そのビラにはこんなことが書いてあった。 『格安のメイド・口ボをあなたに! 今すぐお電話ください!』 いかにも怪しげな広告、うさん臭そうな名前の通販業者。それでも俺はこの宣伝に飛びついて しまった。なにしろ安かったのだ。まさに赤貧洗うが如き俺でも十分手が届くリーズナブルな値 段を見た次の瞬間には受話器に手が伸びていた。 そして一週間後、商品が送られてきた。 「ヴィィィィィィィン……」 それは見事な「電動フグ」だった。横に「最高級品」と焼き印が入っている。 俺はすぐに業者に電話を入れた。 「何だ何だ何なんだこれはっ。何でこんなもんを送ってくるんだっ」 「発送の手違いでもございましたでしょうか?」 「手違いどころか俺はこんなものを頼んだ覚えはないっ」 「ただいまお調べします。少々お待ち下さい」 間奏(エリーゼのために) 「お待たせいたしました。お客様にお送りした商品は間違いなく注文いただいたものです」 「そんな訳はないっ。俺が頼んだのはメイド・ロボであって電動フグなんかじゃ……」 「いえ、よく当社のパンフレットをご覧下さい」 「何ぃ?」 「いいですか。当社が扱っているのは『メイド・口ボ』です。『メイド・ロボ』ではございませ ん」 「……はあ?」 「もう一度よく見てください。『口ボ』であって『ロボ』ではないのです」 「…………」 「当社の扱う電動フグ、商品名『メイド・口(くち)ボ』をお買い上げいただき、まことにあり がとうございます」 「なんじゃその口(くち)ボってのはぁっ」 「フグの口を使う商品だからです」 詐欺だ。俺は心の中で血涙を流しながら言った。 「……じゃあ、口の後についている『ボ』って何?」 「…………さあ?」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 前作があまりにもマニアックであるとの指摘を受け、今回は小学一年生でも分かりそうな作品 にチャレンジ。書いた後、読み返してそのつまらなさに憤死。 本当は「『ボ』は……ちはやの本名だっ」というオチにしたかったが、小学一年生では元ネタ の落語は分かるまい(爆)。 R/Dhttp://www.tctv.ne.jp/members/desaix/