m下の校庭に落ちていった。
僕はため息を吐くと帰ろうと思って踵をかえした。
「まあ、冗談はさておき・・・」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
なんで、もう復活しているんだ・・・
「そこで、お前の出番だ!」
「はあっ!?」
「我々は監視されている。しかしまさか犯人も一学生のお前まではマークしまい。くっくっくっくっくっ・・・
 我ながらなんて素晴らしいアイデアだろう・・・」
「・・・・」
「ゆけいっ! 祐介っ! 学園の平和を守るため犯人をギッタンギッタンのメッチョンメッチョンにするのだ!!」
「・・・僕が電波で全員朝礼の時『犯人でろ』と言えばすむことじゃ・・・」
「却下だっ!!」
「でも・・・」
「あああぁぁ、祐介っ! 叔父さんは悲しいぞっ! この日本の様式美が解らんとわぁぁぁっ!!」
「・・・・」
「学園ものと言えばその学校の生徒が捜査を行い!艱難辛苦を友と味わい解決させるっ!!
 本当は新聞部も絡ませたかったがビジュアル的に不可だったため、涙を呑んであきらめた俺の気持ちが
 解るかっ!!!」
そんなもん死んでもわかるかっ!!と思いながらこんな叔父を持ったことに一人涙した。
「わかりました。引き受けさせて頂きます・・・」
「おおっ、そうか、さすがわが甥っ!! 尚、報告はVTRに念写して提出することっ!!」
「・・・はい」
僕は痛む頭を強く抑えながら狂喜乱舞する叔父さんを後に教室へ戻っていった。
本当はこんなことはしたくなかったがしょうがない。
叔父さんを怒らせてまた恐怖の山篭もりをさせられるのはまっぴらだった。
祖父だけならまだしも「すいません・・・失敗しました」と言って魔人だの魑魅魍魎どもを呼びだすお嬢様との
生活は真っ平だ。魔人の胃袋の中で消化されかかっている孫を見て「さすがはお嬢様。見事な魔人ですな。
ふぉふぉふぉふぉふぉふぉっっ!!」とにこやかに微笑んでいた祖父。
今度行ったら絶対命が無いっ!!
ああ、平凡な日々に帰りたい・・・・・

教室に戻ると加奈子が戻っていた。
「あっ・・・長瀬くん。ごめんね。私を運んでくれたんだって? ありがと。」
「いや、別にたいしたことじゃないから・・・」
出来るだけ無愛想な表情を作り答える僕。
「・・・そう・・・でも、ありがと・・・」
一瞬悲しそうな顔をする加奈子。
僕は話を打ち切り席に戻った。
結局、午後の授業は加奈子と叔父さんの言ってたことを考えてしまい手がつけれなかった。

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皆様、第2弾を送ります。
これはCOMPASS社のLeaf Anthology Comicを手に
入れた記念として・・・そして、鬼畜王ランスとONEを手に入れそこなった
記念として・・・なんで1時間前に置いてあったソフトが2本ともなくなってる
んだぁぁぁぁぁーーーー!!(泣)

−−−−−私信です。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ああぁぁぁーーー!! 樹さんすみませんでしたぁぁぁーーー!!
僕もLHAで送ろうとしたんですが、エンコードが違うのに気が付きませんでした
でも、もしかすると送信前にメールソフトがハングったせいかも・・・
とりあえず、今度は自分自身にもBCで送って確認したので大丈夫と思うんですが
連絡下さい。

うどん屋さんメールありがとうございました。
また明日にでもメール書きますね

それではまた会う日まで・・・バイナラ(死語)

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