夢。 夢を見ている。 幼馴染や、口うるさい東スポ女や、眼鏡の委員長や金髪の同級生やたれ目のオカルトおたくや その他諸々が一斉に迫ってくる夢だ。 ちなみに、皆一様に太っている。 尋常ならざる姿だ。巨大な腕、盛り上がった筋肉、屋久杉の如き脹脛。そんなものがオレに向 かって真っ直ぐに突っ込んでくる。四方八方から巨漢が襲いかかってくるのだ。激しい息遣い。 ピンクに染まった肉体から湧きあがる湯気がオレの視界を覆い尽くす。 『否定しても無駄だ。逃げられはしない。これこそお前が真に求めるものなのだから』 戯言が聞こえる。夢の中で誰かがオレにそう囁く。オレは叫んだ。朝だ。朝になれば。そうす れば助かる。この肉の海から逃げ出せる。 朝だ、朝、朝、朝、朝、朝、朝朝朝朝朝朝朝朝朝、アサーーーーーーーーーーーーーーーッ。 谷岡ヤ○ジの如く叫びながらオレは目を覚ました。最近では「朝ー」の後に「朝だよー」と付 け加える人が多いようだが、やはり朝といえば谷岡○スジこそ第一人者であろう。ご冥福を祈り たい。閑話休題。オレは部屋を見まわしながらため息をついた。そこはいつものオレの部屋だっ た。決して田舎の従姉妹たちの家ではない。一応、この話の主人公は藤田浩之なのだから。 「どうしましたか、ご主人さまー」 扉の向こうから聞こえるマルチの声にオレは安堵感を覚えながら答えた。 「いや、別に何でもないんだよ。ちょっと変な夢を見ただけでね」 「へえ、どんな夢ですかあ」 「何というか、その、こう、つまり、一言で言うと、えーと、おぞましい夢、かな」 「どんな風におぞましかったんですかあ」 「マルチに話すような夢じゃないよ」 「そんなことを言わないで教えてくださいー」 マルチの甘えた声にオレは笑みを浮かべる。やはり彼女を購入したのは正解だった。 「…分かったよ。それじゃ部屋に入ってきたら教えてあげるよ」 「はいー」 扉が開く。オレはそちらに目を向け、目を剥いた。 巨大な腕、盛り上がった筋肉、縄文杉の如き脹脛。白い肌から暑苦しそうな湯気が立ち上って いる。そこにいたのは女○錦、もとい、女K○NISHIKIの如き姿をしたメイドロボ。オレ の顎関節が外れる音がした。 「あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 「はあ、はあ、はあ、はあ…」 マルチは荒い息をしながらオレに迫る。巨体がオレの視界を覆い尽くす。 「ひ、浩之さん、はあ、はあ、何が、おぞましいんですかあ、はあ、はあ、はあ」 「こんな昔の誰も覚えていないようなキャラクターを出すんじゃねえええええええええええっ」 「はあ、答えて、ください、浩之さん、はあ、はあ」 どすこい。ごっつぁんです。擦り足擦り足張り手張り手張り手。 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ARMさんの「頭捻り」もとい「お嬢様はG…」を見て発作的に書いてしまいました(笑)。 忘れてください(爆)。 R/D なお、下のアドレスは私の作品を掲載してもらっている健やかさんのHPです。http://www1.kcn.ne.jp/~typezero/