Friends 投稿者: sphere
目の前には学校へと続く坂道が広がっている

かすかに夏の香り

初夏


俺はまたここへ帰ってきた

幾度巡り 幾度流れれば 俺は辿り着けるのだろう

今はまだ見えない  俺の出発点

多くの人と出会い  多くの人の生き方に触れ 別れた

多くの人の心に触れた  いや

……触れなかった  相手の心の領域

俺は一歩を踏み出せなかった  踏み出さなかった

俺にはその資格がないのではないか?  そんな思いが胸を射る

自分の気持ちがわからない者が

人の心をわかるものか

自分を支えるものが何もない者が

人を支えることなどできるものか

自分が何かわからない者が

人をわかることなどできるものか


そんな俺が人の心に触れるのは  いけないんじゃないか

それはただ自分にないもの わからないもの

そんな曖昧なものを 人の心に触れ何かをしてあげているつもりで

探しているだけじゃないんだろうか  ……自分のために



青い 青い

神々しい程生命力に満ちた若葉

若草色に染まった衣を纏う木々の木漏れ日

青い 青い

それは何度巡っても等しく俺に降り注ぐ

青く 青く

その眩しさが今は辛くて

小さな小さなガラスのとげが

心のどこかに突き刺さったままの俺は

燦燦と輝く木漏れ日の前に消えてしまいそうで

一人では耐えられそうになくて




この坂を登ると俺はやさしい声を掛けられる

その声は俺に頑張れと言っているように聞こえ

その表情はどこか悲しげに微笑む

お前は知っているんだな ここが終わりで始まりだということを

俺が うれしい時 悲しい時 楽しいとき 怒っているとき

いつも側にいる ……親友

そうだ

物語がどんなに辛く悲しいラスト・シーンだったとしても

お前だけは変わらずここで俺に笑いかけてくれてたんだな

……そうか……俺は…一人じゃないんだ

ごめんな

俺は……

俺はお前となら自分の中にある疑問を解ける気がするよ

なぁ、お前は……俺と一緒に来てくれるよな……?



「おはよう、浩之。今日もいい天気だね」―――――