メイドロボは電気羊の夢を見るか 降り注ぐ酸性雨の下、薄汚れた衣服をまとった連中が傘をさして歩いている。 見上げるとビルの壁面に映る巨大なゲイシャ・ガール。さらに上空には外宇宙への移民を勧め る広告用飛行船が舞う。 俺は湯気を上げる屋台でヌードルをつつきながら思った。 (こりゃ原作じゃなくて映画の方だろ。題名が違うんじゃないか) その時、俺の肩を誰かが叩いた。振り向くと顎髭を生やした馬面の男(キャスト:フランク長 瀬)が俺の顔を覗き込んでいた。 「…………」 スラングだ。英語、日本語、スペイン語、スワヒリ語、業界用語、関西弁などをかき混ぜた言 葉。根無し草が集まるこの街ではよく聞く言語だ。理解できない訳ではないが、こいつ(キャス ト:フランク長瀬)に素直に返事をしたくなかった。 俺は屋台のオヤジ(キャスト:長瀬教諭)の馬面を見た。 「2つで十分ですよ、2つで」 ものも言わずにオヤジ(キャスト:長瀬教諭)の馬面を殴りつける。その台詞を言いたい気持 ちは分かるが、ここでそれはNGだ。 「……このふぃとはあなたのことをぶれーろらんなーだといってまふゅ」 「人違いだ。ほかを当たってくれ」 「ひょちょうがよんでいるそうれ」 鼻にちり紙を詰めたまま通訳をするオヤジ(キャスト:長瀬教諭)。仕方なく俺は背後に立つ 男(キャスト:フランク長瀬)の方へ振り向いた。 「…………」 男(キャスト:フランク長瀬)は背後に控えるエアロダインを示す。俺は食いかけのヌードル を置き、その警察車両に乗り込んだ。エアロダインがゆっくりと空中に浮かぶ。 「火星の開発地区からスキン・ジョブが6体逃げ出した」 タバコの煙が立ちこめる会議室。映し出されるのはレプリカントと見られる男を警官が尋問し ているシーンだ。俺の横に座る馬面の警察署長(キャスト:長瀬刑事)が淡々と説明を続ける。 「うち1体は地球へたどり着いた際に始末した。しかし、他の連中はまだ逃げ続けている」 「俺はもう引退した」 「お前しかいないんだよ、デッカード」 署長(キャスト:長瀬刑事)は馬面を引き伸ばしながら俺にタバコの煙を浴びせ掛けてきた。 「調査にあたってはガフを連れていってもらう」 顎髭を生やした馬面(キャスト:フランク長瀬)を指さしてそう言う。俺は渋面をつくってみ せるが、署長(キャスト:長瀬刑事)は気にした様子もなく続ける。 「で、早速だが一人レプリカントの行方を掴んだ。ストリップショーをやっている酒場へ行って くれ」 「ちょ、ちょっと待て」 俺は素に戻って言った。 「ここは確かタイレル社を訪ねろと言う場面の筈じゃ」 「作者に長々と書く気力がないからだそうだ」 俺は脱力感を覚えつつ署を出た。 予定通り楽屋に潜り込むと、そこにやってきたストリッパーは馬面(キャスト:長瀬源二郎) だった。 「って待てやぁっ」 俺は思わず知らず叫んでいた。 「なんで『キャスト:長瀬源二郎』なんじゃいっ」 「ふっ、甘いわね。源二郎という名前だからと言って男とは限らないでしょ」 「限るわいっ」 「あるいは男性ストリッパーだったりして」 「ぃやかましいわぁっ。そもそも源二郎なんてやつはリーフのどの作品にも登場しとらんだろう がっ」 俺は問答無用で銃を乱射し、馬面のストリッパー(キャスト:長瀬源二郎)を破壊した。 「だいたいあのシーンで本来出てくるべきなのはセリオだろうに。んでタイレル社の技術者が住 むマンションでデッカードと戦うのがマルチで……あれ」 俺はいつの間にかそのマンションにいた。廃屋のような廊下に不気味な声がこだまする。 「いかがなされましたか、デッカード殿。早くお逃げになった方がよろしいかと」 俺はその場で頭を抱えてうずくまった。追い打ちをかけるようにロイ(キャスト:長瀬執事) の声が響く。 「それでは参りますぞ」 耐えきれなくなった俺は悲鳴を上げた。 「馬面はいやあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」 馬面一族は電気馬の夢を見るか――終わり −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 最近仕事が忙しくて…つい作品のアップも滞りがちで…これではいけないと考えて…そこでハ ードボイルドでサイバーパンクなシリアス・ストーリーを作ろうと思ったんだけど… カネはあってもヒマはない社会人の皆様。不景気にめげず頑張りませう。 R/D