葛城(下)  投稿者:R/D


 在管裳  君乎者将待  打靡  吾黒髪尓  霜乃置萬代日
『ありつつも 君をば待たむ 打ち靡く 我が黒髪に 霜の置くまでに 』
                                   ――万葉集 卷二



 葛城磐之媛の父親は、朝鮮半島の歴史書にも名前が残るほどの活躍をした。彼女の一族が住ん
でいた大和盆地の葛城地方には、いくつもの巨大な古墳がある。天皇家に勝るとも劣らない名家
の娘。強大な勢力を誇っていた一族を代表して仁徳天皇に嫁いだのが磐之媛だった。
 だからこそ彼女は誇り高い女性になったのだろう。夫といえども自分を尊重すべきだ。彼女の
プライドを傷つけることは許さない。そう思っていたから、あれほど夫の浮気に嫉妬したのだろ
う。
 それだけ?
 いえ、多分違う。それだけじゃない。確かにプライドはあったかもしれない。でも、プライド
のためだけに結婚したとは思えない。そんな筈はない。
 万葉集に収められている彼女の歌は、磐之媛のもう一つの顔を窺わせる。あなたを待ちましょ
う、私の長い髪が白くなるまで。彼女はそう言っている。夫への想いを歌っている。
 好きだった。夫のことを本気で愛していたから、だから浮気が許せなかった。有力者は複数の
妻を娶るのが当たり前だった時代に、ほとんどの女がそのことを受け入れていた時代に、彼女だ
けは叛旗を翻した。
 自分だけが、自分こそが夫に相応しい。彼と一緒にいるべきなのは私だけ。自分は一途に好き
になっているのだから、彼も私だけを見なければならない。自分がこれだけ強い想いを持ってい
るのだから、彼もその想いに答えるべきだ。
 磐之媛はそう思っていたのではないだろうか。そう思って夫の下に嫁ぎ、皇后となり、同じ時
を過ごして、彼の傍にいて。
 だけど、彼女の思いは打ち砕かれた。彼の傍に現れた女性の姿を見て、彼女は不安感に襲われ
た。彼女の心に嫉妬の思いが湧いた。



 口笛を吹きながら上履きを脱ぐ。下駄箱から校舎の外へ出ると、赤く染まった空が彼女を迎え
た。太田は目を細めながらその空を見る。口元には抑えきれない笑みが浮かぶ。足取りも軽く歩
き出す。
 その日は、なぜか他の役員がみな用事で早く帰ってしまった。残ったのは太田と月島だけだっ
た。急いでやらないといけない仕事もない。彼女はこれ幸いとあの文庫本を取りだし、月島に色
々と質問をぶつけた。彼は面倒がらずにそれに答えた。話が弾んだ。彼の顔に浮かぶ笑みが、最
初に出会った時に見た表情を思い出させた。太田は幸せだった。
 一緒に帰ろうという彼女の誘いは断られた。図書室から借りた本を返しにいかなくちゃいけな
い。彼はそう言った。そのくらいなら待つと言った彼女の台詞には、優しげに首を横に振った。
君の友達をこれ以上待たせたら悪いからね。
 校門へ行く途中に、その「友達」が待っていた。眼鏡をかけた彼女の顔が綻ぶ。遅くなること
も多いから待たなくてもいいと言っているが、それでも彼女は毎日、太田の仕事が終わるのを律
儀に待っている。校門を出て少し歩けば、すぐに帰り道が分かれることになるのに。
「ごめんね、待った?」
「ううん。いつも大変ね」
「そんなことないわよ」
 肩を並べて歩き出す。どんなにゆっくり歩いても五分とかからない道行き。その僅かな時間を
惜しむかのように友人は話し、太田はそれを聞く。にこやかに笑い、依存症気味の友人を安心さ
せるように頷きながら。二人が校門を通りすぎた。
 太田の足が止まる。その視線が友人から外れ、門柱に寄りかかる人影に向けられる。人影と太
田の視線が交錯する。人待ち顔で校門に佇んでいた少女が、大きな瞳を軽く伏せ太田に会釈をし
た。細い髪が少女の頬をかすめる。廊下で月島と話していた時に、光を反射していた髪。
 太田は少し笑ってさよならと言った。そしてすぐ彼女から視線を外す。隣を歩く親友の話に適
当な相槌を打ちながら歩く。だが、その言葉の内容は太田の頭の中まで届いていない。太田はひ
たすらに足を進める。友人と別れるべき場所に来た。
「…じゃあね」
「ねえ香奈子ちゃん。ちょっと買い物に付き合ってくれない」
「ごめんね、瑞穂。今日はもう帰らないと」
 太田がすまなそうな顔をする。心の中では感情が渦を巻いている。友人が落胆の色を浮かべな
がら別れの挨拶をした。二人は別々の道を歩き出す。
 暫く歩いたところで太田の足が止まる。彼女は友人が去った方角を少し窺うと、踵を返した。
左右の足を交互に前に出す。その頻度が次第に高まる。太田はやがて、ほとんど小走りになりな
がら学校へと向かった。
 校門が見える場所に来る。彼女の足が止まる。校門にはあの少女がいた。少女は校舎の方を見
ていた。その後ろ姿を見る太田の顔が歪む。
 少女の向こうから、彼が歩いてくるのが見えた。太田は物陰に自らを隠す。彼はゆっくりと校
門へ近づいてくる。少女の後ろ姿が揺らぐ。顔は見えない。兄を見た少女がどんな顔をしている
のか、太田には分からない。
 校門にたどり着いた月島が少女に何か話しかける。少女の髪が揺れる。二人はすぐに学校に背
を向けて歩き出す。少女の顔が太田の視界に入る。
 少女は、笑っていた。



 不安。
 それは確信が崩れそうになったとき、人の心に巣食う。人から安寧を奪い、自信を失わせ、そ
の行動を変える。
 不安の前では、どんな強い人間も赤子のように無力になる。不安は人の心を食らい、恐るべき
勢いで膨れ上がる。誰にも止められない。そして、不安は様々な負の感情を呼び寄せる。
 憤怒、軽蔑、悲嘆、嫌悪、そして嫉妬。
 磐之媛は不安の中で自らの感情を押さえられなくなった。名家に生まれた誇りも、夫に愛され
ているという自信も、夫を強く愛している事実も、荒れ狂う不安を鎮めることはできない。彼女
は不安に押し流されまいと抵抗した。足掻き、他の女を宮中から追い出し、夫に怒りをぶつけな
がら。それでも彼女は不安に飲み込まれて行った。
 今の私のように。
 あの娘は何なの。どうしてこんなに私の前に現れるの。何だって彼とあそこまで一緒にいよう
とするの。いったい何を考えてるのよ。
 妹のくせに。
 そうよ、どうかしているわ。高校生にもなって何であそこまで兄貴べったりなのよ。恥ずかし
くないのかしら。少しは遠慮したら。
 だって、彼は私の運命の人なんだから。あの入学式の日にそう決まったんだから。私はそれか
ら彼だけを追いかけてきた。傍にいようと努力をして、彼に気に入られようと苦労して、私の強
い想いを、誰にも負けない想いを伝えようとしてきたのに。
 なんで。どうしてそんな笑顔を彼女に見せるの。そんな目で彼女を見るの。
 なんでなのよ、月島さん。
 ねえ、なんで。



 休み時間。太田は授業が終わると同時に机に突っ伏した。机に顎をつけ、傷痕の残る木製の板
に視線を据える。歴代の生徒たちが使いこんできた学校の備品。並んだ木目の上を縦横に走る引
っかき傷が光を反射して白く浮かび上がる。
 その複雑な文様を目で追いながら、太田は小さくため息をついた。低い位置から見る同級生た
ちはそれぞれ好き勝手なことをしている。早くも弁当を広げる男子、机に腰を下ろして駄弁る女
子たち、黒板に悪戯書きをする者もいれば、何の用があるのかばたばたと駆け回る者もいる。机
に上半身を凭せ掛けて上目遣いに周囲を見回す彼女には、誰も注意を払わない。
 一人の男子生徒が本を取りだし、机の上に置いた。彼はその本をゆっくりと読み始める。視線
を落とし、周囲の喧騒から身を隔離して、彼は本を読む。その姿が月島と重なる。太田は乱暴に
立ちあがると教室から出ようとした。
「香奈子ちゃん」
 入り口にはまるで謀ったかのように親友が待っていた。太田の顔にいつもの笑みが浮かぶ。張
りついたような、強張った笑みが。
「どうしたの、瑞穂」
 声に刺々しさが含まれていないだろうか。太田はそう思いながら言葉を投げかける。大人しく
て引っ込み思案な友人だが、決して鈍感ではない。太田の様子がおかしいことには気づいている
筈だ。
「ねえ、昼休みは一緒に食事しない」
 友人はにっこりと笑ってそう言う。その笑みの中に相手を気遣う思いが込められている。太田
は疼く心を表に出さぬようにしながら頷く。
「いいわよ」
「じゃあ、昼休みに」
 友人はそう言い残し、自分の教室へ戻るべく背中を向けた。その背中を見て、太田は思わず右
手を伸ばす。友人に助けを求めるように。
 だが、その手は彼女まで届かない。太田は中途半端に伸ばした腕を、力無く落とした。友人は
教室を去る。太田は残される。彼女はしばらく扉を見つめ、再び自分の席へと戻る。
 椅子に腰を下ろした彼女は、億劫そうに鞄を開くと次の授業の準備を始めた。教科書とノート
が取り出される。手に引っかかった文庫本がその勢いで鞄から零れ、床に落ちる。
 太田はその本を見た。あの本だった。彼女はゆっくりとそれを拾い上げる。彼と自分を繋ぐき
っかけになると思っていた本。だが、今や彼との距離は以前よりも遠くなっている。絆を強める
筈の本は、むしろ互いをすれ違わせる結果をもたらしている。
 太田は本を睨みつけた。それが仇であるかのように。脳裏に浮かんでいたのはあの少女。彼の
隣に立って笑っていた少女。彼を見て、彼と話をして、彼に本を渡して、彼から見つめられて、
楽しそうに微笑んだあの儚げな娘。
 太田は乱暴に本を鞄に押し込んだ。構造の弱い文庫本は乱暴な扱いで無残に歪む。太田は視線
を逸らし、黒板を睨みつける。唇を噛み締める。
「…やべっ、図書室に本返さなきゃ」
 誰かの声が彼女の耳に飛びこんできた。太田の顔色が変わった。何かを考えているかのように
視線をさまよわせる。その目に決意の色が浮かぶ。
 チャイムが鳴った。



 友人にでも相談すれば良かったのかもしれない。誰かに悩みを打ち明けてしまえば、心も少し
は落ち着いたかもしれない。上手くすれば、自分を客観的に見ることもできたかも。
 でも、どう言えばいいのだろう。自分の不安の理由を、どう説明すればいいの。
 好きな人がいる。だけどその人の妹が邪魔なの。どうしたらいいと思う?
 そんな事を言われたら、相手はどんな顔をするだろう。笑われるかもしれない。気にすること
はないといなされるか、嫉妬深いのも大概にしたほうがいいと説得されるかもしれない。呆れて
何も言わずに首を振るかも。
 そう。妹なんだ。どんなに仲良くしても、親しそうに見えても、楽しそうでも、それは兄妹だ
からなんだ。そんなことを気にする自分の方がおかしい。
 一緒に歩いていたからっておかしくない。だって兄妹なんだから。生まれたときからずっと一
緒にいたんだから。私とは違って。高校に入って、初めて彼と出会った私より前から。
 でもそれだけ。昔から一緒にいたというだけ。兄妹なら、いずれ別れる。それぞれの道を歩み
始め、それぞれの生活を送り、新しい家族を作って。過去は共有できても、未来は違う。私なら
ば、彼と伴に過ごす未来を手に入れられる。彼女じゃなくて、私なら。
 だから気にすることはない。不安を感じる必要はない。
 そう。それに、私は彼に繋がる手がかりを持っている。彼が読んでいたあの本。図書室から借
りていたあの単行本。あの本を話題にしたら、彼はとても楽しそうに応じてくれた。彼女と話し
ていた時と同じように、いえ、その時よりも嬉しそうに。
 図書室に行こう。彼はあの本を返却した筈だ。今度は私が借りよう。自分で買った文庫本だけ
では不安は鎮められない。でも、あの本は違う。彼が借りて自分の手にとって読んでいた本だ。
その本を手に入れれば、再び彼との絆を繋げられるような気がする。あの運命の出会いの日のよ
うに、彼の心に手が届くような気が。
 友達には悪いけど、昼休みは図書室へ行こう。あの本を借りよう。そうすればきっと上手く行
く。そうすればきっと。



 チャイムと同時に太田は教室を出た。確固とした足取りで階段を上る。図書室は校舎の最上階
にあった。彼女は迷うことなくそちらへ進む。今ごろ、教室では彼女を迎えに来た友人が姿の見
えぬ彼女を探しているかもしれない。だが、それでも太田は速度を緩めなかった。
 図書室に入った。昼休みの図書室は閑散としており、当番の図書委員が暇そうにカウンターに
座っていた。太田は真っ直ぐ歴史のコーナーへと歩く。彼女は立ち並ぶ書架を見上げ、視線をさ
まよわせた。
 一段一段、一冊一冊、ゆっくりと見ていく。色あせた背表紙は、この静かな部屋で過ごした長
い時間を積み重ねたかのよう。紙の匂いが彼女を包む。
 太田の手が伸びる。一冊の本が取り出された。表紙を確かめる。古事記。間違いない。彼があ
の時に読んでいた本だ。彼女は閲覧コーナーへ向かい、席に腰を下ろす。短い髪が彼女の動きに
合わせて揺れる。彼女は机に置かれた本をゆっくりと開いた。一枚一枚、確かめるようにページ
をめくる。静けさの中、紙の音だけが微かに響く。
 残された彼の感触を探るように、太田はゆっくりとページを動かす。書物に記された古い古い
物語。行間から漂う昔の人々の思い。彼女はそれを味わうように手を動かす。彼がそうしていた
ように、彼の行動をなぞるように。
 本の向こうに彼の姿を求めて。
 彼女の手が止まった。その手は本の一番最後のページを開いていた。彼女の目が大きく見開か
れる。唇が微かに震える。ページを持った指がわななく。一点を凝視し続ける彼女の目から、強
い感情が迸る。
 素早く立ちあがり、再び書架へと歩き出した。さきほどと同じ歴史のコーナーにたどり着く。
しばらく視線を動かすと、新たに一冊の本を引っ張り出す。手つきが先ほどより荒っぽくなって
いる。
 再び閲覧席へ。本の裏表紙を上にして、ページを一枚めくる。彼女はそのページに視線を据え
る。忙しく動いていた彼女の視線が、やがてあるところで止まる。表情が険しくなる。歯を食い
しばる。彼女は立ち上がった。前よりも乱暴に。そして、足早に書架へと歩く。
 今度は数冊の本を力任せ書架から引きずり出す。重い本を何冊も腕に抱え、大またで閲覧席に
戻る。机の上に乱暴に本を置くと同時に、そのうちの一冊のページをめくった。一番最後のペー
ジ。唇を強く噛み締める。次の本。肩が震える。そして次の本。同じ動作を繰り返すたび、彼女
の顔色が失われていった。
 席を立つ。椅子が倒れる。図書委員が彼女を見た。太田は気にも留めず、書架へと走る。大き
な足音が静謐たるべき図書室の中に響き渡る。書架の前に立ち、本を引き出す。その場でページ
をめくる。最後のページ。喉の奥から声が漏れる。泣いているような、怒っているような。彼女
は本を放りだし、次の本を取り出す。投げ出された本は床に落ち、図書室にいる人々の視線を集
める。そして次、さらに次。本が次々と床に散乱する。
「…ちょっと、何をしているんですか」
 慌ててカウンターから駆けつけた図書委員が大声を上げた。太田は黙って書架にある本を睨み
据え、次々とそれを引っ張り出し続ける。
「何てことをするの、やめなさい」
 図書委員の声が大きくなる。太田は聞こえないかのように本を掴み、放り出す。本が図書室の
床に山を成す。図書室内にいた数少ない生徒たちが彼女の周りに集まってくる。
「やめてって言ってるでしょっ」
 悲鳴。それでも彼女は本を引きずり出す。あらかた書架が空になると、今度は書架を掴んで揺
すり始めた。周りの生徒が慌てて彼女を止めようと動き出す。数人がかりで押さえつけられなが
らも、太田は書架を掴む手を離さなかった。強く握り締められた手は白く変色し、震えていた。
彼女の口から、嗚咽が流れ出す。
 床に放り出された本の最終ページには、それぞれ貸し出しカードが挟んであった。そこには、
印で押したように同じ名前が二つ、記されていた。
 月島拓也。
 月島瑠璃子。



 都藝泥布夜 夜麻志呂賀波袁 美夜能煩理 和賀能煩禮婆 阿袁邇余志 那良袁須疑 袁陀弖
 夜麻登袁須疑 和賀美賀本斯久邇波 迦豆良紀多迦美夜 和藝幣能阿多理
『つぎねふや 山代河を 宮上り 我が上れば あをによし 奈良を過ぎ 小楯 倭を過ぎ 我
が見がほし国は 葛城高宮 我家のあたり』
                              ――古事記下卷 仁徳天皇条



 磐之媛は逃げた。夫のもとから、自分の心を食いつくそうとする不安から。故郷への思い、か
つて暮らした葛城の地への望郷の念を歌にして。
 彼女は逃げた。苦しみから、マイナスの感情から。幸せだった子供時代を過ごした葛城を見た
いと言いながら。
 私が見たいのは、私の家がある葛城の高宮。そこなら彼女の誇りは傷つかない。夫の傍に次々
と現れる女性を見ずにすむ。大豪族葛城氏の娘として、誰もが彼女のことを大切にしてくれる。
嫉妬に狂う自分の姿を見せなくてもいい。
 彼女の心に生まれた不安はやがて嫉妬へと姿を変え、最後には諦観となって彼女を支配した。
 そう、諦めてしまえば楽になれる。こんな辛い思いをしなくていい。失われた心の平安を取り
戻すことができる。彼女のように、磐之媛のように、すべてを諦めてしまえば、苦しみもなくな
る。悲しみも、怒りも、すべて消える。
 諦めてしまえばいい。
 諦めれば。



 諦めれば、喜びもなくなる。



 嫌だ。
 嫌だ、私は諦めたくない。
 あの人を、彼を失いたくない。
 あの出会いの日を、過去の思い出にしたくない。
 あの娘が邪魔するのなら、排除すればいい。
 彼女をなぎ倒し、乗り越え、彼へと繋がる道を進んで。
 あの少女が、彼女が、彼の妹が、月島瑠璃子が、私と彼の間に立ちはだかるなら。
 嫉妬。
 私の心の中で嫉妬が荒れ狂う。
 邪魔はさせない。絶対に私は彼を手に入れる。
 どんな代償を支払うことになっても。
 そう、例え自分が壊れることになっても、それでも私は彼を手に入れる。
 月島さんを。
 必ず。



                                    葛城 終