野球 投稿者:R/D
 白いボ〜ル〜 小さくな〜って〜く〜
               ――ユニコーン「デーゲーム」


「という訳で野球をやろう」
「い、いきなりですね、耕一さん」
「まあいいじゃないか藤田くん。ネタに困った時には野球をやる、というのはマンガでよくある
手だ」
「なぜマンガ……」
「それに異世界からやってきたティリアたちにこの世界の文化を見てもらうことにもなるし」
「っていつティリアたちが来たんですか?」
「細かいことは気にするな」
「……文化を見てもらうんなら野球以外にもあるでしょうが」
「とにかく決まりだ、いいな。こっちは痕・雫連合チーム、そっちは東鳩チームということで」
「あ、あの……行っちまったよおい。どうすんだよ」

 試合当日

「なぜ狩猟者たるこの俺がボール遊びなぞせんといかんのだ」
「まあまあ柳川さん。これは貴方しかできないことですから」
「……ま、よかろう。耕一、お前こそしっかり捕球しろよ」

 痕・雫チームのマウンドには柳川がいた。

「……こりゃ結構きびしいかもな」
「大丈夫かな、浩之ちゃん」
「一応、こっちも雅史と矢島、綾香にレミィに葵ちゃんと体育会系の人材は揃えたけどな」
「まあとりあえず様子を見ようよ、浩之」

 おおっとピッチャー柳川、いきなり鬼に変貌して第一球……
 バシュン

「……は、速いっ」
「軽く300キロは出ているんじゃないのかおい」
「さすがは人外魔境」
「あんなんありかあっ」

 東鳩チーム、1回表は三者三振。

「ど、どうしよう、浩之ちゃん」
「くっ、こうなったらこちらも裏技で行くしかあるまい。出でよっ、セリオーッ」
「――ただ今、サテライトサービスダウンロード中……ダウンロード終了」

 東鳩チームのピッチャーセリオ、振りかぶって第一球……
 バスッ

「いよおおおおっし、これなら200キロは出ているっ。どうだバッター、打てんだろうっ」
「……ひ、浩之ちゃん、キャッチャーの矢島君がのたうち回っているんだけど」
「なにぃっ」
「あー、あれは多分、手の骨が折れたんじゃないかな」
「……ってにこやかに笑いながら指摘することかいな、佐藤君」
「うーむ、球が速すぎたか。並みの人間に捕れないとなると……よし、出でよっ、マルチーッ」
「はいですぅ」

 セリオ続いて第二球……
 めきょっ

「……HMX−12って、頑丈なんだね」
「顔面捕球するとは思わんかったわ」
「って人ごとみたいに言うなあっ。おいマルチッ、しっかりしろっ」
「――おそらくブレーカーが落ちただけかと思われます」
「そ、そうか。いやーよかった。じゃあこいつが捕手を続け……」
「――サスペンド状態から復旧するまでの推定時間は4時間です」
「……続けられねーじゃねーか。どうすんだよおいっ」
「こりゃ困ったね」
「笑うんじゃねえ雅史っ。うーむ、何かうまい方法は……あ、そうだっ。琴音ちゃんっ」
「あ、はい」

 セリオ第三球……
 パスッ

「よしっ。捕球寸前に念動力でボールのスピードを落とす作戦は大成功だっ」
「随分と説明口調なのね、浩之ちゃん」
「ふ、藤田さん。私、私やりましたっ」
「偉いぞ琴音ちゃん、君こそ我がチームの救世主だっ」
「藤田さんが私のことを……。ああ、幸せ。まるで柔らかい春の陽射しに包まれて……」
「あ、あれ……。おい、琴音ちゃん」
「……寝とるな、あれは」
「ああっ、も、もしかしたら力を使い果たしてっ」
「……キャッチャー、いなくなっちゃったね、浩之」
「どおおおおすんだよおおおおおおおっ」

 東鳩チームの負け。

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