転生 投稿者:R/D
耕一「なぁ、浩之」
浩之「なんスか、耕一さん?」
耕一「実は俺、前から疑問に思っていることがあってさ……」
浩之「はあ」
耕一「いや、実はほかでもないエディフェルのことなんだけど」
浩之「エディフェル……って言うと、確か楓ちゃんの前世の」
耕一「そう……なんだけどさ、何かおかしくねぇか?」
浩之「は? 何が?」
耕一「いやそのつまり、俺の記憶にあるエディフェルって、ウエーブのかかったロングヘアに垂
  れた目ってのが特徴なんだけどさ」
浩之「そうなんですか?」
耕一「そうなんだよ。けどさ、楓ちゃんはと言うと、ストレートのショートで垂れ目じゃないだ
  ろ」
浩之「まぁ、そうですね」
耕一「そりゃ、別に転生前と同じ顔でなくちゃいけないってことはないよ。けどさ、何かこう、
  納得がいかないんだよ」
浩之「そんなこと言ったって……」
耕一「分かってるよ。見合い写真だって本物と多少違うのは当たり前なんだしな。だけど限度っ
  てもんがあるよな。いくら何でもこりゃ許容範囲を超えているだろうって時はそりゃ腹も立
  つさ」
浩之「……あの、何か見合いに嫌な思い出でもあるんですか?」
耕一「やっぱさ、前世とどこか似ているってのが生まれ変わるときのお約束だろ? でも違うん
  だよなー。もしかしたら……」
浩之「もしかしたら?」
耕一「本当はエディフェルは別の人間として転生したんじゃないのか」
浩之「はい?」
耕一「そうだよ。エディフェルは楓ちゃんとしてでなく、別の人間に生まれ変わったんだよ」
浩之「な、なんでそういう結論になるんですか」
耕一「そりゃ勿論、そっくりの女性を見つけたからさっ」
浩之「えっ、本当にそっくりな人がいるんですか」
耕一「そうさ。彼女を見た時、俺の心は激しく打たれたね。これぞ運命、これぞ宿命。前世から
  の深い絆が二人の間に存在するからこそ、僕らは出会った。長い時を経て再び巡り逢うその
  ために……」
浩之「はぁ、そりゃ良かったですね」
耕一「彼女の長い、ウエーブのかかった黒髪こそ、次郎右衛門が雨月山で出会った少女のもの。
  目尻の下がったその瞳に宿る憂いこそ、次郎右衛門を愛した少女の心」
浩之「…………」
耕一「そうだ、僕らは愛し合う定めなのさ。誰にも邪魔されず、互いに手を取り合って……」
浩之「(よくもまあ、恥ずかしげもなく)まあ、お好きなように」
耕一「え? いいの、本当に好きなようにして?」
浩之「は、はぁ? いやまぁ、そんなに言うなら別に俺は邪魔するつもりは……」
耕一「いやーそうかそうかそりゃ良かった。お前さんがそんなにあっさり譲ってくれるとは」
浩之「…………譲る?」
耕一「じゃ、早速だけど俺、お付き合いを申し込みに行くわ。来栖川芹香お嬢さまに」
浩之「なぁにいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」
耕一「いやー、なにせ就職超氷河期だからねぇ。うまく行けば逆玉の輿だしなぁ」
浩之「それが本音かいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」

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 深い意味はありません。ただ、あの二人は似ているなぁ、と思っただけで。

 今回は2作品まとめてアップいたしました。