贈答2 投稿者:R/D
 メイドロボが送りつけられた。

 同封されていた手紙にはこんなことが書いてあった。

『おめでとうございます。この度、あなたは来栖川電工の新製品モニターに選ばれました。早速
ですが最新型のメイドロボをお送りします。当社自慢の新製品、iマルチをどうかお試しになっ
てください。なお、5体まとめて送ったのは、決してセット販売を押しつけている訳ではありま
せん。あしからず。
                 来栖川電工第七研究開発室HM開発課主任 長瀬源五郎』

 オレが読み終わったと同時に、図ったようにメイドロボが起動する。いずれもスケルトンタイ
プの、要するに透き通ったメイドロボだ。

 ブウゥゥン……

 5体のすけすけマルチが一斉に目を開き、ゆっくりと起き上がり始めた。言葉にすると、そこ
はかとなく色気が感じられなくもないでもないが、目の当たりにするとほとんどエイ○アンの冒
頭シーン。

「わたしはストロベリー・マルチ」
「わたしはライム・マルチ」
「わたしはブルーベリー・マルチ」
「わたしはタンジェリン・マルチ」
「わたしはグレープ・マルチ」
「「「「「5体そろって、ゴマルチャー」」」」」

 内骨格やら配線やらボードやら眼球状のカメラやら冷却用に鼓動を繰り返す内蔵の如きファン
やらが透けて見えるマルチたちが一斉にポーズを取る。何というか、悟りを開いて解脱したうえ
で「僧に会っては僧を殺し、仏に会っては仏を殺し」とか口走ってしまいそうな、そんな光景だ
った。

「いかがなさいましたか、ご主人様」

 スケルトンマルチたちが一斉に近づいてくる。オレは逃げるように後退した。悲鳴を上げたつ
もりだったが、声がかすれて音にならない。背中が壁に当たる。しまった。囲まれた。スケルト
ンマルチたちがじりじりと包囲の輪を狭めてくる。その頭蓋骨が透けて見える顔がアップになっ
て迫ってくる。

「う、うああああああああっ、待てっ、待ってくれええええええええっ」
「Memento Mori。死を思え。中世欧州ではどんな身分の人物にも差別無く訪れる死を骸骨の姿で
表す考え方があったようです。彼らの踊りがいわゆるDance Macabre。死の舞踏です」

 いきなり『ほねほね○ック』が大音量で流れ出す。M・ジャ○ソンのスリ○ーっぽい振り付け
で踊り狂う5体のスケルトンマルチ。

 涅槃へと旅立ちかけた意識をかろうじて引き戻し、オレは叫んだ。

「助けてえええええええええっ、遊星仮面○ヤ……」
「嫌」



 お釈迦様が遠くで手招きしていた。

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 なぜこんなネタが思い浮かんだのか、自分でも説明がつきません。
 とりあえず、事前に「開発3」を読んでもらったほうがいいかも(苦笑)。

                       “吐くまで飲むのはやめよう”R/D

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