鬼騎士(エルクゥナイト)ジローエモン 第九話 投稿者: ROSSO
第九話 蘇る第三の『狩猟者』ジローエモン Aパート

強敵ホルシナをかろうじて(大嘘)退け、第二の『狩猟者』リズエルを復活させた初音・楓・千鶴の三人は、最後の『狩猟者』の眠る場所へとその足を向けていた。

…一方、神官浩之のいる『校舎』の一室では、マルロード姫が一人座り込んで涙を流していた。
何を悲しみその涙は彼女の頬を伝うのか…。

「あううっ…えぐっ…はやく…はやくしてくださ〜い…伝説の…『鬼騎士』さんたち…じゃないと…手遅れになっっちゃいますよぉ〜……えぐっ…」
「…苦しいのか…マルロード」
いつのまにか、マルロードの背後に黒衣に身を包んだ青年が立っていた。
神官浩之である。
「浩之さぁん…もうやめてくださぁい…このままじゃ『トゥハート』が…この世界が滅んでしまいますぅ…」
「……」
神官浩之は目を閉じて何も答えない。
「…浩之さん!!」
「俺の心は変わらねえ…この『トゥハート』のすべてが無に帰して全ての者が消え失せちまっても…俺の心は変わらねえよ…マルロード…」
「………!!」

ズキッ…。

神官浩之の言葉を聞くたびにマルロードの胸が痛む。
「…愛と裏切りの狩猟者・『エディフィル』…冷酷と暴虐の狩猟者・『リズエル』…二体の『狩猟者』があの異世界の女たちのせいで長い眠りをとかれちまった…残るは一体 『洞窟の神殿』に眠る『戦の狩猟者』だけだ…あれを蘇らせるわけにはいかねえ!!」
目を見開き、すっ…と手をかざす浩之。
それに合わせて浩之の後ろに控えていた者が立ち上がる。
その人物を見てはっとするマルロード。
「あ…あなたは…レミィーガさん!!」
「ハァイ!マルロード、HOW ARE YOU !?」
「ふぁ、ふぁいんせんきゅうですぅ。…あっ!ま、まさか浩之さん…」
「そうだ…このレミィーガに『鬼騎士』たちを倒してもらう…もともとレミィーガはお前を『脇役(まもの)』から護る『親衛隊長』だったな…この『トゥハート』でもっとも手がつけられねえ『狩人・レミィーガ』にあの女たちが勝てると思うか?」
「やめてくださいレミィーガさん!!お願いですぅ!!」
「チッチッチ。ダメだョマルロード。それはできない相談ネ。なぜならそれはBecause!!ワタシが『ハンター』だからネ!!一度ハンティング魂に火が点いたら誰もワタシを止めることはできないのデス!!」
拳を握り締めて熱く語るレミィーガ。
おお、バックに炎がもえあがっている。
「オッケーだレミィーガ、今回は誰も止めねえ。おもうぞんぶんハンティングしていいぜ。さあGOだ!!」
「イエッサー!!ハンティングモード・ON!!」
「えええぇっ!?」
「いっ!?ちょっ…ちょっと待てレミィーガ!!ハンティングすんのはここじゃねえぞ!!」
「NO!!今『止めない』っていったばっかりネ!!」
「そーいう意味じゃねえっ!!」
だがすでにレミィーガはハンティングモードに入ろうとしている。
「あわわっ、こんな所で豹変されたら浩之さんもあぶないですー」
「ちっ…(まずいな…このままじゃ俺どころかマルロードまで標的になりかねねえ…スクリーンセーバーじゃあるまいし、そんなことさせるかっ!!)」
1、 マルロードを連れてここから逃げる。
2、 レミィーガを突き飛ばす。
3、 あきらめて死ぬ。
「くっ…『2』だっ!!許せレミィーガ!!」
浩之のタックル!
「!!」
どかっ!!
浩之は全力を込めてレミィーガに体当たりをかました。
ハンティングモードに入りかけていたレミィーガは無防備になっており、タックルをもろに食らい、窓ぎわに吹っ飛ばされそのまま窓を突き破って地面に落下していった。

「ふう…危ねぇ…」
「レミィーガさん大丈夫でしょうかー」
「この程度で死ぬタマじゃねえよ…しかしまいったな、代わりに『鬼騎士』たちを倒しにいく奴テキトーにみつくろわねーと」
そういって浩之は廊下に出た。きょろきょろと辺りを見渡す。
「おっ…おいちょっとそこのお前、そうそうお前だ。ちょっとこっち来てくれ」
ちょうど廊下でぞうきんがけをしていたみすぼらしい格好をした男に声をかけた。
「お、オレっすか?」
「おう、確かお前、『親衛隊』の奴だったな」
「は、はい、見習いっスけど、一応…」
「じゃあお前でいいや。お前、名前は?」
「は、ハシモトっす」
「お前、『伝説の鬼騎士』を倒しにいってこい」
「えっ!?俺がっスか!?無理っスよ俺みたいな見習いに!!」
「大丈夫だって。『伝説の〜』なんていったってただの女の子なんだぜ?いくら『他のヒロインならまだしもよりによって志保ごときのしかもただのイベントの超チョイ役』でも勝ち目はあるって」
「………」
泣いている。
「もし奴等を倒すことができたら二階級特進どころか俺の代わりに『神官』にしてやってもいいぜ」
「ま、マジっすか!!」
「マジも大マジ。約束する。そうなったら矢島ごときと同列視されることもねえし、女も口説き放題だ。もちろん、『鬼騎士』たちもおまえの好きにしてかまわねえ」
「わかりました!!やります!!」
「そーか、やってくれるか、サンキュー。よし、これをやろう。もってけ」
浩之はそういってハシモトにドクロのマークのついた黒い物体を手渡した。側面には白いペンキででかでかと『じばくそうち』と書いてある。
「なんスかこれ?」
「お守りだ」
…そういう浩之の手にはなにやら安っぽいおもちゃのリモコンの様なものが握られていた。
安全装置も何もついておらず、プラスチックの赤いボタンが一つついているだけである。
なんかいかにもソレっぽいが、ハシモトは全然気にも留めていない。
「ありがとうございます!!じゃ、いってくるっス!!約束、絶対忘れないでくださいよ!!」
「ああ、絶対だ」
それを聞いて、『よおっしゃああぁ俺の時代が来たあぁぁぁっ!!』
叫びながらものすごい勢いで駆けて行くハシモト。
浩之はそんな様を冷ややかにながめながら、
「…無事帰って来れたらな…」
…とつぶやいた。


…さて一方『伝説の鬼騎士』こと初音・楓・千鶴の三人+セリオは、最後の『狩猟者』の眠る場所…『洞窟の神殿』の前に立っていた。目立たない小さな洞穴に入り、暗く狭い道を通り抜け、その先に広がる巨大な空洞の中にその『神殿』はあった。(例によって『神社』である。)
「ここに…『狩猟者』が…?」
「これで三体目ね」
「…三『体』…?三『人』だと思うけど…」
「あんなでかいの『人』と思えるわけないでしょ」
「お姉ちゃん、それって某『膜呂巣』にででくる『でかるちゃー』を連発する人たちに失礼だよ」
「あれは小さくなったからいいのよ」
…いいのか…?

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

『神殿』の扉が開き始めた。
と同時に、初音の体が光に包まれ、宙に浮かぶ。
「初音っ!?」
「…初音…?」
二人の呼ぶ声も初音の耳には届いていないようである。
そのまま初音は開いた門から『神殿』の中に吸い込まれていった。
初音を追って二人が中に入ろうとしたが、初音が中に入ると同時に門はかたく閉ざされ、二人の侵入を許さなかった。

「…初音…」


神殿の中に吸い込まれた初音は、巨大な広間に立っていた。
「…?」
初音は奥に何かの気配を感じ取った。
「…なにか…いる…?」
初音がその気配の方へと足を向ける。
そこには…
「…?…人…ううん…違う…あれは…『鬼』…?」
巨大ではあるが人の形はしている。だが、その手足の禽獣のごとき爪。鋭き牙。角が生えているようにも見える雄々しきたてがみ。それらが己を『人ではない』と語っていた。
「「…汝の…名は…?」」
初音の前に鎮座する『人ならぬもの』が初音に問い掛けてきた。
頭の芯に鳴り響く重々しき声。
「わ…私は…初音…獅堂・初音…」

「「我が名は『ジローエモン』…『鬼騎士(エルクゥナイト)』を待ち この『洞窟の神殿』で永き時を超える伝説の『狩猟者』…」」

「あなたが…『狩猟者』…?」

「「…ハツネ…というのか…歳は…?」」

「え…15歳…」

「「うむ…(しばし思案)…よし、合格!!」」

いきなり猫なで声になる。

「…え?」
「「そのつぶらな瞳・なでてやりたくなるような小さな体・小学生と間違われかねぬ発育の遅い胸!我をまとうにふさわしすぎ!!申し分なし!!あえて言うなら背中にランドセルが欲しいトコだがまあよし!!さあこっちおいでおぢさんが気持ちいいコトしてあげやう」」
鼻息も荒く初音ににじり寄る。あとずさる初音。

「………い…いやあああぁぁぁ〜〜〜っ!!」


初音けっこう大ピンチ!!
そして神官浩之の『お守り』を携えたハシモトの魔の手が楓・千鶴に迫る!!
彼女らの運命やいかに!!

……わざとらしいだろうか。



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みなさんいかがおすごしでしょうか寝不足気味のROSSOでス。
今回はAパートだけなんで『きょうは〜』はナシでス。
さて、だらだらとやってきた『鬼騎士〜』もあとちょっとで終わりまス。だいたい2、3話くらいでスかね。
我慢してお付き合いのほどを。
…終わったら次なにやろうかなぁ…。ま、いいや。
ではまた。