鬼騎士(エルクゥナイト)ジローエモン 第九話 Bパート 投稿者: ROSSO

第九話 蘇る第三の『狩猟社』ジローエモン Bパート


セリオに導かれ訪れた『洞窟の神殿』…。
広大な空洞の天井までととかんばかりにそびえたつその巨大な建造物の中で、初音は三体(もしくは三人)目の『狩猟者・ジローエモン』と対峙していた。
……というか『狩猟者』に襲われていた。
「い、いやああああぁ〜〜〜〜っ!!」
「「さあ我をまとい真の『鬼騎士』となれ。それはとても気持ちがいいことなんだよ」」
危うし初音!
その時。
初音の耳に、神殿の外からの悲鳴が飛び込んできた。
「……お姉ちゃんっ!?」
急ぎ神殿の外に駆け出す初音。
その後ろでは『狩猟者・ジローエモン』が舌打ちしていた。

「お姉ちゃんたちっ!!大丈夫っ!?」
初音は息を切らせ扉を開けて飛び出した。
そこで彼女が見たものは見たものは…
「…う…うう…」
ぼろきれのようになって横たわりうめき声を上げる見知らぬ男。
「あらあら、大丈夫ですか?…だからやめておけばよかったのに…ねえ?」
ぐりぐりぐり…。
にこやかに微笑みながら靴のかかとでその男の手の甲を踏みにじる千鶴。
「…………」
ぼすっどかっげしっ。
無言で男の腹にしこたまケリをぶち込んでいる楓。
「ぷうぷう」
つんつくつん。
無表情に木の枝でその男のケツをつつくセリオ。
ただの私刑である。
「お…お姉ちゃん…?その人誰…?」
「あら、初音。いやね、この人神官浩之の刺客なんですって。それで私たちもすることなかったし、暇つぶしに付き合ってあげてたのよ」
「…でもこの人…すごく弱い…」
その、『すごく弱い』人…ハシモトが顔を上げてうめいた。
「……あ、あんたらが強すぎんだよ…バケモンが……ぐふうぅっ!!」
楓と千鶴が同時にハシモトの土手っ腹につま先を蹴り込んだ。
あまりの痛々しさに初音は耐え兼ねて、
「も、もうやめてあげようよ…いくらなんでもかわいそうだよぅ…」
そう言って千鶴の手を握る。
「え〜?せっかくだからもうちょっといいじゃない、いっそ殺したっていいんだから気にすることないわよ」
ハシモトは震えている。
「…どうせいなくても『なんにも』不都合はない『ワキ』だし…」
ハシモトは泣いている。
「で…でも、『一寸の虫にも五分の魂』っていうし…あれ、使い方間違ってるかな?」
「……虫以下だと思うけど…」
「まあ、いいわ。結構スッキリしたし、ここは初音に免じてやめときましょう」
ハシモトの側から離れていく楓・千鶴といれかわりに初音はハシモトに近づき声をかける。
「ねえ、大丈夫?だめだよ『身の程』っていうのを知らないと…。立てる?」
ハシモトに手を差し伸べる。ハシモトは力無くその手を握り、
「うははははははっ!!もらったぁ!!」
いきなり立ち上がり初音の手を引きよせて後ろから初音を羽交い締めにした。
「えっ?えぇっ!?」
初音はいきなりの事にうろたえて何が起こっているのかわからないようだ。
「!!…初音っ!!」
「…初音…!」
「ぷううっ!!」
初音の元に駆け寄ろうとすると、
「うごくなあっ!!」
ハシモトがそれを止めた。
「うごくなよお…ちょっとでも動いたらこの娘の…」
「…初音の…?」
「スカートをめくるぞ」
「…くっ…なんて卑怯な…」
…というか卑猥な…ではないだろうか。
ハシモトはじりじりと後ろに下がっていく。
「ねえ、やめたほうがいいよこんなこと。逃げられっこないよ…」
初音はおびえたというより哀れんだような目でハシモトを見る。
「うるせえっ!!さっきからそんな目で俺を見やがって…ああ俺は『ワキ』だよ!死んでもあんたらみてえな『ヒロイン』様にはかないっこないさ!さぞ哀れに見えるだろうよ!!あんたらにわかるか!?選択肢が『威力重視の重いの』をくらうか『派手にぶっ飛ばされる』かしかねえ奴の気持ちが!!同じワキなのになんで矢島には
1、『ふざけんな!!といってぶっとばす』
2、『まあ、いいけどよ…といってぶっとばす』
とか
1、『あいつに、あかりはやれねえっ!!といってぶっとばす』
2、『観念して矢島をぶっとばす』
みてえな選択肢がねえんだよおぉっ!!」
無茶いうな。…いや、あながち無茶でもないか。これでもシナリオに支障はないし。
上の長いセリフをハシモトが吐いている間、エキサイトしすぎたようだ。
ハシモトの初音を捕まえる腕の力が弱くなったのを初音は見逃さなかった。
「…(いまだっ!)…えいっ、寝ぐせにーどる!!」
初音の掛け声とともに彼女の頭のアンテナのごとき髪の毛が曲がり、ハシモトの手の甲を鋭く貫いた。
「うぎゃあっ!?」
多少トリップしていたハシモトはいきなりの痛みに手を放してしまった。
「うわああぁ〜ん、お姉ちゃあ〜ん!!」
二人の元に駆け寄る初音。楓は初音の頭をなでてやる。
「…よしよし…」
「怖かったわね、初音。もう大丈夫よ。………さて…」
千鶴が すっ… と冷たい視線をハシモトに向ける。
先ほどとは比べ物にもならぬほどの殺気である。
「ひっ…ひいぃっ!!ゆっ…ゆるしてくださああああああああああああああぁい!!」
だが、千鶴たちはハシモトの助命嘆願には答えずにただ冷ややかに見るのみである。
ハシモト最後の時が刻々と近づいていた。

…校舎の一室でその様を見ていた神官浩之は、
「やっぱ『もしかしたら』…はなかったか…しょーがねえなあ」
とつぶやいて例のリモコン(Aパート参照)をとりだし、
「ポチっとな」
と、その赤いボタンを押した。

ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおん。
そんな、ふざけた音とともにすさまじい爆発が起こった。
神官浩之がハシモトに持たせた『お守り』が爆ぜたのである。
爆風が『洞窟の神殿』を揺さぶる。
しかし、空洞は崩れなかった。

「う…ううん…一体…何が…?」
あの爆発に巻き込まれながらも初音はなんとか無事であった。
「…千鶴お姉ちゃん?…楓お姉ちゃん…!?どこ!?」
まだ視界を遮る煙がおさまらず、耳も爆風でやられて使い物にならない。
それでも初音は必死に二人を探した。
「…あ!お…お姉ちゃん!!」
二人は気を失っていた。どうやら初音よりダメージがでかいようだ。
ハシモトにリンチをかましていた最中であったため、初音よりも近くで食らってしまったのである。
「でも…よかった、生きてる…」
初音が胸をなで下ろしたその時。
ひゅんっ…とすっ。
何かが飛んできて初音の頭のすぐ側をかすめて地面に刺さった。
「えっ…?…これは…破魔矢!?」
「FREEZE!!」
「…!?」
その矢の飛んできた方向から、何者かが近づいてくる。
「…誰…!?」
「この『狩人(ハンター)・レミィーガ』、獲物に名乗る名は持ち合わせていまセン!!」
ちなみにこの時、神官浩之が密かに『…名乗ってるじゃねーか』とつぶやいたらしい。BYるろ剣。
「狩人・レミィーガ…あなたも、神官浩之の仲間なの!?」
そう。Aパートにおいて神官浩之によって校舎から突き落とされた彼女は、そのまま獲物を求めて徘徊していたのである。全くタチが悪い。
「YES!!ようやく見つけたネ『鬼騎士』!!さあおとなしく私にハンティングされてくだサイ!!」
ひゅっ…どすっ…。
レミィーガが次に放った矢は初音の足元に刺さった。
「…ううっ…」
「OK.NEXT!!」
次の矢をつがえるレミィーガ。
そして…放った。
ひゅっ…どすっ!!
「うあぁっ!!」
矢は初音の肩に刺さった。血が肩から流れだす。
悲鳴を上げる初音。
だが初音はその場を動こうともしない。
「…?…WHY?どうシテよけないのデスか?このままじゃアナタ、ただのマトだヨ?」
さきほどは『おとなしく』などといっておいて、勝手なものである。
「…私がよけたら…矢がお姉ちゃんたちに当たるもの…」
そういう初音の後ろには、横たわる楓と千鶴。
「…だめ…はつね…そこをどいて…」
「!!…楓お姉ちゃん!!」
「私たちのことはいいから…あなただけでも…逃げなさい…初音!」
「…千鶴お姉ちゃん…」
「「そうだ…」」
そのとき、洞窟内に重い声が響き渡った。『狩猟者・ジローエモン』が初音に語り掛けているのだ。
「「このままでは 汝は死ぬぞ…仲間を捨て そして汝は生き延びよ…盾になることなどやめて…その者らもそれを願っている」」
「いやだよ!!絶対にいやだ!!」
初音はぶんぶんと首をふる。
「見捨てたりなんかできないよ!!どんなに『偽善者』でも!『根暗』でも!!千鶴お姉ちゃんも楓お姉ちゃんも私の大切な人たちだもん!!」
「は…初音…あなたって子は…」
「…初音…」
「私は逃げない!!絶対に…絶対に!!三人一緒に隆山に帰るっ!!」
その小さな体を大きく広げ、レミィーガの前に立ちはだかる。
「OK!!いい覚悟デス!!ならば苦しませズにひとおもいに仕留めてあげまショウ!!」
そういってレミィーガが矢をつがえる。
「やめてっ!!初音ぇっ!!」
「初音…」
(…なんか…ここらへんシリアス光線でているような気がするが気のせいだろうか。
ギャグパロだってこと忘れているような…?)
レミィーガが矢を引き絞る。
そして…。
ぱあぁっ…。
突如として初音の懐から光が放たれ始めた。
「……!?」
「WHAT!?」
初音の武器(おたま)が光を放っているのだ。形を変え始める。
「は…初音の…武器が…成長する…!?」
「…あ…」
光が収まり、初音の手には姿を変えた武器が握られていた。
「こ…これって…………フライパン…?」
かなりでかい。しかしそれを初音は片手で軽々と持っている。
「かんけーありまセン!!FREEZE!!」
しゃっ!
レミィーガが矢を放った!!
「……きゃ」
かんっ
なんと、子気味良い音がして矢は初音のもつフライパンに弾かれてしまった。
「…!!…RIN!BYOU!TOU!SYA!KAI!JIN!RETU!ZAI!ZEN!!一発必中悪霊退散!!」
レミィーガの破魔矢!!
かんっ
同じである。
「くっ…こうなったら…奥の手ネ!!」
レミィーガが初音にタックルを仕掛けてきた!
どどどどどどどどどど…
ものすごい勢いで初音に突っ込んでいく。
だが…初音はその手のフライパンを すちゃっ… と構え、
「ええ〜いっ!!」
レミィーガをおもいっっきりカウンターでぶったたいた。
すこ────── っん!!


「お姉ちゃんたち、大丈夫?」
「ええ、ありがとう初音…立派だったわよ」
「えへへ…」
「…初音…」
「え?なに?楓お姉ちゃん」
「………」
なでなで。
「もっ…もう、お姉ちゃん!!」
「ところで初音ちゃん・・・さっき私のこと・・・なんていったか覚えてるかしら・・・?」
「え・・・」
「・・・わたしのこと『根暗』っていった・・・」
「え・・・あ・・・あのね・・・え・・・えへ」
「笑ったってだめです」
「・・・覚悟・・・できてるよね・・・?」
「ごっ・・・ごめんなさああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜いたたたたたっ!!」
そんな会話が交わされる側で、レミィーガがでかいたんこぶをつけて目を回していた……。                                       


つづく


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…なんか…だらだらとながくて…申し訳ございません。『山チョコボの名前はマルチ』ROSSOでございまス。さて、残すところあと二話。次は神官浩之でス。ではまた。